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パリコレにビーチを持ち込んだ Chanel 19SS

来年の人気バカンス先は、シャネル・オン・シー!

by Steve Salter
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10 October 2018, 9:36am

via Instagram

ロケットの発射台(17-18秋冬)から、街頭デモ(15春夏)、メリーゴーラウンド(08-19秋冬)、スーパーマーケット(14-15秋冬)、ビストロ(15-16秋冬)、空港(16春夏)まで…。カール・ラガーフェルドはこの12年以上、お気に入りのショー会場であるグラン・パレを毎シーズン様変わりさせ、見事なスペクタクルを展開してきた。2018年春夏コレクションでは、ヴェルドン渓谷からインスパイアされ、高さ15メートルの立派な滝と、岩肌を水が流れ、大きな割れ目があり、高山植物が生える長さ80メートルの崖のレプリカを用意。続く2018年秋冬コレクションでは、ランウェイの周囲に木々を立ち並べ、一面に落葉を敷き詰めた。そして、次のバカンス先はビーチだ。

2019年春夏コレクションで、この巨大な会場は、ビーチへと変貌を遂げた。打ち寄せる波、波打ち際の遊歩道、青空が描かれたパノラマのパネル、ウェス・アンダーソン作品に出てきそうな監視員ふたり。ショーからプレゼンテーション、再チェックを経てまたショーへ… 何週間もの〈旅〉を経て(その間にも頭はバカンスでいっぱいだっただろうが)、この会場はようやく、Chanelのシックなバカンス先の海岸となった。もちろんショーの舞台ではあるが、ファッションを超えた大きな世界の存在、ショーの外にある生活を、この会場は思い出させてくれた。私たちが現実から逃げられるのはまだまだ先だが、そんな私たちのために、カールは楽しさに溢れ、思い煩うこともない世界をつくりあげたのだ。このコレクションは80~90年代のヴィンテージChanelからインスパイアされており、足元は裸足で統一。モデルたちは笑顔だ。フィナーレでは、現代のスーパーモデルたちが、今シーズンのパリ・ファッションウィークで初めて見せるような幸せそうな顔で歩いていた。砂の上を跳ね回り、足を波を遊ばせるモデルたちの姿には、嘘偽りが感じられなかった。100ものショーを歩いた彼女たちにとって、まさに天国のような瞬間だったろう。これこそ、私たちが夢見るバカンスだ。

サントロペのビーチで、ヘルムート・ニュートンとアントニオ・ロペスが撮影した、水着姿のマッチョなカールの写真を思い出す人もいるのではないだろうか(もし知らない方は是非リンク先のページをみてほしい)。オーバーサイズのツイードのツーピース・スーツや、ひらひらと動くチュールのドレス、Chanelのロゴが印象的なダブルバイザーのストローハット、ダブルのラグジュアリーバッグ。これぞカール・ラガーフェルド流、究極のラグジュアリー・ビーチリゾート・ワードローブだ。

今シーズンは、Chanelに先がけTHOM BROWNEも、同じくビーチからインスパイアされたコレクションを発表していたが、カールのアプローチとはまったく違った。挑発的な雰囲気のコレクションでブラウンは、仮面をかぶせ、縛り、これで歩けるのが不思議なくらいのハイヒールを履かせ、モデルを苛め抜いているかのようだった。いくら仕立てが美しくとも、どうも落ち着かない気分になった観客もいたであろう。しかしChanelのビーチは安全だ。サンダルを脱ぎ捨て、友人たちと海岸を散歩する、そんな場所。

今シーズンは、批評家もファンもこぞってブレット・カバノー氏の公聴会について触れ、私たちの生活に多大なる影響を及ぼしている尊大で有毒な男性性に、ファッションはどう返答するのかを問題としてきた。そんななか、今シーズンの最終日に、楽しむこと、自由であることをChanelガールズたちに奨励するカールのコレクションを観られたことは、歓びだった。そしてその歓びは、会場全体を包んでいた。アドゥ・アケチがショーを締めくくり、カールがお辞儀をしたあとも、観客たちは長らく会場に留まり、その場は、今年の夏に話題となった〈インスタ・ハズバンド〉さながらの様相を呈していた。そうして、自らのSNSにアップするための、奇跡の1枚をゲットした観客たちの姿は、何ともほほえましかった。

This article originally appeared on i-D UK.