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Photography Alina Negoita

ボードリヤールと『フレンズ』を結びつけた、Liam Hodges SS19

ByFelix Pettytranslated byAya Takatsu

ロンドンメンズウェア界の人気者が2019年春夏コレクションのインスピレーションとしたのは、ラスベガスだった。

Photography Alina Negoita

だんだんとそぎ落とされてきたメンスウェアのショースケジュールだが、Liam Hodgesは変わらず価値ある瞬間のひとつを提供してくれる。イギリスのサブカルチャーを掘り下げたそのデザインはますます今日的な意味を帯び、モダンになってきた。シーズンを経るごとにホッジズは熟達し、最初に私たちの目を引いた、若いロンドンっ子の粗削りだが愛すべき視点に磨きをかけている。ショーをするごとに、その辛辣さと成熟ぶりが研ぎ澄まされるようだ。

若いロンドンっ子とは言いつつも、今シーズン彼が着想を得たのはラスベガス。ドナ・タートの小説『ゴールドフィンチ』を読んだことがきっかけだった。特に若い主人公が、一文無しで不在がちな父とこの街で過ごし、ぶらつきながら問題を起こしていく部分から。

「このアイデアでショーに取りかかりはじめたとき、自分の中にあるラスベガスのイメージとこの本をミックスさせたいと思ったんだ」と、リアムは話す。そして彼はその街へ旅をすることになったーー「3日間過ごしたよ。でも純粋にリサーチのため。どんちゃん騒ぎなんてしなかったよ」。なるほど、では『ラスベガスをやっつけろ』的サイケな自分探し旅行ではなかったというわけだ。しかし、その旅によって新たな、まとまりのない断片的で想像力に富んだ思考が花開き、今シーズンのリアムのデザインの糧となった。

フランスの哲学者ジャン・ボードリヤールのハイパーリアリティ理論を導きながら、彼はこの街のきらびやかな灯りとアグレッシブな光景に目をつけた。それは表層であり、建築で、すべてが人に金を使わせる目的でつくられているのだ。彼がその目を向けているのは、ボードリヤールの「仮想と現実の崩壊」という考えである。そしてそこから、ミレニアム世代そしてZ世代的視点を展開し、Instagram世代の自己出資型ブランデッドコンテンツとラスベガスの作りもの的空っぽさのあいだに、理想像を見出すのだ。「リサーチでイギリスの外に本格的に目を向けたのは、今回が初めて」とリアムは話す。「でも、それをロンドンに戻さなきゃいけなかった。やっぱり、Liam Hodgesのショーはそうでないとね。純粋なアメリカーナは、僕にはできないから」

これほどまで巧みに洋服に織り込まれていなければ、この新しいインスピレーションは何の意味もなさなかっただろう。リアムの十八番であるパッチワークやプリントに加え、彼の中核を成す類い稀なユーモアセンスを落とし込んだ作品が並んでいた。ボウリングシャツ、アロハプリント、ショートパンツ、カウボーイブーツにチェック柄のパジャマ。それはリアムの美的世界のフィルターを通した、センスの良いアメリカーナのベーシックのよう。だが、そのなかでも最高のものは? おそらく、カエサルの宮殿に仕える、オフタイムのケントゥリオ(百人隊長)だろう。リアムの説明によると、これはラスベガスを舞台にしたドラマ『フレンズ』のなかでも最高のエピソード、そして誰もが愛する失業中の俳優ジョーイ・トリビアーニへのトリビュートなのだそうだ。

Credits


Photography Alina Negoita

This article originally appeared on i-D UK.