カルチャーに肌を預ける:Dr.Martens「TATTOOコレクション」

ドクターマーチン2018年秋冬の「TATTOOコレクション」発表にあたって、デザインを手掛けた3人のタトゥー・アーティスト達が集合。ドクターマーチンとタトゥーの幸福な出会いについて、それぞれの思いを聞いた。

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aug 2 2018, 8:42am

ブランドのアイコンである〈1460 8ホールブーツ〉と、3人のタトゥー・アーティストがコラボレーションしたドクターマーチンの「TATTOOコレクション」。このコレクションのデザインを手掛けたのが和彫りをルーツに東京を拠点に活動するOT、ニューヨークでアメリカン・トラッドをルーツに独自の世界観を打ち出すGREZ、日本への旅行で伝統刺青の魅力に触れたという、イギリス・リーズ出身のCHRISだ。

作品のスタイルは違う3人だが、ともにパンクやロカビリー、ハードコアという10代で聴いた音楽の導きで、タトゥーやドクターマーチンと出会ったという思い出を共有していた。タトゥーとドクターマーチンはそもそも“共にあるもの”なのだ。世界的に評価の高い3人のタトゥー・アーティストが一堂に会し、タトゥーとの出会いや今回のコレクションについての思いを自由に語るクロストーク。話は昔からの知己のように進み、タトゥーを入れる意味や愉しみ、アーティストと「客」との関係(connection)、タトゥーを“集める(collecting)”感覚についてまで展開し、話題は尽きなかった。

——まず最初に自己紹介、タトゥーの世界に足を踏み入れたきっかけやルーツの話、またそれぞれの現在の活動について教えてください。

GREZ:僕はアメリカ出身で、NYを拠点に活動しています。キャリアは18年。仕事のルーツはアメリカン・トラディショナルだね。基礎はそこから学んで、現在はそれをもう少し現代風に洗練した感じと言えばいいのかな。タトゥーに興味を持ったのは音楽がきっかけだった。10代の時にメタルが流行っていて、そのアートワークを真似して絵を描いたりしていた。それからパンクやハードコアを聴き始めて、それまで自分の描いていたものがタトゥーと結びついたんだ。シーンにはタトゥーを入れてるアーティストがたくさんいて、一瞬で夢中になったよ。13歳、14歳くらいでタトゥーの絵を自分や友達に描いたりするようになって、今もずっとタトゥーを続けてる。

OT:僕は埼玉出身で東京を拠点に活動しています。タトゥーの世界に足を踏み入れたきっかけは……埼玉の田舎で結構ヤンチャな子がまわりにいて、刺青に触れる機会が多かったんです。そこから18歳の時、ひょんなきっかけで知り合いの彫り師さんを通じて、刺青を彫る環境に身を置くようになりました。そこでずっと和彫りを勉強していたんですけど、僕もだんだん音楽……パンクやロカビリーに興味を持つようになって、そうした影響もあって、ルーツは和彫りですが、他の彫り師さんに比べていろんなスタイルをやってきた気がします。今は自分の描写というか、線や構図を突き詰めることに興味があるのですが、そこに一番フィットするのはやっぱり日本の刺青ですね。今は刺青だけに止まらず、何十メートルもあるような大きな絵を描いたり、結構いろんなことをやっています。

CHRIS:僕はイギリスのリーズで12年タトゥーをやっています。きっかけはいくつかあるかな。まずは子供の頃から空手をやっていて、その頃から日本の美意識みたいなものに触れる機会がたくさんあったこと。『ベストキッド』が流行っていて(笑)。それが6、7歳の頃で、空手は15年くらい続けたよ。それで刺青を含めた日本の文化を少し知ることになった。あとはやっぱりパンクとかスケートボード。好きだったバンドはみんなタトゥーを入れていたからね。それからKustom Kultureにハマっていたのも理由のひとつかな。僕はアメリカーナみたいなアートムーブメントにすごく影響されている。Robert Crumb(ロバート・クラム)というアンダーグラウンドのコミックアーティストがいて、子供の頃は夢中でコミックスを集めたし、それからEd Roth(エド・ロス)やRobert Williams(ロバート・ウィリアムス)……ガンズの『Appetite for Destruction』のオリジナルカバーをやった人なんだけど。こういうアーティストに影響されて、ずっとアーティストになりたかったし、大学ではファイン・アートを学んだ。その後中学校でアートを教えたりしながら、僕のバックグラウンドとタトゥーが結びついて、自然とその世界に足を踏み入れていったんだ。

——改めて伺うと皆さんのルーツに音楽が多大な役割を果たしていますね。ドクターマーチンも音楽を取り巻くカルチャーと親和性の高いブランドですが、今回のコラボレーションについてどう思いましたか。

GREZ:僕は他のブランドだったら話を受けなかったと思う。実際にこれまでずっと断ってきてるし。でもドクターマーチンのオファーがきた時は単純に嬉しかったよ。昔から自分と結びついているブランドだし、文化的要素も大きい。何より自分が信用してるブランドだからね。
OT:僕も16歳の頃からずっとマーチンを履いていたので、最初に話をもらった時は単純に嬉しかったです。ただ元々の格好良さが既にあるから、実際デザインするにあたって、いかにそれを殺さないようにできたらというのはありましたね。結果的には結構派手になっちゃったんですけど(笑)。
CHRIS:オファーをもらった瞬間に「やります」って答えたよ。GREZも言ってたけど、ドクターマーチンは自分と繋がりを感じられるブランドなんだ。実際学校でも、色々な音楽のシーンの人も、みんなマーチンのブーツを履いてた。自分がイギリス人で良かったと誇れるところは、イギリスから若者のサブカルチャーがたくさん生まれてるってこと。パンクやスキンズ、テディボーイズ、モッズとかね。ドクターマーチンは自分が影響を受けたそういったカルチャーの一部だったわけだから、タトゥーとドクターマーチンの繋がりはすごくわかりやすくて、つまり、それが僕につながってきたわけだよね。

——改めてお話を伺うと、今回のコレクションは非常にふさわしい人選で実現されているのがよくわかります。世界的にタトゥーがどんどん一般化する中であえて「彫る意味」について聞きたいのですが、タトゥーに「意味」は必要だと思いますか?

GREZ:初めて入れるならそうだろうね。
CHRIS:そうだね。
GREZ:最初はすごく思い入れがあって、意味を持たせたいって人が多くて、でもタトゥーを集めてるうちに…
OT:関係なくなる(笑)?
CHRIS:まぁ入れているうちに「格好良ければいい」みたいにはなってくるよね。現実問題、お客さんが望む『意味』が、タトゥーにしたときに見栄えのよくないこだわりだったりする場合もあるし。そういうときは何が大事なのかを納得するまでちゃんと話し合う。見た目として良いことがタトゥーそのものの意味でもあるわけだから。でもたくさんタトゥーを入れているうちにお客さんと意思の疎通ができてくれば、自然と信用されれ任せて貰えるようにもなる。
GREZ:見た目に対する欲求は意味とかを超えちゃうよね。それが楽しめれば、深い意味とかは考えなくなる。
OT:だからお客さん次第なのかな。僕はタトゥーには意味が不可欠ということはないと思います。自分の体に入れてる刺青に意味があると言えるものがあるとしたら、このアーティストが好きだから入れてもらうっていう意味だけですかね。
CHRIS:そうだね。僕も「この人に入れてもらいたい!」と思って入れた。

——なるほど。肌を預けるアーティストとの緊密な関係(connection)を築くことは、タトゥーを楽しむ上でのひとつの重要なファクターと言えそうですね。ちなみにふと気になったのですが、タトゥーも英語で“collecting” (集める)というんですか?

CHRIS:そうだね。お客さんにも2種類いてちょっとしたタトゥーを入れにくる人と、毎回同じアーティストに彫ってもらう常連のお客さんがいる。中にはいろんなアーティストにたくさん彫ってもらう人達もいて、そういう人たちをタトゥー収集家(コレクター)っていうんだ。GREZはいろんな素晴らしいアメリカのアーティストに彫ってもらっているし、僕は同じアーティストにずっと彫ってもらってる。どっちがいいかとかじゃなくてアプローチが違う。
GREZ:NYならではと言えるかもしれないけど、NYには本当に世界中からコレクターがやってくる。それを見て「これはあの人の作品だ」って、そのアーティストとの繋がりを皮膚の上で感じられたりするのは嬉しいことだね。誰かの皮膚の上でいろんなアーティストがひとつの作品を作り上げてるのを見るのはおもしろいよ。
OT:タトゥーコレクターというのは、いろんなアーティストにいろんなものを入れてもらう意味合いが強いと思う。同じアーティストのところで一個入れてまた一個みたいにアディクトをする人もいますし、本当にそれぞれですよね。