「私はフェイクでも、キャラクターでもない」ミーガン・ジー・スタリオン interview

テキサス生まれの今最もホットなラッパーを、俳優/脚本家のジェレミー・O・ハリスが直撃。英i-D “The Get Up Stand Up Issue”に掲載されたインタビューを公開。

by Frankie Dunn, and Jeremy O. Harris; translated by Nozomi Otaki
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25 May 2020, 8:14am

2019年9月、ミーガン・ジー・スタリオン(Stallion=種馬という名前の由来は「背が高くて元気いっぱいだから」)が「Hot Girl Summer」のMVをリリースしたとき、「今年の秋はキャンセル!」と世界は叫んだ。ニッキー・ミナージュとタイ・ダラー・サインをゲストに迎えたこの曲は、彼女のファン、通称〈ホッティ〉たちのおかげで爆発的なヒットを記録。彼女が新たな仲間たちと最高のプールパーティーを楽しむシーンはすぐにミーム化し、再生回数は2020年5月時点で5500万回を超えた。

弱冠24歳のミーガンは、長年男性優位だったヒップホップの世界で、臆することなく新世代のフィメールラッパーの先頭に立ち、このジャンルが発するストーリーを、ポジティブでインクルーシブなものへと変化させている。

i-D編集部がミーガンの存在に気づいたのは、彼女が2017年の終わりに公開した「Stalli Freestyle」だった。このトラックは、2018年にトップ10にランクインしたミックステープ『Tina Snow』とともに、彼女の注目すべきアーティストとしての地位を確固たるものにした。2019年には初のフルレングスアルバム『Fever』をリリースし、ジェイ・ZのレーベルRoc Nationへの所属も決まった。新たなチャプターへと突入した彼女はますます活躍していくことだろう。

サンタモニカ・ピアのビーチクリーンにホッティたちを集結させたり、大学奨学金を景品にオールジェンダーのビューティコンテスト〈Cognac Queen Hollywood〉を開催したり、自身のプラットフォームを活用して女性支援を行うなど、ミーガンはまさに私たちみんなのロールモデルだ。

今回i-Dがインタビュアーに選んだのは、脚本家/俳優のジェレミー・O・ハリス。ミーガンと同じく米国南部出身で、さまざまなジャンルで幅広く活躍する彼以上にふさわしい相手はいないだろう。

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Megan wears bra and skirt Maison Alaïa. All jewellery Jacob & Co.

──やあミーガン、調子はどう?

今ちょうど空港を出たところ。今夜のショーの準備に向かってる。

──楽しみだね。残念ながら君のライブは観たことがないんだ。ダイヤモンドボールでのパフォーマンスも見逃しちゃって。会場にはいたんだけど、いろいろあって見れなくて、ほんとに悔しかった。

ライブはまたやるから安心して!

──そうだね、楽しみにしてるよ。君がよくPimp Cの話をするから、今回のインタビューの前に改めて彼のリリックを読んでみたんだけど、「Realer」の僕の大好きな一節がPimp Cのリリックに似てることに気づいた。「Knock that shit out that bitch like an enema(かん腸してクソを漏らすくらいあのビッチをボコボコにする)」っていう言い回しが、すごくPimp Cっぽいと思ったんだ。

Pimp Cはどの曲でも〈クソ〉について歌ってるよね。そういう汚いところが大好き。

──小さい頃はPimp Cのどんなところに共感したの?

子どもの頃は正直よくわかってなかった。ただサウンドがかっこいいと思っただけ。彼の自信たっぷりな歌い方に惹かれた。15歳になるまではリリックの意味も理解してなかった。

──僕はヴァージニア州出身なんだけど、南部のひとはジョークや言葉遣いがキツいよね。自分の身体との関わり方も、他の地域とは違うと思う。

確かに、南部のひとは少し荒っぽいところがある気がする。自信に満ちた振る舞いとか、話し方とか……。東海岸に行くと、私が地元民じゃないってすぐに気づかれるし。

──自分の言語との関わり方について考えてみると、例えば自分が好きな体位とか自分の性欲について、より率直に語ってる気がする。東海岸のひとと比べると、会話のなかでもっと露骨にそういう話題に触れているんだよね。子どもの頃、ふいに口に出した言葉で周囲のひとをギョッとさせた経験はある?

嘘をつかずに正直にいうけど、私は良い子だった。話すより観察することのほうが多くて。5年生くらいまではずっと物静かで、お母さんやおばあちゃんと過ごすことが多かった。おとなしかったからターゲットにされやすくて、よくいじめられてた。でも、黙ってたのは怖かったからじゃない。あいつらと口を利くのもイヤだったから静かにしてただけ。ある日家に帰って「私、いじめられてるんだと思う」ってお母さんに打ち明けた。学校でみんなに仕返ししていい、っていう許可が欲しくて。お母さんがゴーサインを出してくれたから、学校で相手の子をめちゃくちゃに罵ってやった。それから私は言いたいことを言うようになったの。

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T-shirt and skirt Alexander Wang SS20. Earrings Ettika. Necklace (top) Fallon. Necklace (bottom) and bracelet Greg Yüna. Watch and rings Chopard. Boots Stuart Weitzman.

──今は世界中のいろんなところから引っ張りだこで、地元の友だちと会うのもなかなか難しいと思うけど、そんななかでアーティスト仲間たちとはどうやって連絡を取り合ってるの? SNS? それとも今もみんなで集まってコーヒーを飲んだりジョイントを吸ったりする?

高校時代は誰にもラップがやりたいとはいってなかった。でも大学では、周りは誰も私のことを知らない。ラッパーなんだって打ち明ければ、みんなすんなり受け入れてくれる。私の親友とは、今は私のアシスタントなんだけど、いつもいっしょにYouTubeで動画を見て、いろんなビートを聴いてた。そうやってできたのが私の初めてのミックステープ『Rich Ratchet』。それからスタジオにも行ってDJ Choseと作業するようになった。彼は今でもビートを送ってくれてて、彼のビートを使ってない作品はひとつもないくらい。私はワンシーズンだけで終わるような人付き合いはしない。私の人生に必要なひとには、ずっと私の人生に関わり続けてほしいから。

──すばらしい考えだね。みんなそうあるべきだと思う。大学院で知り合った親友は、僕の脚本を唯一信じてくれたひとなんだけど、彼は僕のルームメイトで、今もブロードウェイの舞台の仕事をしてる。今では僕の部屋で僕のアイドルたちに会えるなんて夢みたいだ。君も憧れの存在と共演を果たしてきたよね。これまでにニッキーやグッチ・メイン、ジューシー・Jとコラボしてきたけど、次にいっしょに仕事をしてみたい相手は?

みんな知ってるけど、私はビヨンセがほんとに大好きなの。彼女も私もヒューストン出身だし、いつか絶対にコラボを実現させたい。ビヨンセはずっと私のお手本だった。でも、もしほんとに彼女に会えたら、どうしたらいいかわからないと思う。

──待って、ビヨンセにはまだ会ってないの?

そうなの!

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Stole Gucci. Bikini top Rudi Gernreich. Shorts Y/Project. Necklace and bracelet (right) Fallon. Belly button ring model’s own. Bracelet (left hand) Greg Yüna. Watch and rings Chopard.

──この前の夜、〈Chateau〉で食事をしてたら、ビヨンセたちが隣の席でチキンを食べてた。彼らに会いたいなら行ってみて。

最近Roc Nationと契約してジェイ・Zにも会ったんだけど、すごくクールなひとだった。彼らにマネジメントしてもらえるなんて最高。みんな家族みたいなの。

──多くのひとが〈女性ラッパー〉の座にはひとりしか座れないと考えてる。超新星みたいに周りのみんなを破壊したと思えば、今度は別の女の子が現れてまた全部破壊する、みたいな。だから、君が他の女性ラッパーたちについて声高に発言してるのはすばらしいことだと思う。意識的にそういう役割を担っているの? それともこれは当然のこと?

私にとっては当たり前のこと。私はフェイクでも、キャラクターでもない。ただ感じたことを口にしてるだけ。競争なんてどうでもいいし、そもそもそんなに深刻に考えることじゃない。お互いに争ったりせずに音楽をつくってる男たちがごまんといるのに、どうして私たちがお互いを目の敵にしなきゃいけないの? みんなが活躍するスペースは十分にある。次に出てくる子が何をするかなんて興味ないし、その子が輝けるならそれでいい。そのせいで私の輝きが失われたりしないから。

──駆け出しの頃のビデオを観ても、今のラッパーとしての君とあまり変わらないように見えるけど、どうやって自分のスタイルを見つけていったの? 今のロココ調のセクシーな女の子、ロデオライダーのイメージを思いついたきっかけは?

私はテキサス出身だし、ブーティショーツやクロップトップがずっと大好きだった。上に何か羽織ったりはしない。それが私のファッションだし、それは誰にも変えられない。

──話は変わるけど、僕は君のフレンチブルドッグのファンなんだ。

今ちょうどいっしょにいるよ! 何をしていてもついてくるの。名前は4oe(フォー)。前はストリップクラブやショーにも連れていっていたけど、あまりにもたくさんのひとが押しかけてくるから、パニック発作を起こしたら大変だと思って、今は車で待たせるようにしてる。すっごくご機嫌ななめになるけどね! スプリンターの真ん中にウンチの山ができそう。

──それは大変だね……。パニックといえば、あんなに多くのひとがステージに押し寄せてきて、パニック発作を起こしそうになったことはない? 数週間前に映像を観たんだけど、ステージに飛び乗って君とトゥワークしようとした男性もいたよね。

そういうことが何度かあった。この前の夜、ニューヨークでホッティたちにステージに上がってもらったら、この男性がよじ登ってきて私とグラインドをしようとしてきて。ガードマンが急いで彼を取り押さえようとしたから、私は「ダメ!」って叫んだ。楽しかったけどね。

──ガードマンを下がらせて、彼の上になって、私は支配される側じゃない、支配するのは私、って見せつけたときはスーパーヒーローみたいだったね。

私は生まれながらのビッチなの、知ってるでしょ?

──そういう自信がどうやって生まれるのか教えてほしい。一般的に、若い女性や黒人たちの多くは、自分の居場所を主張して「私はこのゲームのなかの最高のビッチだ、誰かの言いなりになったりしない」と声を上げる方法を探してるから。難しいことなんだ。

私はいつも家族に最高だって褒められてきて、ずっとそう信じていたから、誰かにけなされても気にならなかった。毎日ママに「あなたはなんて美しくて、すばらしいの!」といわれ続けたら、そう信じるようになるでしょ? だからもし誰かに反対のことをいわれたら、「何言ってるの? ママは私がきれいだって言ってくれたんだから、あんたの言うことなんかどうでもいい」っていってやればいい。

──今年、僕が自分自身に与えた課題は〈愛について書くこと〉なんだ。自分の頭の裏側にある、セクシュアリティに関する奥深く暗い考えを言葉にする方法はもうわかってる。でも、誰かを愛するとはどういうことなのかをオープンにするのはもっと難しい。幸せとはどういうことか、とかね。君にとって、掘り下げてみるのは楽しいけど、言葉にするのが難しいテーマはある?

言葉にするのが難しいっていう気持ちはすごくよくわかる。私はずっと強い人間だったけど、腰を据えて自分の気持ちと向き合ってみるタイプじゃなかったから。最近はそれを実現できたらサウンドにどんな変化があるのか試してみようと思ってる。みんなに私が考えていることを知ってほしいから。

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Dress Versace. All jewellery Jacob & Co.

──僕は、大学院を卒業してからずっとノンストップで演劇を続けてきた。多くのひとの目に触れるプラットフォームだから、誰も傷つけないように気を遣うし、ストレスも溜まる。でも、今の君は無敵にみえる。ストレスを感じることはない?

私は四六時中仕事をしていてたって構わない。その過程が自分を強くしてくれるから。今、自分自身が鍛えられてる最中だと思えば、いろんな苦労にだって耐えられる。何か間違ったことをしたって、ちょっと頭をぶつけるのと同じだと思えば気にならない。私はまだ学んでる最中だし、失敗したわけじゃないんだから。

──去年、演劇を2本やりながら大学院に通ってたとき、「他の活動と並行して修論を書き終えられるわけない」っていわれたけど、今に見てろ、って感じだった。

ほんとにその通り。なんで無理だと思うの?って。

──最後に、これを読んでいる少年少女たちに伝えたいメッセージは?

自分が共感できるひとは誰もいない、なんて思わないで。家族や親戚でも、友だちでも、赤の他人でも構わない。世界には、あなたと全く同じことを体験をしているひとがいるはず。自分の強さを失わなければ、きっとそのひとを探し出せる。手を差し伸べてくれるひとは必ずいるから、自分が独りぼっちだと感じたときは、もう少しだけ耐えてみて。確かにあなたという人間はひとりだけど、あなたが探し求めていたような愛を与えてくれるひとに、いつか必ず出会えるから。

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Credits

Photography Ethan James Green
Fashion Director Carlos Nazario

Hair Jawara at Art Partner.
Make-up Kanako Takase at Streeters using Addiction.
Nail technician Dawn Sterling at Statement Artists using Young Nails.
Set design Julia Wagner at CLM.
Photography assistance James Sakalian, Katie Tucker and Daniel Johnson.
Digital technician Nick Rapaz.
Styling assistance Raymond Gee, Erica Boisaubin and Imaan Sayed.
Tailor Thao Huynh.
Hair assistance Tiara Keith and Shamicka Williams.
Set design assistance Dylan Bailey and Cruz Mendez.
Production Jessica Hafford at MAP Ltd.

Interview Jeremy O. Harris
Introduction Frankie Dunn

This article originally appeared on i-D UK.

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