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ミラノ・ファッションウィークのトレンド:「エレガンス」

2017年春夏のトレンドは? ミラノ・ファッションウィーク2日目、FENDI、PRADA、そしてMOSCHINOがその答えをエレガントに体現した。

by Anders Christian Madsen
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03 October 2016, 2:25am

今夏、ミラノでメンズ・コレクションのショーを見終えた私は、パリへと向かう前に、家族行事に顔を出した。そこで私は、会う人会う人に同じ質問をされる。それは「来シーズンのトレンドは?」というものだ。そこでいつも私は途方にくれ、自らに同じ問いを投げかけることになる。今の時代、ショーを観覧するということは5年前や10年前とはまったく違う意味を持っている。昔は、ファッション都市で開催されるショーを見れば、例えばスカート丈やヒールの高さに、次のシーズンのトレンドを見てとることができた。先日のロンドン・ファッションウィークを見て、「ドレスのトレンドが続く」とInstagramにポストする者もいた。しかし、ファッションは今や次シーズンのトレンドを物語るだけでなく、世界が直面している問題とそこから派生した陰鬱なムードにデザイナーたちが底抜けの明るさと大胆さ、そして同時に禁欲的なシンプリシティをもってそれぞれの姿勢と視点を打ち出す場となっている。今シーズンのミラノはそんな現代ファッションのあり方を見事に表していた。FENDIのショーでは、カール・ラガーフェルドが、デリケートでおちゃめな贅の世界を優美なロココ様式に仕立てあげたコレクションを発表し、淡いパステルやガーリィな輝きをマリー・アントワネット調に描いた。リップはメタリックカラーに塗られ、ラガーフェルドが作り出した女性像はまるでマイセンが磁器素材で作ったフィギュア、もしくは繊細なガラス製の置物のように見えた。ファッションでは、遠い歴史からモチーフを持ってくることは、現実逃避と解釈される。デザイナーが、理想とする世界をおとぎ話として語るのがファッションというものだからだ。

Fendi spring/summer 17

ラガーフェルドが打ちだした、抗いがたく美しいこの「軽さ」——ムードにおいて、も物理的な存在感として、そして服の動きとして——を見ていると、誰もがそのおとぎ話に入り込んだような錯覚に陥った。ミウッチャ・プラダが同日の夕方に催したショーにも、同様の軽さが見られた。しかし、そこで「軽さ」を「トレンド」とするのは性急にすぎる。FENDIでは顕著に見られた"贅"の雰囲気は、PRADAでは身を潜めていた。軽さは依然として大きく表現されていたものの、それを引き立てる要素としてミウッチャは贅ではなく、誰も予想しえなかった世界観をそこに描いた。「シンプルなやり方で、新しいエレガンスのあり方を探りたかった」とミウッチャはバックステージで語った。「エレガンスなんて古臭い言葉だと思われてしまうかもしれないけれど、その言葉が意味するのは、教養や洗練のようなもの。親密でリアルな何かが滲み出てしまう瞬間とでもいうべきものよね。それをコンテンポラリーな形に落とし込みたかったの」。このコレクションは、激動の世界に対しミウッチャが打ちだした反応であり姿勢だった。しかし、スポーティでミニマルなアイテムの縁に配されたマラブーフェザーを除き、そこに贅の要素は見られなかった。ストレートな表現に終始したPRADAのコレクションに見られたのは、どこか不気味とも、挑発的ともとれる"あけすけさ"だった。ラガーフェルドが、軽く透明感のある優美さで心地よいドリーミーな空気感を打ち出した一方で、ミウッチャは断定的なシンプリシティをもって世に何かを問うているように見えた。感情を包み隠さない——そんな強さがあった。

Prada spring/summer 17

同じ日にショーを開催したカール・ラガーフェルドとミウッチャ・プラダという伝説的デザイナーふたりの作品群から2017年春夏のトレンドを導き出すとするならば、それは「エレガンス」ということになるだろう。あまりにもベタなファション用語(いつの時代もデザイナーはエレガンスの体現を目指し、いつでも私たちはエレガンスを目指して服を選ぶのだから)だが、今シーズンは従来よりも広い意味でのエレガンスが打ち出されていた。FENDIとPRADAが表現したメッセージは、単にファッショナブルな意味でのエレガンスではなく、生きる姿勢としてのエレガンスだった。必ずしも理想的とは言い難い世界情勢と、エレガントに対峙する姿勢を打ち出していた——こんなことを家族行事に集まった親戚たちに言ってしまったところを想像してみてほしい。「パステルカラーとフェザーだよ」と適当に答えておけばよかったと後悔するのは目に見えている。FENDI、PRADAと同じ日にショーを披露したジェレミー・スコットのMOSCHINOのショーは、より説明がしやすいかもしれない。MOSCHINOのショーは、薬を入れる瓶を模したインビテーションから誰もが期待していた「病院をテーマにした一大エクストラヴァガンザ」ではなく、パリのサロンをイメージしたセットに、タブを引っ張れば動き、着せ替えも楽しめる紙の人形をテーマにしたショーだった。実際に引っ張ることができそうなタブが配されたデザイン——前から見ると、写真を切り抜いてそこに平面的に貼り付けたのではないかとも見えるだまし絵のスタイルで、ドレスの絵がプリントされたドレスが強烈な印象を残した。MOSCHINOが掲げたテーマもまた、「エレガンス」だったと言って良いだろう。来シーズンのトレンドを導き出さねばならない立場にある私には、これをエレガントだと言う人たちに反論する理由など、ひとつも思い浮かばない。

Moschino spring/summer 17

Credits


Text Anders Christian Madsen
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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