時代を越えるプロテストソング10選

イギリスのEU離脱決定で混乱が続く今、革命について語ろう。

by Matthew Whitehouse
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12 July 2016, 3:17am

イギリスのEU離脱が決定した今、私たちの頭をよぎる疑問は「誰もプロテストソング(抗議の歌)を歌っていないのはなぜだ?」ということ--先日行われたグラストンベリー・フェスティバルでも、怒りと不安を声高に叫ぶ歌声は聞かれなかった。一致団結する民衆など存在しえないほどに、我々の政治観は真っ二つに分かれてしまっているのだろうか?そうなのかもしれない。しかし、以下に挙げたプロテストソング10曲を聴いてみてほしい。1曲の歌が世界を変えることができた時代があった。革命が必要だって?1曲1曲をじっくり聴いてみてほしい。

ビリー・ホリデイ『狂った果実』(1939
ジャズ・ライターのレナード・フェザーはこの曲を「音楽の世界で初めて人種差別を告発した歌」と表した。アメリカの悲劇を語り、聴く者の魂を揺さぶって心の奥底に訴えかけ、心を掴んで離さないこの曲は、ここに挙げた全てのプロテストソングの基盤となっている。

レスリー・ゴーア『You Don't Own Me』(1963
キャスリーン・ハンナ以前、さらにはマドンナより前、音楽界で初めて女性という人間の存在を主張した当時17歳のレスリーと、彼女のヒット曲「You Don't Own Me」がポップス界にはあった。

マーヴィン・ゲイ『ホワッツ・ゴーイン・オン』(1971
ラブソングをトレードマークとしていたマーヴィン・ゲイ。しかし「Ain't No Mountain High Enough」のデュエットを機にまるで兄妹のような親しい関係を築いた歌手、タミー・テレルの死が彼を変えることになる。テレルに強い衝撃を受けたマーヴィンは、歌で社会的な訴えをあらわにするようになった。アルバム『ホワッツ・ゴーイン・オン』はベトナム戦争や警察による暴力を歌い、人間の意識を嘆くという内容で、世界に疑問を投げかけた。

U2ブラディ・サンデー』(1983
世界情勢や政治への積極的な発言で知られるバンド、U2。この「ブラディ・サンデー」は彼らがこれまでに発表した中でも、最も政治色が強い曲だ。北アイルランドのロンドンデリーで、デモ行進中の市民が多数、イギリス軍によって銃殺された1972年の"血の日曜日事件"を主題として書かれた(2014年リリースのアルバム『Songs Of Innocence』収録曲「The Troubles」について訊かれたU2は、自身らの政治的中立性を明言したが、これを聞いたアイルランドのナショナリズム政党シン・フェイン党のジェリー・アダムスは激怒し、事務所に貼ってあったU2のポスターを破って捨てたと報じられている)。

ザ・スミス『Meat Is Murder』(1985
トゥインクルの「Golden Lights」をカバーした理由はなぜ? とも思うが、同じアルバムに収録された「Meat Is Murder」は間違いなくザ・スミスの曲の中でももっとも"耳を覆いたくなる"曲だろう。この曲を聴いたことを機にベジタリアンになったひとも多いはず。

パブリック・エネミー『Fight the Power』(1989
もとはスパイク・リー監督の映画『ドゥ・ザ・ライト・シングス』のサウンドトラックに収められたこの曲だが、"あけすけに怒りをもって挑発する"というパブリック・エネミーのスタイルが打ち立てられた記念碑的作品。コミュニティのために闘う、人権運動のアンセムだ。

ゴシップ『Standing In The Way Of Control』(2007
アメリカでの同性婚を違法として譲らなかった結婚制度に「Fuck you」と中指を立てる曲「Standing in the Way of Control」は、ヨーロッパのインディ・ディスコシーンでヒットし、2007年UKシングルチャートで7位を記録した。

PJハーヴェイ『The Words That Maketh Murder』(2011
ポリー・ジーン・ハーヴェイは、ふと周囲を見渡して「なぜ誰もアフガン戦争について語らないのだろう」と疑問に思ったという。20年におよぶ彼女のキャリアにおける金字塔であり、同時に戦争を題材に書かれた詩として突出した作品だ。

ケンドリック・ラマー『Alright』(2015
希望のメッセージを綴ったこの曲は、それ自体がプロテストソングというわけではなかった。だが、昨年世界で巻き起こった黒人人権市民運動「Black Lives Matter」で広く用いられ、新たな意味を持つに至った。

ビヨンセ『Formation』(2016
ビリー・ホリデイの『狂った果実』から77年の時を経て、いま世に平等と平和を問うことができるのは、やはりビヨンセだ。彼女は女性であること、黒人であることを受け入れ、それを祝福し、謳歌しようと歌う。この曲はビヨンセのキャリアにおいて最も政治色の強い曲だろう。彼女が世界を圧倒する--もしかすると現代の私たちも、昔と同じようにプロテストソングを求め、歌い続けているのかもしれない。

Credits


Text Matthew Whitehoues
Photography Rosie Harriet Ellis
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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