ポーランドのストリートウェアブランドMISBHVの挑戦

ニューヨーク・ファッションウィークに今年、初参加となるMISBHV。デザイナーのナタリア・マクゼックが、退屈なアヴァンギャルドと深みに欠けるラグジュアリーについて話してくれた。

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sep 8 2016, 6:10am

ポーランドのストリートウェア・シーンを牽引するMISBHV。ワルシャワのストリートに生まれ、国際的評価と敬意をほしいままにしながらも、未だ東欧圏特有のエッジさとソ連崩壊後のロシアのクールさを保っている稀有なブランドだ。大胆なグラフィックに70年代的視点を盛り込むなど、ストリートパンクにポストパンク的解釈をほどこした作風でリアーナをも魅了している。またデヴィッド・ボウイのイメージを反復的に用いてファッション業界に歓喜の渦を巻き起こすなど、大きな活躍を見せている。その彼らだが、今季はニューヨーク・ファッションウィークを席巻しそうだ。

あなたがたはこれまでリアーナやオランダのブティックAnsh46とコラボレーションし、世界の注目を集めてきました。そして今回はニューヨーク・ファッションウィークに参加すると発表して大きな話題となっていますが、どのような気分ですか?
ありがとう!自分たちが信じる道を進もうと心に決めているの。ニューヨークのファッションウィークでコレクションを発表するというのは私たちにとって大きな挑戦になります。2週間ですべてを準備しなければならなかったしね。過去4シーズンにわたってメンズウェアのシルエットのみに焦点を当ててきたから、もう"MISBHVボーイ"という世界観は十分に作り出せたのかなという気がしていて、ここからさらに前進するには限界を押し広げて新たな領域に飛び込んでいかなきゃならないと感じたの。その第一歩が、ニューヨーク・ファッションウィークでウィメンズのシルエットに挑戦してみるということ、そしてMISBHVのトレードマークになってしまっている力強いグラフィックをとってミニマルな作品を作るということだった。私たちのショーは、Alexander Wangのショーが始まる1時間前なんだけど、それが分かったとき「トップデザイナーたちのブランドと肩を並べてショーを開催するんだ」と実感したわ。でも、プレスもバイヤーも私たちがニューヨークでショーをやることを喜んでくれてるようだから、がっかりさせないものにしたい。

ショーを通して表現したいものは?
2017年春夏コレクションは、抽象的で、かつ個人的なコレクション。17歳の少女と2000年代のディスコをテーマに、若さゆえの無知や活気が、テクノの激情とミックスし、ノスタルジアが現代性と融合する世界を描こうとしたの。デザインの過程で、「Age of Love」という曲を繰り返し聴いていたんだけど、このコレクションを体現する曲を選ぶとすれば「Age of Love」ね。

ニューヨーク・ファッションウィークに参加できるということは大変な栄誉でしょうし、ブランドとして成長する大きなチャンスになると思いますが、それは同時にMISBHVが新たなステージへの挑戦を強いられるということも意味すると思います。より大きな注目を浴びるなかでストリートウェアとしてのあり方を貫くことができるでしょうか?
ひとつひとつの作品を作る際のアプローチは変わらない。その時その時の好きなものを追求して、最適だと思うことをやるのみよ。私たちは自分たちに忠実であろうといつも肝に銘じてるの。本当の自分たちというものを忘れずにいようとね。2017年春夏コレクションは、今まで私たちが作り出したなかでもっとも自由なコレクションだと思うわ。

MISBHVはラグジュアリーブランドになっていくのでしょうか?今年の8月には、Louis VuittonGucciの商品も扱うワルシャワの高級デパートVitkacに初のブティックをオープンしましたね。
Gucciの隣への出店は意図的なもの。Vitkacが打ち出すモダンなビジネスアプローチの表れでもある。ここ数年で激変したファッション業界の現状を見れば、Vitkacのやり方が理解できると思うわよ。たとえば「ストリートウェア」という概念は、5年前であれば「反体制のファッション」を意味していたけど、現在はOff-WhiteやVetementsが打ち出す世界観を意味するようになってる。それが新しいストリートウェアの存在なのよ。かつては相容れないものとして扱われていたアヴァンギャルドとラグジュアリーの概念だって、今では互いに影響し合うものとして共存してるでしょう。アヴァンギャルドは単体じゃつまらない。ラグジュアリーなだけでも深みがない。面白いものはそのあいだに生まれるんだと思うの。 

MISBHVに関する報道は「ポーランド発」という部分が強調されがちですが、東欧トレンドがMISBHVの成功を後押ししたと思いますか?ゴーシャ・ラブチンスキーやロッタ・ヴォルコヴァ、デムナ・ヴァザリアらとの関連性を、あなたがた自身は感じているのでしょうか?
やっぱり同じ原風景を見て育ったわけだから、似たような美的感覚を持ってるとは思う。いまあなたが挙げた人たちにも共通点もあるしね。例えば、洗練された美はまず疑ってみる、ストリートウェアの要素を再解釈して積極的に取り入れる、ポップカルチャーのモチーフを使うとかね。

ここ数ヶ月は激務だったのではないでしょうか?ショーの後はどのような挑戦を考えているのでしょうか?
ニューヨーク・ファッションウィークに参加するまでの準備期間は、この数ヶ月だけじゃない。これまでの何年にもわたる努力の成果だと思ってるわ。今回のショーへの参加は私たちにとって過去最大の挑戦よ。次に何が起こるかなんて、私たちは考えない。次のゴールは9月10日であって、その先のことは考えていないの。9月10日のショー以降に見えてくる挑戦は、今回のコレクションとショーがどう評価されるかによるわね。

misbhv.com

Credits


Text Basia Czyżewska
Photography Nicole Maria Winkler dla Misbhv
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.