『CURIOSITY』から学ぶ、もの作りのあるべき姿

インタビュー誌『CURIOSITY』の2号目が刊行された。編集長の山木悠は、会いたい人に会って話を聞くという単純なことを、たっぷりの情熱を持ち一冊にまとめていた。本誌に登場した編集者の川島拓人が、今回は逆に山木をインタビューした。

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05 december 2017, 12:22pm

『CURIOSITY』とは山木悠が手がけるインタビュー誌である。2014年に自費で創刊したというその内容は、イギリスやスウェーデン、もちろん日本を放浪しながら出会ったクリエイターたちに取材した“記録”のような印刷物である。そしてその『CURISOITY』の2号目に出演してくれないかと洋服屋を営む友人の紹介を経て、連絡が入ったのは、2017年8月頃だった。一体どんな人が作っているのだろう? そんな興味から会ってみることにした。

実際に会い言葉をかわすと、彼がこのインタビュー誌にかけている熱量をすぐに感じ取ることができた。そして私を取材する頃には、すでに<ネイバーフッド>の滝沢伸介を始め、新進気鋭のコンテンポラリーアーティストの小林健太、さらにD.A.N.の櫻木大悟などの取材を終えているということを聞いた。普通は、一冊にまとめられないようなクリエイターたちが同列にピックアップされている。そこに、彼の人に対する好奇心が現れている。そんな彼の"前のめり"な好奇心からか、話していると、暑くるしさすら感じた。しかし、その暑くるしさは、同じメディアに携わる人間として、嬉しさでもあった。

数週間後に行われた取材のあいだ、彼は特にメモを取るわけでもなく、または質問表を準備しているわけでもなかった。思いつくままに質問を四方八方から飛ばしてくる。

「メモを取るよりも、普通に話しを聞きたいという気持ちでやっているからなのかもしれません。確かにインタビューという形式を取ってはいるんですけど、対話に近い感じなのかもしれない。このようなスタイルにしたのは、自分が今まで取材をし、それを原稿に書き起こした事が数えられるぐらいしかないからです。それに沢木耕太郎さんの『流星ひとつ』を拝読していたときに、聞き手と語り手のパーソナリティが出ているところや、次第に二人の間で関係性が生まれてくる感じがすごく好きだったんです。なので、『CURIOSITY』でも、そのような聞き手語り手との間に生まれていく物語が透けて見えるようなインタビューにしたいと思っていました」

“素人くさい”。そう思われることも仕方のないことだろう。というのも彼は、今までに編集者として訓練された経験もなければ、出版社や編集プロダクションに在籍していたわけでもない。つまり彼の武器は、情熱だけといっても過言ではない。情熱という刀一本だけを持ち、振りかざしている。しかしそんな彼の姿は、編集者として、またはメディアを作る人間として、頼もしい姿だ。表現したいというピュアな感情だけで、もの作りをする28歳。若さゆえのこの無鉄砲な姿勢が、<ネイバーフッド>のデザイナーを務める滝沢伸介や建築家の荒木信雄、さらには日本という国境を越え、スウェーデンの陶芸家リサ・ラーソンや2004年にターナープライズを受賞したイギリス人アーティストのジェレミー・デラーらの心を動かした。彼らのような多忙を極めるクリエイターたちがなぜ『CURIOSITY』の取材に対し、首を縦に振ったのか、詳細まではわかりかねるが、おそらく彼の情熱が多くの割合を占めていることだろう。“暑くるしさ”、自分が感じたそれと同じである。本来、熱量というものが、ものづくりの根本にあり、時にそれが技術よりも大切なものであるというのは、あながち間違いではない。それを彼が体現している。

「基本的に行き当たりばったりで作ってる部分が多いかもしれません。さすがに、i-Dや他の媒体で取材を依頼されたときは、僕も質問表などを作ると思いますが、『CURIOSITY』という自分の持ち物であれば、下手に背伸びせずに純粋にやっていきたいと思っているんです。僕が編集者らしいことをやったり言葉にしても、それはいつかバレてしまうことだと思うんです。だけど、この独特な立ち位置をうまく利用することで、一般の編集者だと聞くのをためらってしまいそうなこととかもズバズバ聞いてしまえるのかな……と。なんの恥ずかしさもなく。そのようにして考えると、自然と一般読者との目線合わせができているのかなとポジティブに考えています」

“28歳”という若さ、そして“素人編集者”であることを最大限に生かした彼にしかできない本作りである。ジャンルや世代にとらわれず、建築家、写真家、デザイナーなど、多様な生き方をしているクリエイターたちに人生について問い、このような考え方もあると、ユース世代にオルタナティブな“way of life”を提案をする。「僕にはまだ早いからできない」ではなく「今の僕にだからこそできること」とポジティブに考えるのが彼の編集力や行動力の根底にある。そして彼自身も知らず知らずのうちに、一つの生き方や考え方としてのサンプルとなっている。

「僕のようなド素人が勝手に本出していてもいいんだってことを体現してみたかったのかもしれません。本というものが若い世代からしてみるとニッチなものになりつつあると思うんです。でもニッチなものとして避けていくのは、もったいなさすぎる。だからその距離感を少しでも縮められる役割が僕に果たせたらいいなってことはずっと考えています。出版社で働いたことがなかったら編集者って名乗っちゃいけないのか? 編集者でないと本を出してはいけないのか? 決してそうではないと思うんです。本来好き勝手やっていいものであることを証明したかった。それにウェブではなく紙面での表現を選んだのにはもう一つ理由があって、それは自分がどれだけ本気でものづくりをやっているのかを示すためでした。本気の姿勢が伝われば、取材を受けてくれた皆さんも腹を割って話してくれるのだと1冊目、2冊目を作っていて感じましたね」

何も彼のように『CURIOSITY』ほど立派なものを作る必要はない。コピー機で作ったZINEでももちろんいい。そこに彼のような情熱さえあれば、必ず誰かがその溢れるエネルギーに惹かれ手にしてくれるだろう。そして共感され、さらに大きなエネルギーとなっていく。そこに面白さや、やりがいを感じた彼が今後どのような活動をしていくのかが楽しみである。

Photo by Shuya Aoki