Stills courtesy of A24

ジョナ・ヒル『Mid90s』出演のスケーター俳優、サニー・ソリヤック

地元LAのスケートパークで、ジョナ・ヒルにスカウトされた13歳の俳優サニー・ソリヤック。すでに“スケート歴10年”の彼が、監督との出会いやスケートを楽しむ真髄、撮影中のエピソードを語り尽くす。

by Brittany Natale; translated by Ai Nakayama
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20 December 2018, 9:54am

Stills courtesy of A24

スケートで育った人もそうでない人も、『Mid90s』には郷愁を感じるだろう。ジョナ・ヒルの監督デビュー作となるこの作品の舞台は90年代のカリフォルニア、主人公は13歳のサニー・ソリヤック演じる、シャイな男の子スティーヴィーだ。母子家庭で育ち、兄にいじめられながら、この世界で自分の居場所を探し求めるスティーヴィー。彼をとりまく環境は、地元のスケーターグループに所属する年上の男の子たちと友情を築くようになって一変する。彼らとの交流を通してスティーヴィーの世界は広がり、彼は良いことも悪いことも含め、人生の意味で知っていく。

本作では、ジョナ・ヒルの多才っぷりが十二分に発揮されている。緊張感あるシーンと笑えるシーンの緩急をつけながら、『Mid90s』は男の子の成長に不可欠な、あの名状しがたい揺れる感情を見事に切り取っている。本作にリアリティを与えているのが、若いキャスト陣の迫真の演技。そのうち数名は、ソリヤックが所属しているカリフォルニアのクルー〈Illegal Civilization〉のメンバーだ。Illegal Civilizationの創始者で本作の共同プロデューサーを務めるマイキー・アルフレッドが、ジョナ・ヒルがLAのスケートパークで俳優をスカウトしてるらしい、と耳にして、彼にソリヤックを紹介した。当時11歳のソリヤック少年にとっては寝耳に水だったが、幸運なことに、ジョナ・ヒルも彼に感銘を受けた。ヨルゴス・ランティモス監督のスリラー『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2017)へ出演するなど、ソリヤックが当時からプロの俳優として活動していたことを、ジョナは知らなかったらしい。

この度i-Dはソリヤックにインタビューを敢行。キックフリップについて、失敗を学ぶことについて、そして90年代のスケートカルチャーへの敬意を語ってくれた。

——『Mid90s』を観て、私自身の青春時代の体験を思い出しました。実際、何度かぐっときちゃいました。

ありがとうございます! うれしいです。気に入ってくれて、感動してくれてよかったです。最高。

——試写室で何度か泣いちゃったくらいです。

そんな映画をつくれて本当によかったです。お客さんの心を開き、感動させる映画ってあんまりないから。

——どこで育ったかは関係なく、誰もが子ども時代を思い出す作品だと思います。あなたがこの作品に出ることになった経緯は?

『Mid90s』の共同プロデューサーでIllegal Civilizationのマイキー・アルフレッドが、LAでスケートやってるキッズを集めてたんです。彼が僕のInstagramをジョナに見せたら、ジョナが食いついてくれて。自分が求めているものがジョナにはみえていたんだと思います。マイキーは僕が〈Stoner Skate Plaza〉でスケートしてるのを知ってたから、ジョナとルーカス(・ヘッジズ)を連れてきて、僕を紹介してくれました。そのとき僕は普通にスケートしてたんだけど、彼らに呼ばれて、行ってみたらマイキーが友だちに僕を紹介したいって。どういうことかよくわからなかったんだけど、ふたりが「スケートすごい上手だね」って声をかけてくれて、僕は「何これヤバ!」って感じでした。

それでジョナが話し始めて、演技の経験はあるか、って訊かれました。演技のキャリアは6~7年、って答えたんだけど、多分ジョナは「学校のクラブとか、CMのオーディションを受けてるとかって話だろうな」って思ってたんじゃないかな。でも僕がヨルゴス・ランティモス監督の『聖なる鹿殺し』に出ました、って伝えたら、実はジョナとヨルゴスがすごく仲の良い友人だったんです。ジョナがヨルゴスに話をしたら、ヨルゴスが僕のことをすごく褒めてくれたみたいで。ジョナはオーディションをする前から、僕を使うって決めてたかも。でも一応オーディションを受けて、受かって、出演が決まりました。

Mid90s

——本作のために何か準備はしましたか?

僕とジョナで、たくさんリハーサルをしました。出演が決まった次の週には「ソルトレークのどこどこでリハーサルをするよ」っていわれました。そこで脚本をさらったり。マイキーも、リハーサルには大体来て、いろいろ手伝ってくれました。そうやってひとりでリハーサルをしたけど、たまにキャサリン(・ウォーターソン)やルーカスとやるときもありました。ふたりともいるときもあったし。結構使われなかったシーンも多くて。最初、仮編集の段階では上映時間3時間くらいあったんです。それが編集されて80分になりました。

脚本は20回以上読んだと思います。ジョナは3年くらいかけて脚本を書いたみたいだけど、ずっと脚本に忠実なわけじゃなかった。ジョナは、脚本は置いといて、僕たちに即興で演技させようとしました。僕たちは、即興でめちゃくちゃな流れにしちゃうよりも、ちゃんと脚本に従って演じたほうがいいんじゃないかと思ってました。だから脚本に従って、自分のキャラクターをしっかり叩き込みました。それがちゃんとできるようになったら、ジョナが「よし、じゃあリハーサルに入ろうか」って。あと、ひたすらスケートビデオを見まくる夜もありました。撮影が始まり、衣装を着て、セットの家のなかに入るときには、ジョナは細部まで完璧に準備してました。

——音楽から部屋に飾ってあるポスターまで、90年代が完全に再現されてましたもんね。

ジョナは舞台となる時期から数ヶ月でもズレてるモノは使おうとしませんでした。あるいは時間がかかってもその部分をカットしたりしてました。ジョナは当時のスケートカルチャーを冒涜するようなことはしたくなかったんです。だからそこにはすごく力を入れてました。道に落ちてるゴミ、音楽、壁の色までこだわってました。

——あなたが演じたスティーヴィーというキャラクターはどんな子ですか? 彼とは共通点がある? それとも全然違う?

あんまり似てないかな。彼はすごくシャイだから。会話にも入ろうとしないし、まだ自分の居場所が見つかってない。もちろんそれは悪いことじゃないです。それに苦しむ人は多くいます。それが人生だと思うし。友だちグループを探さなきゃいけないときもあるし、すごくシャイで、あんまり積極的になれないことだってある。僕にもそういう経験があります。でもスティーヴィーとは違う。どこか似てる点を挙げるとしたら、何度転んでもトリックを練習するところかな。スケートへの情熱も似てるかも。スケートに関するところなら結構似てるかもしれません。

——あなたはスケート歴が長いですが、そもそもスケートにハマるきっかけは? スケートのどんなところが好きですか?

3~4歳のころにスケートを始めました。そのころにはもうスケートをしてるって認識はありました。すごく楽しかった。そのころから、階段を滑り降りたり、スケートランプを滑ったりしてました。でもスケートの何たるかを本当に理解して、スケートを続けたい、キャリアを築きたい、って思ったのは7歳のときです。トリックを身につけたり、キックフリップを覚えたのがそのころだったから。キックフリップができるようになると、スケートが与えてくれる本当の感覚やエネルギーをより感じられる。そういうスケートの感覚って、他の映画ではあんまり的確に描けていないと思います。スケートの本当の良さを伝えられてない。

Mid90s

——どうしてそう思う?

大体、映画で参照されるのって80年代の文化なんです。「カワバンガ!」みたいな。ジョナと僕たちは、お互いに率直な意見をいいあう関係でした。「それはちょっと違うんじゃない? あんまりしっくり来ないよ」って。スポーツはとにかく上手くなるためには練習あるのみ。スケートも同じですが、求められるのは10%のスキル、90%の気持ちです。スケートのトリックってすごく危ない。15段もの階段をジャンプしながら、ボードを3回転させつつ、身体もひねらないといけない。10回とか100回トライしたって、成功するのは1回くらい。せいぜい2回とか。だから気持ちがかなり大事です。それはスケートだけじゃない。我慢強く、諦めない気持ちが必要です。成功より失敗が多いから。そうやって大人になっていくんだと思います。失敗の方法を覚えてから、ようやく成功できるんです。

——好きなスケーターは?

います! ブレンダン・ウエストゲート、ルイ・ロペス、あとは…。

——ごめんなさい、難しい質問をしちゃって。

いや、楽しいです! 待ってください、えーっと、あとはアントゥアン・ディクソン。ライダー(・マクロックリン)とはいっしょに滑ってます。ライダーのスケーティングを観るのが大好きなんです。スタイルが最高で。

——個人的に『Mid90s』はすごくリアルな青春映画だなと感じました。この作品から若い人たちにどんなことを学んでほしいですか?

スケーターに気に入ってもらえたらうれしいです。てか絶対気に入るだろうし。多くのスケーターが、昔スケーターだった人も、今プロとしてやってる人たちも含め、この映画を絶賛してくれました。もっと若い人たちは、昔のスケートってこんな感じだったんだな、って学べると思います。あと、ナケル(・スミス)が「そんなことしなくていい、お前は自分らしくいればいい」ってセリフをいうんです。他人に認めてもらおうとかしなくていい。仲良くなれば、いつか自分らしくいられるようになるって意味です。

——スケートで育った友人たちとこの映画について話したら、みんな「90年代の自分を観てるみたい。自分の成長記録の映像を観てるみたい」と言ってました。

観た人の多くが泣いたり、感動してくれました。多くの人に響いたみたいです。監督デビュー作なのに、こんな映画をつくれるジョナはヤバいなって思います。しかも演技経験のないキッズたちを、登場人物になりきらせて、すごく自然に観せてる。才能がないとそんなことできません。

This article originally appeared on i-D US.