Photography Tim Walker. Styling Ib Kamara. Rollneck Coach 1941. Trousers Seen Users. Hat Marc Jacobs. Gloves IbkamaraStudios.

【interview】ソランジュが語る、地元のジャズバンド、礼拝堂、ブラックネス

内省的でありながらも宇宙を震撼させる、ソランジュの最新アルバム『When I Get Home』。そのはじまりは、前作『A Seat at the Table』のツアーでおぼえた違和感だった。私たちは、故郷ヒューストンでソランジュと会い、14歳から通っていたチャペルや、地元の本屋をめぐりながら言葉を交わした。

by Stevona Elem-Rogers; translated by Atsuko Nishiyama
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27 May 2019, 10:44am

Photography Tim Walker. Styling Ib Kamara. Rollneck Coach 1941. Trousers Seen Users. Hat Marc Jacobs. Gloves IbkamaraStudios.

This is a condensed version of the full story available in i-D's The Homegrown Issue, no. 355, Spring 2019. You can order it here.

ソランジュ・ノウルズの誕生日は、占星術の世界で「魔法のカスプ」(※カスプは十二星座のなかの連続するふたつの星座の境界線のこと)と呼ばれる、かに座と双子座が融合する瞬間だ。いかにも、と私は思う。ソランジュが次に何をするかはいつも予測不可能だが、何であれきっと美しさに満ちて、真摯で、そして少しだけ謎めいている。

クリスマスの翌日、テキサス州ヒューストン。到着すると、そこには霧がかった地平線のパノラマが広がっていた。緊張で落ち着かない。ホテルの部屋のなかをついウロウロする。彼女との時間を気安いものにしてくれるはずの要因が、むしろこの挑戦を手強いものにしてしまっている。ソランジュと私は友人なのだ。とはいえ彼女はもちろん、「あの」ソランジュでもある。

私は彼女について書くことを任された。才能にあふれたグラミー賞受賞シンガーソングライターでヴィジュアルアーティストの彼女が自分の原点を語り、ひとりの人間として、特に南部出身の黒人女性として経験したことをシェアしようと決意してくれた。

彼女の放つ精彩のすべてを捉える白紙のページなど存在しないのはわかっている。それでも私は、彼女の姿を描きだす使命を感じている。

私の思考の流れはクリス・カウフマンからのメッセージに中断された。カウフマンはソランジュの右腕として働き、彼女の幼なじみでもある。「そろそろ迎えに行くから、一緒に出かけよう」

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Hats and gloves Ibkamarastudios. Trousers H&M. Earring Chanel.

【故郷ヒューストンへ】

「俺は嵐をかいくぐってきた、だからギャングスタになれた」ソランジュはそんなふうに21サヴェージの「a lot」をラップしつつ、第3地区(サードワード)の名所などを指さしつつ、ブラブラ歩いていく。肩ごしにうしろを振り返る。「いま通りすぎているのがプロジェクト・ロウ・ハウシズ(※貧困地区だったサードワードで1993年より開始されたコミュニティ活性化のプロジェクト)。私のアルバムも、かなりここでレコーディングしたの」

彼女が話しているのは、リリースが待たれる四枚目のスタジオ・アルバム『When I Get Home』のことだ。黒いカウボーイハット(出身地テキサスにちなんで)とオフショルダーのトップ、トレードマークの豊かな眉毛が印象に残る姿に「ソランジュ・カミング」という言葉だけが添えられた、どこか謎めいた画像が昨年SNSを駆けめぐって以来、ファンは息を潜めるようにリリースを待ち続けてきた。

高い評価を得た前作『A Seat at the Table』は、ソランジュが真のポップスターであり本物のパフォーマンス・アーティストであることを証明した。それは彼女に多くの栄誉をもたらしもした。ハーバード大学のアーティスト・オブ・ザ・イヤー、『グラマー』誌のウーマン・オブ・ザ・イヤー、『ビルボード』誌のインパクト・アワード。さらにその独創性のあるファッションで、ニュースクール大学との共催で行なわれた第70回パーソンズ・ベネフィットでも表彰された。キャリアのはじめからここを目指してきたとも言える、夢のような時間の連続だった。

そして、それらの信じられないような瞬間はすべてここテキサス州ヒューストンに、本来の彼女自身に、つながっているとソランジュは言う。

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Rollneck Coach 1941. trousers Seen Users. Hat Marc Jacobs. Gloves IbkamaraStudios.

【母親が経営する美容院】

ソランジュを知るとわかるのは、彼女がプリンス並みに私生活を明かさない人であるということだ。Instagramのアカウントに自分の影武者を置くことを好まず、SNSから何ヶ月も姿を消すこともある。ネット上に息子の写真が載るのも許可しない。さらに、先進的な方針のクリエイティブ・エージェンシー〈Saint Heron〉を自ら立ち上げ、所属する自分以外の黒人アーティストに焦点が当たるような運営をしている。

ヒューストンのサードワードに来たことで、いろいろなことが少しずつわかってきた。アーティストを型にはめがちな業界にいながら、なぜ彼女が常に自身の思いに忠実でいられるのかも見えてきた。

コミュニティの意識と各自のすばらしさを軸に据えるのは、ここでの伝統なのだ。似たような小さな町、アラバマ州バーミンガムのタイタスビル出身の私にも幼少期の思い出がよみがえってきて、胸に迫るものがあった。ほとんどの場合、人種としての私たちには黒人だけに向けて作られた場所やものを得る機会がない。けれどここでは、フィリシア・ラシャド(※ヒューストン出身のアフリカ系アメリカ人の女優、テレビ『コスビーショウ』などに出演)の声や、デビー・アレン(※同じく『グレイズ・アナトミー』などに出演する女優、フィリシア・ラシャドの妹)の足音がこだまする。

ソランジュ自身のママが経営する美容院で、ヘアアイロンを当ててもらいながら打明け話をする女性たちの姿までも見えてきそうだ。濃い色の肌をした、威厳あるカウボーイたち。DJ Screwのゆったりと無骨なサウンド。茶色の肌の小さな女の子は、自分の可能性に疑問を感じることさえなかったはずだ。先祖たちが誇りに思うようなことを必ずやり遂げられるというお手本に、日常的に囲まれていたのだから。

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Hats and gloves Ibkamarastudios. Trousers H&M. Earring Chanel. Socks Uniqlo. Shoes Soft Criminal

【地元のチャペル、スピリチュアル】

「さあ、着いた」スピードを落として止まる車のなかで、ソランジュが告げた。私たちはメニル・コレクションの敷地内に駐車した。ここはヒューストンの顔ともいえる美術館で、昨年ソランジュが「SCALES」というパフォーマンス作品を堂々と初披露した場所だ。

「SCALES」は、彼女が前のアルバムをめぐって黒人女性や男性たちと交わした会話の延長線上で作られ、ソランジュ自身が作曲と振り付けを手がけた作品だ。雨の降るなか、彼女は子どものような駆け足で、隣接した敷地にある八角形のロスコ・チャペルへと急ぐ。いっぽうラクエルと私は1本の傘の下にきゅうくつに収まって、ヘアアイロンでセットしたばかりの生え際の髪を乱すまいとしている。

礼拝と美術作品のインスタレーションが行なわれるその場所に足を踏み入れると、自分がどこにいるのかわからなくなるような感覚におちいった。現実感が希薄になる。半ばしかたなく半ば意識的に、私はソランジュのそばを離れずにいた。

「ここには14歳のころから来てるの」彼女は言う。漆黒に塗られた存在感のあるマーク・ロスコの絵画に囲まれた、長い木のベンチに私たちは座っている。緊張感のある静けさだ。彼女はしばらく私の隣にいてから立ち上がり、今度は壁の方を向いて床に直接腰を下ろした。チャペルには空からの光線が神々しく差し込み、完璧な角度で彼女の肩の上に降り注ぐ。思慮深げな、ピーカン色の顔が照らし出される

私はソランジュのスピリチュアルな一面を意識する。2018年のメットガラで、キラキラ光る網のバッグのなかにフロリダウォーター(※数種のエッセンシャルオイルなどが調合され香水や化粧水として使用されるほか、浄化や保護の効能があるとしてまじないや神秘的な儀式などでも使用される)のボトルを携えていたというだけではない、瞑想的な構造こそが彼女の芸術性と認識されるようにもなってきている。

最初のアルバム『Solo Star』から彼女が常に書いてきた内省的な歌詞にはじまり、毎回まちがいなく理性の領域を新たに解放していく革新的な映像作品に至るまで、その背後にいるのは、闇のなかで戦い、光を引き寄せるという究極の仕事に挑むひとりの生身の人間だ。私たちがソランジュの作品から感じる高揚も痛みも、そのすべての瞬間を、彼女はまず自身で経験しなくてはいけなかった。

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Left: Solange wears Jacket Balenciaga. Hat, scarf and bow IbkamaraStudios. Socks Uniqlo. Boots Jimmy Choo. Right: Eric wears all clothing and shoes Topman. Hat, scarf and bow IbkamaraStudios. Socks Uniqlo.

【ブラックネスについて】

雨が降るのもかまわず、ソランジュは車に戻る代わりに数フィート上ったところにあるメニル書店まで歩こう、とみんなを誘う。そのユニークな店にそっと入っても、すぐに彼女に気づく人はいない。それも時間の問題だとはわかってはいたけれど。

ソランジュは、小規模ながらすばらしい選書の並ぶ棚の本を次々とめくっている。そしてアドリエンヌ・エドワーズの『抽象芸術における黒について(Blackness in Abstraction)』を、じっくり眺める。

「ぴったりのタイミング。トイン(・オージ・オーデュートラ。※ナイジェリア生まれの米国のアーティスト)とちょうど話していたの。白が常にデフォルトとしてあるアートの世界で、デフォルトとしての黒とはどんなものか。白い壁や白紙という概念へのこだわりがあるのはなぜか?って」

彼女の頭の回転の速さに、言葉が追いついていないのがわかる。さらに何ページかめくると、その本をすでに購入を決めたものの上に積み重ねた。そしてまた手を止め、次の本をじっと見つめる。アメリカ人アーティストで哲学者のエイドリアン・パイパーによる鉛筆画のセルフポートレイトが大きく使われている。かなり惹かれている様子なので、声をかけてみる。「私の親しい友だちがその人の教え子なんだけど、すごくいい先生で、大胆な人だって」

彼女がすばやく私の方を振り返る。「そうなの? すごい! そう、私も彼女のコーリングカードのシリーズ(※「My Calling (Card)」1986-90年。パーティや食事の席などで人種差別的な発言をした相手やバーに女性一人でいるだけで声をかけてこようとする男性に対して、メッセージの書かれたカードを手渡すパフォーマンス)がすごく好き。私も自分のカードを作って、雑誌の撮影現場で配らないとねって友だちに言われたの。そうすればあの人たちもわかるんじゃないの?だって」

思わず笑い合ったけれど、笑いごとでは済まされない。彼女の確認も取らずに修正を加えた写真が、『イヴニング・スタンダード・マガジン』の表紙に使われたことが思い出された。彼女の頭上にあった、髪で編まれた冠のような金の輪が写真から消されたことを知ったソランジュは、「dtmh (※ Don’t Touch My Hair=私の髪に触らないで、の意。ソランジュの楽曲のタイトルでもある)」と声をあげた。その記事を書いた女性も、連帯の意味を込めて自分の名前を記事から削除するよう要請した。

自分の発言と身体をしっかりとコントロールできるようにしたいという彼女の希望に従い、公に発表される記事はすべて信頼の置ける黒人女性が執筆を担当することになっている。そこには彼女自身も含まれる。考え込んでいた私を引き戻すように、ソランジュが言う。「エイドリアン・パイパーはすごくいいね。私の好きなタイプの女性って感じ!」

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Khalil and Eric wear trousers Topman. Chaps stylist’s own. Accessories Chanel. Shoes model’s own.

【「ホーム」の感覚】

私たちはレジに向かう。40代の黒人女性の店員は「少しお待ちください」と言ったあと、ソランジュの顔を一目見るやモードが切り替わる。「あら、あなただったのね。もちろん、待っていただかなくていいですよ」歌うような口調だ。ソランジュは微笑んで「大丈夫、順番を待ちますから」と答える。

そして本のページをめくりながら、考えを声に出す。「家(ホーム)をそう呼べる場所にするものは何かと、ずっと考えていて……」言い終わる前に次の本に目を移している。『アフリカン・アメリカンのクリスマス物語(A Treasury of African-American Christmas Stories)』。さっと内容を見て、彼女はその小さなハードカバーの本を私のほうに差し出した。「あなたの好きなニッキが載ってる!」

私が作家のニッキ・ジョバンニを子どものころから敬愛しているとソランジュが覚えていてくれたことに、嬉しさで顔が赤くなった。どれだけの本があれば、家(ホーム)の感覚をたしかなものにできるだろうか。具体的な場所としても、そして心のなかにあるものとしても。

ようやく私たちの番が来た。「お待たせしました! 調子はどう? あなたが地元に帰ってきてくれて嬉しいわ」。ソランジュはますます笑顔になる。「ああ、ありがとう。ここにいられるのはいつも最高!」

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【委ねること、即興】

ソランジュの新作『When I Get Home』を私が聴くあいだ、彼女はモールに出かけた。アルバムについて話すために再び集合したとき、趣のあるアパートの裏口をクリスが開けると、踊るソランジュの姿が見えた。大音量の音楽にあわせて、ソランジュとラクエルは女子学生のようにクスクス笑い合う。私も笑って言った。「きっと一緒に踊ってると思った」。終わるとふたりは倒れこんだ。ソランジュはカウチに、ラクエルは隣の椅子に。

このアルバムを聴いて『The Wiz』を思い出したと彼女に伝える。サウンドが、というよりも感覚的に。自分自身という家(ホーム)に戻る旅には、強い心が必要だ。このアルバムには闇と光の両方が満ちあふれ、ショーアップされていながら、内省的でもある。

アルバムへと至る旅をより深く理解するために聞いてみた。アメリカとヨーロッパ各地でソールドアウトしたツアーを終えたあと、ヒューストンに戻ってきたいと思ったのはなぜなのか。

彼女は頭を左に傾けて言う。「この何年か、原点や起源ということについてよく考えてきたの。そこからどれだけのものを持っていくのか。逆にどれだけを置いていくのか。故郷(ホーム)に帰って、自分自身やすぐそばにあるもののなかにそのスピリチュアルな答えを探ったことの影響は大きかった。『A Seat at the Table』の楽曲をパフォーマンスする前回のツアーで、私の体は思うように反応してくれなくなったの。そのときに、私がいま必要としているものが何か、体はわかっているのがおもしろかった」

2017年、ソランジュは自律神経の病気を治療中であると発表した。予想外の病気はどんな場合も落胆を伴うものと思ってしまいがちだが、彼女のニューアルバムはまさにその正反対だ。輝かしく官能的で、陶酔感さえ漂っている。二年のあいだに彼女をこの感覚とサウンドに導いたものが何だったのかを知りたくなった。

ソランジュはカウチに少し深く座り直す。「自分の体に起きていることを自分でコントロールできないような移行の段階を過ごすなかで、私の体を取り巻く恐怖がすべてなくなるような境地に到達したの。私の体は私のものだけど、そのあり方はこれまでとはまったく違う。時間をかけて育んだ、美しい愛の関係。私はいつも自分のセクシュアリティや官能性に意識的だった。けれどそのかなりの部分は、この二年で根本から変わった。新しく感じるようになった自由はすばらしかった。そういう場所は自分で作れると学んだの。自分を輝かせるのに必要なのは、自分だけなのだと」

「自由」は追求しがいのあるコンセプトだ、特に黒人女性にとっては。いま現在の彼女にとって、それはどう見えているのだろう。ある曲のなかで響いた彼女のたくましいほどの笑い声に、私は心を奪われた。

彼女は言う。「このアルバムを作るのはとにかく楽しかった! 喜びを感じ、表現するための場所を作りたいと心から思っていたから。前作はとてもパーソナルなものだったけど、たくさんの最悪な事態に向き合わなくちゃいけなかったこともたしかだった。私は重荷を背負っていて、それがなくなることはないとわかっていた。でも今回、解決や答えの多くは自分の外にではなく内側に向いていると感じたの。『A Seat at the Table』はしっかりと構成されたもの、テーマ性を持つもので、さらに癒しの経験でもあった。けれど今回のアルバムでは、必要な答えの追求に世界を巻き込むことはできなかった。ただそのなかを生きるだけで」

【地元のジャズバンド】

前作『A Seat at the Table』の楽曲をパフォーマンスするのと同時期にレコーディングを始めた新作には、ソランジュ本人も認める前作の瞑想的なシナジー作用の影響がたしかに感じられる。とはいえ、そこにはまた別のダイナミズムがある。アルバムがそのような過程で作られたことは、最終的な仕上がりに関係したのだろうか。

「もちろん! このアルバムのレコーディングでいちばんよかったのは、ほとんどの曲をワンテイクで撮ったこと。曲のあたまからメロディを歌い、コードを組み立てる。私と(テンポを合わせるための)クリックトラック、相棒のジョン・キーのドラムかキーボード、そしてジョン・カービーのシンセだけ。その15分の演奏のなかからベストな3分を探し出すようにした。実はボーカルの音を作り直そうとしてみた箇所もいくつかあった。でも同じエネルギーは出せなかったから、そのまま委ねることにした」

「このアルバムはボーカル・パフォーマンスを重視するものではないし、歌詞の言葉を聞かせたいわけでもない。伝えるべきことを、音波と周波数だけで作ってみたかった。重要なのは私がどんなふうに感じたかを表現することだった。つまり感情、フィーリングをね」

そして彼女は、17歳のころジャズバンドにいたことを打ち明けてくれた。「私たちのバンドはまあ下手くそだったけど、心意気はあったの! そのときのメンバーの何人かは今回のアルバムのために集まってくれて、おかげでプッシュアップされた部分もある。即興に慣れていて、私の頭のなかのあらゆるコード構成をよく把握している人たちだから。折に触れていつも私のそばにいてくれる人たち。すごく開放的な気持ちになれたし、楽しくやれた」

まもなくアルバムがリリースされるいまの気持ちをたずねてみると、彼女は顔を輝かせた。「すごくいい気分! このアルバムが持つエネルギーは過去二年間の私の進化の発露でもあり、その祝福でもある。何もかもが、とても特別な場所から出てきたもの。生きること、それをそのまま体現するような曲を作ってきたから」

【目撃すること】

ヒューストンを訪ねた日から数週間、私は大好きなトニ・モリソンの引用を何度も思い出していた。「真実は私たちの内部に、私たちの歌のなかにある。そこに種が埋まっている。危機に対して常に身構えているのは不可能だ。愛を感じなければならない、魔法を信じなければならない。それもまた人生だから。私はそう感じる。まるで幻想の話をしているように聞こえるかもしれないが、まったくそんなことはない。むしろひどく現実的なのだ。なぜなら私には、黒人作家としての、目撃しなければいけない人間としての、かつてはどうであったかを記録する人間としての、責任があると思うから。かつて私が知っていた世界の小さな一部が、忘れ去られてしまうことがないようにしなければならない」

ひとりひとりの人間として、私たちのほとんどが何らかの心の痛みを抱えている。けれど個人や集団としての私たちの物語が伝えるのは、それだけではない。心からの笑いがあり、夢があり、深い友情も、勝利もある。その事実こそが、いまこうしてある私たち自身を形づくってきたのだ。ソランジュの声が私のなかでこだまする。「いつ故郷に帰ってきても、変わらないすばらしさがある。ここにいると、すべてがしっくりくるし、私自身でいるのが心地いい。愛されていると感じる」

自分自身でいることに完全な心地よさを感じている愛すべき存在を目撃すると、どうなるか。あなたはきっと、自分の頭をいまより少し高く持ち上げ、新しい世界を思い描けるようになる。私たちの最良の部分が次の世代に受け継がれた世界を。

ソランジュはまさにそんなふうに、いま再び群れから抜きん出て先を行き、新しい道を作っている。

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Rollneck Coach 1941. Hat Marc Jacobs. Gloves IbkamaraStudios.

Credits


Photography Tim Walker
Styling Ibrahim Kamara

Hair Virginie Pinto Moreira at St Lukes using Sebastian Professional. Make-up Sam Bryant at Bryant Artists. Photography assistance Sarah Lloyd. Digital technician Matthew Coats. Styling assistance Gareth Wrighton, Ola Ebiti, Sasha Harris, Nafisat Raji and Yuriko Takiguchi. Make-up assistance Claudia Savage. Production Jeffrey Delich at Padbury Production. Models Khalil Mcneil. Eric Harleston.

This article originally appeared on i-D UK.