シドニーDJシーンの未来は女性がつくる

シドニーのナイトライフをオープンで安全に、そして活発にし続けようと闘う女性たち。

by Wendy Syfret
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02 August 2016, 5:36am

シドニーのナイトシーンを知るひとは、誰もが口を揃えてこう言う——「多才な女性DJたちが進化し続けているワンダーランドだよ」と。音楽の世界において、女性であるということは決して簡単なことではない。それでもシドニーは、オーストラリアでも有数のエキサイティングでサポーティブなシーンを作り上げるべく、ともに闘う女性たちのコミュニティを育んでいる。コラボレーションやプロモーションで女性同士が助け合うことで、彼女たちは自らの地位を確立するだけでなく、次に続く世代の女性DJたちのために道を切り拓いているのだ。

オーストラリアではクラブへの最終入場を午前1時半、ドリンクのラストオーダーを午前3時と規制する法案が可決・施行され、これに対して多くの市民が反対の訴えを続けている。それを大規模な抗議運動で表したのが、Keep Sydney OpenとReclaim the Streetの2団体だった。今年初旬にそれらの団体が行なった抗議運動は世界的な注目を集めた。そこで団結し、一大シーンを率いる女性DJたちの存在とパワーに世界は息を飲んだ。「私たちが愛するこの文化を守ろう」と訴えた彼女たち。クラブ営業への規制に対抗姿勢を打ち出す活動をも超えて、オーストラリア国内のパーティーシーンを安全なもの、受容の心溢れるもの、そして世界レベルのものにしようと闘っている彼女たちを、ここに紹介する。

マトカ

職業は?
主にシドニー、たまにメルボルンやブリスベンでDJをやっています。ベースからオルタナティヴラップ、R&B、ブレイクビート、ヴォーグ、フットワークまでありとあらゆるタイプの音楽をプレイします。お高くとまったりせず、フロアのみんなが汗だくになるまで踊らせたいと思って回しています。
1年前、素晴らしい女性ふたりとともに、Honeyというパーティを立ち上げたんです。女性の音楽とクリエイティビティを推奨していこうとさまざまなイベントを開催しているんですが、そこではパフォーマンスからDJセット、プレイする音楽にいたるまですべてが、自らを女性と自認するメンバーや従来のジェンダー区別にとらわれないメンバーによって行われているので、参加者全員が気持ちのいい空間と時間を作り出せるんですよ。

才能ある女性へのサポートに協力的ですが、女性DJであることで差別を感じたことはありますか?
女性がステージに立つ=男を誘っているのだと考えられているらしく、実際にそのように扱ってもいいと思われていたりします。それと、DJの世界は男性優位の業界ですから、そこで女性が対等に才能を発揮しようと頑張ってはいけないような雰囲気もある。その昔、女性のDJ(ミュージシャン全般にいえることだけれど)はただのピンナップガールだったわけで、そう考えれば今はずいぶんと良い時代になったけれど、それでもまだまだ先は長いですね。

次に大流行するものは何でしょう?
グライムがまた大流行しますね。それと、2001年に戻ってLove Paradeに行くような格好をするのも!

@matkamusic

フレックスマミ

職業は?
昼間はソーシャルメディアのマネージャーをやっていて、それ以外の時間はDJや、ラジオ局のFBi Radioの番組「Sidechains」でラジオレポーターをやってる。

DJを始めたきっかけは?
身勝手な理由からだったわ!今も昔も、洗練されて美しい音の趣味には常に自信があったの。それと、どこのクラブに行っても「AUXコード周りのことを仕切りたい」と思ってたわ。

シドニーのシーンは他の都市のシーンとどう違うのでしょうか?
多様性に富んでいて強力。それに、あまり知られていなようだけど、クラブ文化を取り巻く最近の変化にもかかわらず、今でも大盛り上がりよ。

女性として、そのようなシーンのなかで人とは違う扱いを受けていると感じることはありますか?
まったく感じないわ。だって、統計的な意味でも一般的な意味でも、この業界で女性であることは、言ってみれば障害のようなものなの。でも個人的な経験から言えば、私はサポーティブで志をともにする同業の友人たちに囲まれて、恵まれた環境を与えられてきたもの。

音楽で、何に今、情熱を持ってあたっていますか?
楽器で数音を鳴らしただけで、それを聞いた人がそれに何かを感じたり、考えさせられたり、何かを顧みたりさせることができるっていうこと。魔法だし、魔術の極みだと思うの。その感覚的な部分かしら。

@flex.mami

アンディ・ガーヴィ

職業は?
あらゆることに手を出してるの!昼間はFuture Classicで働いたり、FBiの女性DJ育成プログラム「Dance Class」のコーディネーターをしていたり。夜はDJやFBi Radioで番組ホストをやったり、ギグに行ったり友達と音楽をやったりしてるわね。

シドニーには女性DJのコミュニティができ上がっていると感じますか?
うん、素晴らしいオンラインコニュニティがあって、そこに参加している人たちはみんな協力的だし、お互いにチャンスやアドバイスを与えあっているのよ。「Dance Class」のコーディネーターをやっていて気付いたのは、女性同士でサポートしあうネットワークがあることで、女性がこんなにも生き生きと開花できるんだってこと。女性のロールモデルはとても重要だし、今では世界中で活躍している女性DJやプロデューサーがたくさんいる。ジェイダ・G(Jayda G)やアヴァロン・エマーソン(Avalon Emerson)、ルーシー・クリシェ(Lucy Cliche)、それとアムファング(Umfang)なんかが特にお気に入りよ。

あなたはKeep Sydney Openの運動に参加していますが、それについて聞かせてください。
今年初旬に起こった抗議運動で、私は15,000人の参加者の先頭に立っていたの。ヴァレリー・ヤム(Valerie Yum)、ナイト・フライト(Nite Fleit)、ボビー・ヴァイブ・ポジティブ(Bobby Vibe Positive)らと並んで立っていたら、感動でゾクゾクしたわ。Reclaim the Streetsの運動では、ペルヴィス(Pelvis)と一緒にフロート車も出したのよ。
最近の情勢において、若い人たちがそれぞれの思いを主張して、志を同じにした人々と出会うことがとても重要だと思うの。コミュニティが団結して行動を起こすのを見て、本当に感動したわ。Keep Sydney Openの中枢メンバーであるタイソン・コー(Tyson Koh)は素晴らしいまとめかたをしたと思う。

行動を起こし、反対の姿勢を打ち出したことで、シドニーのシーンは以前よりさらに強いつながりを見出したと感じますか?
感じるわ!同じ規制と闘って、シドニーからナイトライフが失われていくのを一緒に感じているから。あんな規制で得したひとなんて、この業界にはひとりとしていないのよ。私たちみんなでそれを感じているの。コミュニティ内で責任のなすりつけあいがあってはいけない。責められるべきは政府とカジノだけなんだから。
かつてシドニーに存在した素晴らしいナイトライフを恋しく思うひとは、これからも絶対に諦めてはダメよ!めげずにバーやクラブへ出かけていって、深い時間までバンドやDJたちと夜を楽しんで、サポートしなきゃならないんだから。

@andygarveyandygarvey

ナイト・フライト

職業は?
ひとを踊らせること。

女性ということで、男性DJとは違う経験を強いられてきたと感じますか?
そうね。もしも私が自分を女性と自認する性でなかったら、このシーンが私の目にどんな風に映るのかはわからないけど、でも私の男友達は誰ひとりとして「男にしては上手だね」なんて言われたことないだろうし、3,000人もの客を前にあと5秒でプレイするっていうときに、酔っ払ったアホがXLRケーブルをわざと抜くなんてシチュエーションに立たされたこともないだろうから。
他にも、露骨じゃないにしろ女性が頻繁に直面させられる問題はたくさんある。でもね、全体的に見れば、DJでいられるというのは最高よ。ほかに素晴らしいことがたくさんあるから、そんなちょっとしたクソみたいな出来事なんて、なんでもないの。

法規制によってあなたの仕事に影響は出てきていますか?
あの規制が施行されてから、知っているだけでもすでにバーやクラブが40軒以上も閉店に追い込まれたわ。今でも営業しているお店も、午前3時までしか営業できない。ということはイベントの数が減って、DJの仕事も減る。駆け出しのDJなんてもっとチャンスが減っているわ。彼らが学ぶ場もなくなっているのよ。

バーやクラブの営業規制法に関して、あなたが行なっている活動について聞かせてください。
私の友人ボビー・ヴァイブ・ポジティブ(Vibe Positive)がKeep Sydney Openの抗議運動をオーガナイズするのを手伝っていて、「指揮担当をやってみない?」って話を持ちかけてきたの。当初は、大勢のひとを仕切って動かしたりすることに躊躇したけど、当日、15,000人もの人が集まったそのエネルギーに気持ちが高まってしまって、メガホンを手に参加者たちを先導して歩いたわ。マジカルな経験だった。

Keep Sydney OpenとReclaim the Streetsは「これは私たちが愛するシドニーじゃない」と政治家たちに知らしめるのに市民が立ち上がり、団結するのに大きな役割を担ってきた。両グループとも、様々なシーンのクリエイティブで知性溢れる人々を引き合わせることにも大きく貢献してきた。関われることに感謝してるわ。

@nitefleit

ルーエン・ジェイコブス

職業は?
音楽オタクとして、熱狂的音楽ファンとして、そしてキュレーターとして音楽の世界で仕事をしてる。ラジオ、DJとしての仕事、雑誌、ミックステープなんかを通して見つけた音楽をシェアするのが私の仕事。

シドニーの女性DJコミュニティについて聞かせてください。
女性のコミュニティは力強いし、今も進化を続けているわ。友達の友達がDJとして入ってきたり、コミュニティのメンバーがDJを教えていた子が成長して入ってきたりしてね。かつては女性だけでコミュニティを作ることすら難しかったはず。でも今、女性DJのコミュニティが教えたり学んだりし合うことで、新たな才能を育成できる土壌が築かれてきているんだと思う。そうなってくると、女性のプロモーターが、ジェンダーを問わず友達をラインアップにブッキングしたりしてね。プロモーターは、豊かな才能を見つけると放ってはおけないもの。より多くの女性が女友達からDJを学べば、シーンはより活性化される。これは私たちが私たちの手で作り出した動きなの。

Keep Sydney OpenReclaim the Streetsの存在によってシーンはどのようにより強いつながりを生んでいったのでしょうか?
抗議マーチにはロックバンドからダブステップのDJ、ディープハウス、エレクトロニカまで、政府から誤解を受けたと苦痛を訴えて団結したミュージシャンがたくさん集まっていたの。普段はお互いの音楽ジャンルをけなし合っている人々がともに立ち上がるというのは最高にクールなものだった。怒りが団結を生んだのね。

今楽しみなことは?
今月、ドバイでプレイすることと10月にポルトガルへ行くこと。それからベルリンとロンドンで現地のシーンやアーティストたちを発掘したり、クラビングして楽しむこと。

@luenjacobs

Credits


Text Wendy Syfret
Photography Chloe Nour
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.