ノイズが誘う奇妙なロックの世界

バラバラの土地で生まれた4人の日本人がロンドンで出会い、結成されたロックバンド、BO NINGEN。今春、Savages、Primal Screamとのツアーを終え、6月にミニアルバム『Kizatsu no Uta』のリリース、さらにはFUJIROCK出演を控えた彼らに迫る。

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19 July 2016, 1:45am

BO-NINGEN WEARS ALL MODEL'S OWN

"現代の『ジャプ・ロック・サンプラー』"と評されるロンドン在住の日本人ロックバンド、BO NINGEN。『ジャプ・ロック・サンプラー』というのは、イギリスのカルト・ロッカー、ジュリアン・コープが、世界的に伝説視されている60年代、70年代日本のアンダーグラウンド・ロック・シーンについて、研究、執筆した一冊のこと。極東の島国で育まれた風変わりな地下音楽とその知られざる歴史は、欧米のリスナーのエキゾチズムを大いに刺激したが、BO NINGENのフロントマンのTaigenもまた、欧米のリスナーと同じように、留学先のロンドンで母国の知られざる地下音楽と出会うことに。そして、その大きな衝撃が、BO NINGENにバンド独自のアイデンティティを与えることとなった。

「最初のきっかけは、知り合いから教えてもらった灰野敬二さんとメルツバウ(秋田昌美のノイズ・プロジェクト)なんですよ。そこで初めて、日本のメディアでは紹介されていないけれど、海外でレジェンドとして扱われている日本のエクストリーム・ミュージックの存在を知ったんです。そこからYouTubeを通じて、裸のラリーズ、マゾンナをはじめ、日本で独自に発展したサイケデリックロックやノイズミュージックをあれこれ聴くようになりました。当時、学校外ではBO NINGENの活動があり、大学ではサウンドアートを専攻して、ノイズの論文を書いたりしていた自分のなかで、学校内外のことが相互作用しあうようになったんです。その後、(前衛音楽家であり、音楽批評家でもある)デヴィッド・トゥープがやっていたインプロヴィゼーションのワークショップを受講したら、今度はイギリス人である彼から禅の感覚に近い即興演奏の間の取り方を教わったり、結局、自分は日本を捨て切れなかったということなんでしょうねーーその一方で、当時はイギリス人の真似をしても、イギリスのバンドには勝てないという思いもあり、ロンドンのバンドに対する幻滅もありました」

きゃりーぱみゅぱみゅやBABYMETALが、不思議の国・日本のポップ・カルチャーを濃縮して世界進出を果たしたように、BO NINGENは地下音楽のドン、灰野敬二を彷彿とさせる長髪のおかっぱ頭と黒ずくめのスタイルを身にまとうと、日本が世界に誇るサイケデリックロックやノイズミュージックに触発されたバンドサウンドで欧米の音楽シーンに切り込んでいった。

「それ以前、僕が日本のポップミュージックが嫌いだったんです。でも、ノイズミュージックと出会ったことで、海外の人が灰野さんやメルツバウの音楽に新しさを見出したのと同じような視点ーーエキゾチックな、ストレンジなものを面白がるような感覚ーーで日本のアイドルとかポップミュージックも楽しめるようになった。つまり、ベクトルこそ違えど、日本のエクストリーム・ミュージックとアイドル、ポップミュージックは、奇妙な、個性的な音楽という意味では一緒なんですよね」

アイドル・オタクであることを公言するTaigenが、BO NINGENの全てではないし、そのサウンドは、サイケデリックロック、ノイズミュージックとアイドルポップの融合を意図したものでもない。しかし、インプロヴィゼーションから発展的に生まれる彼らのサウンドスケープには、ベースミュージックやヴェイパーウェイヴといった現行のエレクトロニックミュージックさえをも許容するフラットな感覚が一貫して流れている。

「僕らの音楽は、アシッドパンクであるとか、サイケやメタル、プログレやベースミュージックといった色んなジャンルを引き合いに出して語られることが多いんですね。そういう音楽は、特定のジャンルに特化した音楽と比べると、広く伝えていくのは難しいかもしれませんけれど、リスナーの価値観が多様化している今は、大きいムーブメントがシーンを席巻するようなことは起こりにくいというか、むしろ、小規模なシーンの盛り上がりが世界中に無数に点在していると思うんです。だから、BO NINGENの音楽が自由な解釈で楽しまれている状況は追い風になっていますし、僕らとしても色んな音楽にオープンなスタンスで、なるべく否定から入らないようにしているんです。全てを理解、肯定するわけではないんですけど、色んなタイプのリスナーやライブのオーディエンスを混ぜて、理想的にはワンマンライブにフェスのような幅が持たせられたらいいんですけどね」 女性ロックバンド、サヴェージズとの2か月に及ぶヨーロッパ・ツアーを終え、息つく間もなくプライマル・スクリームのイギリスツアーでサポートを務めたばかりのBO NINGEN。FUJIROCK2016への出演を目前に控え、6月にミニアルバム『Kizetsu no Uta / Live in Paris』のリリースした彼らは、現在、制作進行中という4枚目のアルバムとともに更なる荒野を目指す。

Credits


Photographer Masami Naruo
Text Yu Onoda