涌井智仁個展「Long,Long,Long」

高円寺のGarterで個展を開催している気鋭のアーティスト、涌井智仁。混乱状態にあるアート界の次の一手を志向し、現在注目が集まっている彼にインタビューを行った。

by i-D Staff
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03 June 2016, 12:25pm

高円寺駅の北口から阿佐ヶ谷方面に伸びる北中通り商店街を進んだところにGarterはある。ここは、デザイナーの江幡晃四郎が運営しているオリジナル&セレクトショップGarterとアーティスト集団Chim↑Pomが2015年から共同で運営しているアーティストランスペース。傾きかけているビルの見た目に反し、開催されているエキシビションは、どれもエクストリームだ。これまでにも、映画監督としても有名な園子温の個展をはじめ、アナーキーで勢いのあるアーティストを紹介している。そんなGarterで現在開催されているのが、涌井智仁の個展「Long,Long,Long」。現代アートの来るべき"次のステージ"を視野に入れ、プログラミングと様々なガジェットを駆使して作品を制作する彼に、今回の展示について話を聞いた。

展覧会のタイトルを「Long, Long, long」とした由来を教えてください。
ザ・ビートルズに「Helter Skelter/ヘルター・スケルター」という楽曲があります。この曲が作られた1968年は、前近代的な超越者や権力者が失効した時代で、貨幣や資本主義によって権力が内面化された時代でもあります。そういった近代的な"ヘルター・スケルター(混乱)"の状況は、人間がものの本質を見極めることを困難にしたと思います。同時にそれは、今もなお支配的に人間の思考にまとわりついています。アートを含む表現活動一般においても同様です。そんな"混乱"を乗り越え、次を考えよう、という意味で、次の曲である「Long,Long,Long」を引用しました。

光や、電波、データといったものを作品に取り入れているのはなぜでしょうか?
今回、私は「Long, Long, Long」を"長い距離"と訳しました。作品中で使われる光や、電波、データといった存在は、地球上でも数少ない"長い距離"や"無限"を作り出せるものです。私の展示が、この特殊なものの存在論を考えるためのひとつの契機に、もっと言うと、近代の混乱の渦中にいる我々を新しい次元に導くための補助線になれればと考えています。

今回の作品は、どのような問題意識を持ってつくられたのでしょうか?
近年のアート状況を見ていると寂しく思うのは、みな既にアートと呼ばれるものへの信頼が強すぎ、半ば依存関係とも呼べるような「作家-作品-観客」の接続過剰な関係が、より混乱する方へと流れていっているように見えることです。とりわけ、直接的に人と人の関係性を作品内に取り込もうというアートには、強い嫌悪感があります。そこで前提とされる"人間"という存在は、極めて暫定的で危うい存在だということをアーティストは意識しなければいけないと思います。そうでなければ、アートはマッチポンプ式に作られ、閉じられたエコシステムに堕ちるしかないでしょう。それを防ぐためには、我々が人間と呼ぶ極めて近代的な存在を一度絶滅させ、別のあり得た/あり得る人間を創造し、前提とする事から始めなくてはいけないと思っています。

ほとんどの作品にはサルが登場していますね。何を象徴しているのでしょうか?
私は今回の展示で猿のモチーフを多用しました。それはある種極端な形で、人間を再定義するために避けられない要素でした。私の作品内では、猿は宇宙まで柿を投げ、人間より雄弁に語り、我々が絶滅しても強くその未明のポテンシャルを放ち続けます。それは、我々が進化という部分的な成長によって今生きているように、別の進化による人類史の存在を暗示します。アーティストが今何をすべきか、という問いは常にアーティストの強烈なオブセッションとしてその心理的な位置を占めていますが、私にとってそれは別のあり得る世界を提示するという事に他なりません。私は今回の展示で"長い距離"を作り出すために、宇宙に向けて作品を発信するという試みをしています。それは技術的にも鑑賞行為としても成功しているか確認はできませんが、我々の眼を別の尺度や次元へと向け直す事で再発明される世界の存在を私は信じています。

会期最後の土日にはクロージングイベントが開催されますね。会田誠さんや、園子温さんに加え、出演者には若手のミュージシャンたちもいます。出演者はどのような人選になっているのでしょうか?
今回、個展のクロージングイベントとして、「MONKEY MAGIC」というライブ・トークイベントを企画しました。果敢に新しい表現に挑戦していると私が思うアーティストの方々をお誘いいたしました。さらにディレクターとしてイベント全体を指揮していただいている古藤寛也さんがお誘いしたアーティストのみなさんが集まり、非常に刺激的なイベントができたと思います。

クロージング・イベントは6月4日(土)、5日(日)にGarter Houseで開催される。

涌井智仁個展「Long,Long,Long」
開催中 2016年6月5日(日)まで
会場:高円寺 Garter
時間:14:00~20:00
料金:投げ銭制

Credits


Text Sogo Hiraiwa

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