「Deadman Walking On The Moon」MV公開:kZmインタビュー

YENTOWNのラッパーkZmとフランス人アーティストのジュリエット・カセッラが国境を越えてMVを制作。日本のホラー映画『仄暗い水の底から』をリファレンスのひとつにしたというそのMV秘話を聞いた。

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jun 20 2017, 11:00pm

ケンドリック・ラマーなど世界で活躍するラッパーのプロデューサーともコラボをする東京のHIPHOPクルーYENTOWNのラッパーkZm。そして若干24歳ながら、昨年LOUIS VUITTON 2016 CRUISE COLLECTIONにアートワークの提供を行ったジュリエット・カセッラ(Juliet Casella)と彼女の友人であるジュリア・トリッサン(Julia Tarissan)。この3人が国やジャンルを越え、MV「Deadman Walking On The Moon」を制作した。コンクリートに血で綴られたタイトルから始まり、まるでホラー映画のようなこのMVからはリアルさが伝わってくる。今回ディレクションに参加したkZmに、このMVがつくられるまでの制作秘話を聞いた。

まず、ジュリエットとジュリアとはどのように知り合ったんですか?
District24という展示会のプロデューサーの(栁澤)春馬が知り合いで、彼からLouis Vuittonのアートワークとかを手掛ける若いアーティストがいてダークな部分を持っているラッパーを探してるということで俺に声がかかったんです。それで、ジュリエットの作品をみたらかっこよかったんで「やりましょう」と決めるのは早かったですね。

彼女と一緒にやろうと思った一番の決め手はなんだったんですか?
俺、エフェクトが強いというかクドい映像が苦手なんですけど、彼女の生っぽさや無駄のないシンプルさがおしゃれだなと思いました。District24で展示されていたようなコラージュ映像は派手ですけど、あれも組み合わせのセンスがすごいですよね。

では、プロジェクトが決まってからはどう進んだんですか?
一緒に飲みにいったり遊んで仲が深まった時点で、じゃあどうしようかと。俺もいつも絶対ディレクションに参加してつくっているんですけど、まず曲について彼女に伝えて、あとは日本のホラー映画っぽさというか『仄暗い水の底から』とか、あのバイブスを入れたかったんですよね。

出演者のキャスティングについてはどのように選んだんですか?
今回はいつも遊んでるクルーというより「こういう奴いたら面白いんじゃねーか」という奴をYESBØWYと一緒に選びました。俺らのライブに来てくれてた俺と同じ髪型の超若い子を入れたりとか。「Little kZmじゃん」ってみんなで盛り上がってました(笑)

では、この曲Deadman Walking On The Moonについて教えてください。
この曲は、人間死んだあとどうなるかということと、リリック書いてたときの自分の精神状態を書きました。自分の居場所がどこに設定すればいいのかわからないというか、悩んでいたわけではないんですけど葛藤みたいなものがあって。俺、普段俺けっこう明るいんですけど、曲がダークなのは、曲で自分のこういう感情を吐き出せているんだと思います。

このMVのホラー映画感はkZmさんが提案したといっていましたが、なぜこういうディレクションを提案したのですか?
こういう曲はちらほら日本でも出てると思うんですけど、周りにツレやBボーイがいてみたいなのだと海外の真似になっちゃうので、逆に日本流の見せ方をジュリエットたちのような外人が撮ったらよりシュールになるのかなと思って提案しました。
ただ、俺をかっこよく映すというよりは彼女の演出が強いのでどこか小っ恥ずかしいところが俺自身にはあって、それで彼女とけっこう揉めましたね。

日本人ではない人と、日本のホラー映画感の共有って難しそうですね。
彼女がよっぽど日本好きなんだと思います。『仄暗い水の底から』以外にも、ある程度サンプルを見せたら「いいね」って感じだったんで。演出強めなのでリアルじゃないと思われるかもしれないんですけど、リリックが完璧にリアルでしかないので。よく聴いてくださいって感じですね。

今回のジュリエットとの撮影で印象に残ったエピソードを教えてください
自分の地元の団地で撮影したんですけど、言っちゃうと、自分の父の妹が飛び降り自殺した団地なんですよね。その人は結局未遂で生きてるんですけど。
その団地の入り口の郵便受けが並んでるところで撮ろうと言われたときに「え?そこ?」と思ったんですけど、カメラ越しにみると、確かにこれ日本しかないなと。彼女の目線が面白いなと思いました。逆に、もろ日本だろってところでは撮らないんですよね。フランス人だからなのかジュリエットだからなのかはわからないんですけど。ちょっとズレた視点を持っていて、俺もちょっとズレたとこが好きなんで、そこが合いましたね。
だから、団地の郵便受けの前で、みんなが去っていくところが一番好きですね。これはジュリエットの案なんですけど、不気味な感じがして好きですね。

今後、彼女たちとまたなにかする予定はあるんですか?
YUKI NAKAJOが今年の12月にフランスで個展やるんですけど、俺もついていってライブをやる予定です。そのときのVJをジュリエットとジュリアに頼む予定なので、今度はあっちのフッドで会えるのが嬉しいっすね。いい感じです。

Credits


Text Noriko Wada