日本初のぽっちゃり向け雑誌『ラ・ファーファ』編集長インタビュー

ぽっちゃり女子向けファッション雑誌『ラ・ファーファ』。ぽっちゃりをKAWAii文化とつなげた独自の世界観で、プラスサイズ・シーンの最先端を走るこの雑誌の編集長に「ぽちゃティブ(Pochative)」に込めた思い、体型の多様性、モデルのスリーサイズを必ず記載する理由について訊いた。

by Sogo Hiraiwa
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05 June 2017, 12:15pm

洋服のサイズがL~10Lであること。それが『ラ・ファーファ』の読者モデルの募集資格だ。2013年にぽっちゃり女子向けのファッション誌として創刊された『ラ・ファーファ』。「マシュマロ女子」や「ぽちゃティブ」といった、ぽっちゃり体型であることを肯定的に捉えたキャッチコピーを生み出し、次々と読者を獲得していった。創刊当初は年2回だった刊行ペースも、現在では隔月になっている。

近年、欧米では「やせている=美しい」といった、ときに不健康になりかねない美の価値観に異を唱え、自分の体型を(太っていようが痩せていようが肯定的に)受け入れていこうとする「ボディポジティブ」の考え方が広がりをみせている。日本はどうか? 体型の多様性に対する寛容さでいえば、そこまで進んでいるとはいえないだろう。

そうした中で、『ラ・ファーファ』はひときわ輝いてみえる。海外に目を向けても、プラスサイズ向けのファッション雑誌はそれほど多くない。日本では突出した存在だ。ではどのようにして『ラ・ファーファ』は成り立っているのだろうか?

今回i-Dはビューティ・ウィークの一環として、2016年7月から『ラ・ファーファ』の2代目編集長を務めている清水明央さんにインタビューを行った。

『ラ・ファーファ』は創刊時(2013年)、ムックで年2回刊行でした。今は隔月刊行されていて、読者が増えているということだと思うのですが、体感としてはどうですか?
創刊から携わっている訳ではないので当時のことは創刊編集長や編集スタッフから引き継ぎで聞いた話になりますが、読者の広がりを感じています。2013年以前はぽっちゃりしている体系の女性たちが着られる洋服はものすごく限られていました。『ラ・ファーファ』創刊時は、スマイルランドなどに代表される通販系や、百貨店の大きなサイズを扱う婦人服売り場、一部の量販店に加え、海外のファストファッションなども広まってきていたので、徐々に大きいサイズの選択肢が増えてきてた時期だった思います。それでも着られる洋服が少なかったそうで、街中とかで「ああいう洋服が着たいな」と思っても、大きいサイズの洋服がないという状況だったみたいです。でも最近になってプラスサイズ・シーンも盛り上がってきています。ぽっちゃり女子専用の通販サイト「Alinoma」ができたり、今年、4月に阪急うめだ本店の大きいサイズのフロアがリニューアルしたりと、それまでLまでしか展開してなかったブランドが3Lまで作るようになったりしていて、読者もそうですけど、ファッション業界も変化しているなと感じます。

この雑誌があることで読者やニーズの存在が示されて、ブランド側にもフィードバックされたのかなと思うんですけど、そういう感覚はありますか?
『ラ・ファーファ』には専属のモデル(ラファモ)がいるんですけど、彼女たちがメディアで取り上げられることで、プラスサイズの洋服を求めているオシャレな子たちがいるよということを世の中に対して示せているじゃないでしょうか。それがちょっとずつブランドにも認知されるようになってきたと思います。

それまでもプラスサイズの方は同じ割合でいたとおもうんですけど。それはブランドが見えてなかったということなんでしょうか?
ファッション業界は右肩上がりで成長しているわけではなくて、服がだんだん売れなくなってきて、レギュラーサイズの洋服が頭打ちになりつつあります。そんな中、今まではそれほど力を入れてこなかったプラスサイズの洋服にまだニーズがありそう、ということで新しく参入してきているブランドが増えてきています。また、これまではLサイズまでしか作ってこなかったブランドから、大きいサイズの洋服を作りたいけどノウハウがないから、どうすれば良いかという相談を受けたりもします。ブランドイメージを大事にしているのでレギュラーサイズで培ってきたイメージは崩したくないけど、大きいプラスサイズの洋服は作りたいという、なかなか難しい相談だったりします(笑)。

それはわがままというかなんというか……。
そうなんです。プラスサイズの代表的なタレントやモデルを想像すると、渡辺直美さんとかおかずクラブさんとか、お笑い芸人さんの"面白くてチャーミングなひとたち"っていうイメージを持っている人が多いですよね。逆に、テレビドラマで主演の女優さんはみんな細くてキレイだったりしますよね。例えば、ダイエット広告では、ぽっちゃりしている人はネガティブなイメージで、そこから痩せるとキレイで素敵なポジティブなイメージになる、という映像が流れています。そのため、ファッションブランドはそういったイメージにすごく敏感なので、大きいサイズの洋服を作ることに慎重になっているのだと思います。

テレビなどのマスメディアで活躍しているプラスサイズの女性の方って、お笑い芸人くらいしか思い浮かびませんね。
いまのところお笑いタレントさんになっちゃいますね。そこがもうちょっと変わって、女優、モデルでも色々な体型の人が活躍できるといいなと思っているんですが……。お笑いタレントさん以外だと、唯一と言えるかもしれませんが、ぽっちゃり体型でポジティブなイメージで認知されているのは、日本テレビの水ト麻美アナウンサーくらいではないでしょうか。オリコンの「好きなアナウンサーランキング」で今年も1位で、4年連続1位ですし。水トアナウンサーは標準よりも少しだけぽっちゃり体型で凄くぽっちゃりしているわけではありませんが、それでもぽっちゃり体型が受け入れられる土壌が日本にもできつつあると感じますね。前進の表れといいますか……。

誌面上ではブランドとラファモが一緒に話し合って服を作る企画もありますよね。
プラスサイズの洋服のつくり方がわからないというデザイナーさんやパタンナーさんは比較的多そうです。例えば、Lサイズの洋服を3Lで作るときに、ただ均等に大きくすればいいかというと、そうではありません。人によって、胸回り、腰回り、お尻、足とかボリュームがつきやすいところが人によって異なります。そのため、洋服の型を作るときに、どのへんのサイズに合わせていけばいいんだろうっていうのを知りたいそうです。細かい部分でも、クルーネックだと首周りが詰まっちゃってもきついからどれくらいネック周りを取れば良いかとか、VネックにしてもどこまでVを深くすればいいのかとなど、洋服を着る人たちによって着用感は異なります。レギュラーサイズの人たちとは違った悩みを持っているので、そういった悩みをクリアし、かつオシャレな洋服が作れるように座談会を開催したりもしています。洋服を作るにあたって大きいサイズの人たちで悩みを話し合って共有するのが一番大事なことだと思います。

『ラ・ファーファ』は服の着回し企画に多くのページが割かれていますが、人気があるんでしょうか?
洋服の着回し企画は人気が高いですね。『ラ・ファーファ』は、初めてオシャレをしたいという人にこそ読んでもらいたい雑誌なんです。今まではちょっとぽっちゃりしているのを気にしてオシャレを楽しめなかったり、着やすいからと上下ジャージーやスエットばかり着てたりと、洋服を全然気にしなかった人が『ラ・ファーファ』をみて、"あっ、こんなオシャレがあるんだ"って気づいてオシャレに気を使いはじめる。これから洋服のコーディネートを楽しみたいという人たちのきっかけにもなっていければ良いし、洋服にあまりお金をかけられない人でも、ひとつのアイテムを色々着まわせたほうがオシャレの幅が広がるので着回し企画は定期的にやっています。

モデルさんのプロフィールには、スリーサイズと体重が必ず記載されています。これはさっきの、体型がそれぞれ違うのを可視化させるためにやっていることなんでしょうか?
その通りです。読者を招いた座談会や読者アンケートでも「『ラ・ファーファ』のなにが参考になりますか?」と聞くと、自分に近い体型のモデルを探してその子の着ている洋服のシルエットを見るという人が多いんです。自分に近い体型のモデルを見つけて洋服を探せるのは『ラ・ファーファ』の最も実用的な部分だと思います。

多くのファッション誌は「憧れ」を打ち出していると思うんですが、『ラ・ファーファ』はそれとは違うような気がします。
誌面に出ているタレントやモデルに憧れるというよりは、洋服のコーディネートを真似しやすいというのを大事にしています。オシャレを楽しみたくて読んでいる読者も多いので、ラファモに共感して、私もこの子みたいな格好がしたいって思ってもらうえるところを目指しています。『ラ・ファーファ』を見て、実際にモデルになりたいっていう読者の方も多いんですよ。そういう人が出てくるのは、ラファモに憧れているというよりは、「あっ、私もなれるかも」っていう共感だと思うんですよね。

雑誌以外にもSNSやネットテレビも積極的にやられています。それは色々なメディアを通してプラスサイズを打ち出していこうということなんでしょうか?
プラスサイズ・シーンを盛り上げたいというのはもちろんあります。でも、『ラ・ファーファ』の存在がまだまだ認知されていないと感じています。この雑誌がもっと認知されればプラスシーンはさらに盛り上がっていくと思っていますので、多角的に露出して、世間一般の方々にこういう媒体があるんだということを知ってもらうのが『ラ・ファーファ』の一番大きな使命だと思っています。

「ポチャティブ・ジャパン・プロジェクト(PJP)」もその一環ですか?
日本だけじゃなくて海外にも『ラ・ファーファ』を広めたいと思ってはじめたのがこの企画です。『ラ・ファーファ』ウェブでも公式インスタでも、海外の方からけっこう見ていただいているんです。全体の10%程度ですかね。

それはすごい! 海外に『ラ・ファーファ』みたい雑誌ってあるんでしょうか?
知っている範囲だとないみたいですね。

ぽちゃティブ(Pochative)という言葉もすごくかわいい。
これはけっこう前につくった造語なのですが、「ぽっちゃり」している人が「ポジティブ&アクティブ」になれるようにという願いが込められています。公式SNSのハッシュタグでも#POCHATIVEを意識して入れていることがあります。

創刊の頃と比べてプラスサイズの服は増えてきましたか?
確実に増えてきていると思います。私は創刊の頃の話は聞いただけですが、当時は洋服を借りるのもかぎられたリース先しかなくて、服を探すのが大変だったそうです。今では、『ラ・ファーファ』に載っているショップリストの問い合わせた先を見てもらえればわかりますが、洋服を借りられるところがだいぶ増えて着ています。

海外だとプラスサイズモデルの打ち出し方はけっこう力強い印象がありますが、『ラ・ファーファ』には"かわいい"があるなと思いました。
海外は「ボディポジティブ」っていう概念が定着していると思うんです。ありのままの体型を受け入れて、自分の身体に誇りをもっていて堂々とできますし、それが当たり前という文化的な土壌があるので周りの人たちの理解もあります。日本だとぽっちゃり体型だと、からかいの対象になったりしやすいですよね。"ぽっちゃり=ネガティブな印象"という捉え方のほうがまだまだ多い気がしています。それをポジティブに変えるにはどうすればいいかと考えたときに、日本だとかわいい文化があるので、オシャレでかわいいっていう方向性で打ち出したほうが世の中に浸透しやすいのかなと思っています。

「かわいい」の幅を広げていくってことですね。それとは別に、「ボディポジティブ」の概念は日本でももっと広がってほしいですが……。
そうですね。そのほうが誰もが生きやすいんじゃないかなと思います。自分の体型に合わせて食生活を楽しんだりとか、健康である範囲であったら好きなように生きるのが一番ストレスもないですから。

ファッションショーやブランドの広告に出るモデルは非現実的な体型をしていると思うんですけど、そのことについてはどう思いますか?
フランスでは痩せ過ぎモデルを規制する法律が2016年4月頃に施行されていますよね。国がサポートして、痩せ過ぎはだめだよって打ち出すってすごいことだと思います。パリコレクションなどのランウェイを歩くモデルたちは、徐々に痩せすぎの人が減ってきていると聞きます。それでは、日本はどうかというと国からそのようなメッセージや取り組みは始まっていないですし、ファッションイベントなどでも痩せてる人ばかりが出演しています。ぽっちゃり体型の人でモデルとして出ているとしたら渡辺直美さんくらいではないでしょうか。直美さんはPUNYUS(プニュズ)というブランドもプロデュースされていて、ファッションアイコンとして、多くの人に認知されています。でも、逆にいうと直美さんくらいのタレントにならないと、ファッションイベントなどでの活躍は難しいのではないでしょうか。直美さんの後に続くモデルも今のところまだ出てきていないですし……。今の価値観を崩すのは、すぐには難しいと思っています。ぽっちゃり体型の人たちがぽちゃティブに生きていくことに対して、もう少し周りの理解が得られるようになっていけばいいなと思っています。

草の根的に少しずつという感じですかね。
そうなればいいなと思います。正直、『ラ・ファーファ』としてはそういった価値観を押し付ける気はまったくないんです。こうじゃなきゃいけないということではなく、ぽっちゃり体型の人を受け入れてくださいというスタンスです。

今後、『ラ・ファーファ』としてやっていきたいことはありますか?
ファッション情報だけではなく、ライフスタイルに沿った内容を広げていきたいと思っています。ぽっちゃり体型の人は食べるのが好きな人も多いので、ぽっちゃりファッション誌ならではの食の楽しみ方などを提案できたらいいなと考えています。あとはファッションショーとかイベントを開催して、多くの人に『ラ・ファーファ』やラファモを知ってもらう機会をより多く作りたいなと思っています。

la farfa』は奇数月20日に発売。
Instagram @lafarfa.official
Twitter @la_farfa_info

Credits


Text Sogo Hiraiwa