The Killsのアリソンが最新アルバムを語る

15年のキャリアで5作目となる最新アルバム『Ash & Ice』をリリースしたザ・キルズ。先日オーストラリアでツアーを終えたばかりのフロントマン、アンソン・モシャートにインタビューを行った。

by Max Oldfield
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28 June 2016, 1:12am

photography kenneth cappello

通算5枚目、前作から5年を経てリリースされるザ・キルズ(The Kills)の最新アルバム『Ash & Ice』には、これまでに彼らが築き上げてきたスタイルがすべて詰め込まれている。しかし同時に、そこには全く新しい世界観も打ち出されている。親しみある過去の作風に新たな独創性が垣間見える作品となっているのだ。

ジェイミー・ヒンス(Jamie Hince)がギタリストの命ともいうべき指の腱を故障してしまったこともあり、長く表舞台から遠ざかっていたザ・キルズ。最新アルバムのプロモーションとして周っている世界ツアーでは、アンソン・モシャート(Alison Mosshart)曰く「レコードと全く同じアレンジだけど、全く違う力を持つはず」の曲が数多く披露されるという。そのクラシックなスタイルと爆発的なエネルギーをもって、彼らはもともとライブ映えするように作られた楽曲の完成形をステージ上で見せつけてくれる。

アルバム全体を通して見られるのは強いブルース色だが、『Ash and Ice』にはアフロポップやゴスペル、そしてドリーミーでサイケデリックなギラーラインなども巧みに散りばめられている。そこにはザ・キルズの万能性と共に、彼らが属する音楽ジャンルには珍しく、ポップスのトレンドへの敏感さが垣間見ることができる。長きにわたり細心の注意のもと構築してきたバンドのイメージコントロールによるものか、それとも故障している指をカバーするためにヒンスが編み出した新たな作曲方法のおかげか、このアルバムでザ・キルズは見事に新境地を開いている。

カンザスシティーでオフ中のアリソンに、音楽、ビデオ、そしてザ・キルズのデモクラティックともいえる、共同体としての製作過程について聞いた。

最新アルバムの発売、おめでとうございます。まずは、最新アルバムからのビデオについて伺いたいと思います。「Heart of a Dog」をリリースした後、「Doing It to Death」、そして「Siberian Nights」を立て続けにリリースしましたが、どれも素晴らしい作品ですね。
Doing It to Death」に関しては、なにかお祝いムードのあるものを作りたいというアイデアがあったの。闇と光が入り混じった世界観をね。撮影をした墓地はロサンゼルスにあって、晴れた空のもとで皆がダンスをしているわけ。相反する要素を合わせることで、そこに奥深さが生まれるようにしてるの。監督には才能溢れる若手のウェンディー・モーガン(Wendy Morgan)を起用した。「Heart of a Dog」も同じ週に撮影したのよ。私が大好きな監督、ソフィー・ミュラー(Sophie Muller)と。彼女の撮影アプローチってすごいの。その日、何をしたいか私に訊くわけ。こう答えたわ。「そうね、トランポリンでバク転がしたい。サイコロがあるといいわね。それにDodgeの車Challengerとジャケット--ペイントされてるとベターだわ--犬も使いたい」って。

そしてミュラーがそれら全てを映像に収めてストーリーを作り出したわけですね。
そう、脈略もなく思いついたものを口にしただけだった。それに、前にミュラーと作った「You Are A Fever」のロサンゼルス・バージョンを作りたいという思いがあったの。コンセプトはそれだけ。とんでもなくゆるいコンセプトだったの。数日間、色んなものを撮ってまわって--要は編集なのよね!可能なかぎりたくさんヤシの木とサボテンを入れたかった。カリフォルニア感を出してくれる要素をね。このところずっとカリフォルニアに暮らして、レコーディングもミキシングもマスタリングもすべてカリフォルニアで行ったわ。もう、血にカリフォルニアが流れてるのね。"カリフォルニアの感覚"を映像に捉えたいと思ったの。

当時の生活をスナップ写真に収めるような感覚でしょうか?
そう。見ると幸せな気分になれるし、たまにはハッピーに感じられることを思い切りやったっていいじゃない?ムードがあって格好いいものを作ろうと躍起になるひとが多すぎるのよ。でもね、私にだって「2日間ぐらい笑いっぱなしでいたい」って思うときがある。あの撮影は、まさに2日間笑っぱなしだったわ。

それはビデオを見ていても伝わってきます。「Siberian Nights」についてはどうでしょう?
Siberian Nights」は全く違う背景があって、ジェイミーと私はほとんど制作過程に関わってないの。レーベルがビデオを作りたいっていうから作った感じよ。ジェイミーは、ハスキー犬が雪の中を走る映像が欲しいって言ったけど、もう雪なんてなかった。だから塩を敷き詰めて、そこからは監督の好きなように映像を作ってもらったの。かなりの低予算だったんだけど、映像作家の魔法ってやつよね。出来上がった映像には驚いたし、とても気に入ってるわ。

15年におよぶザ・キルズの活動ですが、当初はあなた方ふたりと、あとはドラムマシーンだけで曲を制作していたそうですね。曲作りやレコーディング、パフォーマンスは、当時からどのように変化しましたか?
変化したのは楽器の使い方かしら。レコーディングするたびに、新しい領域へ進もうとしてきたわ。新しさを求めて、未知のものを試そうという気になれば、その分学ばなきゃならないことも増えるんだけどね。1stアルバム「Keep on Your Mean Side」を作ったときのことを覚えてるけど、レコーディングに10日しかかからなかったの。8曲あって、ドラムマシーンと私の歌、それとジェイミーのギターだけ録ればよかったからね。シンプルの極みよ。続く2作目の『No Wow』は、前作とアプローチこそ似ていたけど、エフェクトを削ぎ落としてよりシンプルにしたのよね。

あなたの音楽には美しいシンプルさがありながらも、そこに何か考え抜かれたものが感じられます。
Midnight Boom』を作っている時は、イメージを打ち破るようなことをやりたいと思ってたの。ジェイミーはドラムのプログラミングをやり始めていて、ソングライティングのプロセスはそれまでよりもずっと長くなった。だけど、プロセスの始め方は変わらないの。ギターとボーカル、歌詞、メロディーが揃って、そこから色んな方向に作品を捻じ曲げて試してみる。すると、リズムや拍子が変わって、断片的なアイデアが落ち着くところに落ち着いて、ひとつの曲として形をなしてくるの。実験的なことをたくさんするのよ。曲と歌詞はジェイミーと私がほとんど書いているわ。どの曲も、半々ずつの分担で書いているし、とてもデモクラティックなプロセスよね。これからもずっと変わらないと思う。

@thekills

The Kills『Ash & Ice』
レーベル: Domino / Hostess
2,490円[税抜]
2016年6月15日(水)より発売中

Credits


Text Max Oldfield
Photography Kenneth Cappello
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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