「学生風がミラノを席巻」:Marni、Philipp Plein、Versace、Neil Barrett

2018年春夏メンズ・ミラノ・ファッション・ウィーク、Marniがプレッピーな世界観を打ち出す一方で、Neil Barrettはミニマリズム回帰を打ち出した。

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jul 6 2017, 10:37am

marni spring/summer 18

現在のところ、メンズ・コレクションのムードは世界情勢と同様の混乱を呈している。デザイナーたちが内省を見せているのだ。ミラノでは、Gucci、Jil Sander、Bottega Venetaといったビッグネームが、メンズ・ファッション・ウィークのスケジュールでのコレクション発表をやめ、ウィメンズとの合同発表路線を打ち出している。それらのブランドなきミラノのメンズ・ファッション・ウィークは、イギリスの政治的状況に似ている。瀕死の状態といったところだ。現実世界でわたしたちが慣れてきてしまっている混乱——その表れか、土曜のミラノでは、デザイナーたちがこぞって男子学生のイメージを取り上げていた。Marniでは、柄もののシャツにアーガイルのタイトなベストを合わせ、中途半端なサイズにテーラリングされたアイビーリーグ風の服を重ね合わせた少年の、ぎこちない姿が描かれていた。そしてそれがなんとも素晴らしかった。

Marni spring/summer 18

これまでにコレクション自体を圧倒してMarni独自の世界観を作り出してきた、あのグラフィック感——今年、創業者デザイナーのコンスエロ・カスティリオーニの後継デザイナーに就任したフランチェスコ・リッソは、ブランドをそこから見事に脱却させていた。ベストにはほつれが見られ、糸が垂れ下がっている。ネクタイは意図的にいびつな結び目を作り、フードは外れ、ハットは肩から落ちそうになっていた。シャツはボタンをなくしてしまったかのように前方が開かれていた。名門学校に通う生徒たちの服が、ことごとく着崩されていたのだ——そこには、乱れた少年の世界が描かれていた。会場にはナット・キング・コールが、「とても変わっていて魅力的な男の子」が「愛を与えれば、それが返ってくる」という教訓を学ぶさまを歌う「Nature Boy」がリミックスされて流されていた。そこに描かれているのは、少年が子どもから大人へ成長する過程で、人生の荒波にのまれてもみくちゃにされた男の子の姿だった。その感覚は、今、わたしたち誰もが共感できるものだろう。リッソが打ちだしたメッセージは、洋服という概念を超えて観客に伝わった。

Marni spring/summer 18

プレッピー(アメリカの名門私立高校に通うお坊っちゃまのような服装)のスタイルには、50sの世界観がついてまわる。第二次世界大戦を終えた後の1950年代という時代のイメージは、"資本主義社会に育つ10代の夢の世界"が代表的なものとして定着している。映画『グリース』はその最たるものだ。Philipp Pleinは、その世界観を自身の2018年春夏コレクションに描いた。『グリース』のミュージカルを再現したショーでは、レザーとジーンズといったビート世代的装いがランウェイを占拠し、美しいスポーツカーの数々とともに、モデルたちがタバコを指に闊歩した。デザイナーのフィリップ・プレインが打ち出そうとしていたのは、「ベーシック回帰」だったにちがいない。スポーツカーではなく、キャデラックのクラシックカーを用いたほうが、彼の意図した世界観はより明確に打ち出すことができただろう。わたしたちが彼のめくるめくショー演出を見慣れてしまっているからかもしれないが、今回の50sというモチーフと、ミュージカル形式の演出の一部として楽しげなフィリップ自身がトラックに乗って出てくるというその陽気なムードにあって、フィリップはこれまで自身が作り出してきた確固たる世界観に風穴を開けた感があった。それは、裸一貫になって、魂をさらけ出していたMarniの世界観とは異質だったが、フィリップが意図した世界観はより地に足ついたものだった。そして、それは評価されるべきものだった。

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Versaceでは、ドナテッラ・ヴェルサーチが「地に足ついた」という世界観をさらなる高みへと押し上げていた。ショーはミラノのジェズー通りにあるVersace本部の庭で行なわれ、観客はカフェテーブルからコレクションを堪能した。プレッピーな雰囲気を演出するピンストライプ、タイ、ベストは、いずれも2018年春夏シーズン最大のテーマのひとつである「男子学生」をVersace調世界観に落とし込んでいた。そして、それはベビーブルーやピンクの服とキラキラと輝く金色のトラックスーツの登場で昇華された。トラックスーツは、今季のミラノで多く見られた。Marcelo Burlon County of Milanでは、デザイナーのマルセロ・バーロンが、エイブラ(Abra)のパフォーマンスをバックに、血気盛んな男の姿を、引き続き贅を極めたストリートウェアとスポーツウェアに描いていた。

Versace spring/summer 18

「めまぐるしく色んなことが起こっていて、なにもかもがトゥーマッチ(過剰)な世の中——色んなものが過剰になっているけど、そこにはいい側面もある。僕は過剰が好きだから——でも、だからこそ『今、ミニマリズムを』と感じた。シンプルな世界を好むひとたちのためにミニマルな服を作ろう、とね」と、ニール・バレットは、自身の2018年春夏コレクションのショーの後に語った。ミニマリズムを極めた今回のコレクションだったが、セレシオ通りにある新しいNei Barrett本部で披露された。その内側もまた、ミニマリズムを極めていた。「90年代中頃の世界観に回帰するべきときだと思う。過剰なものをすべて削ぎ落として、服にピュアの極みを見出すべきときがね。ファッションで初のミニマリズムが生み出されたあの時代を、僕は実体験した。あの時代を現代の視点から再解釈し、僕があの時代に作ったものを改めて検証して、21世紀にふさわしい服を作りたいと思った。あの時代にあった時代精神が、今の世の中にはふさわしいと思う」

Neil Barrett spring/summer 18

少なくとも過去6シーズンにわたり装飾美を打ち出してきたミラノだが、今季コレクションで、Neil Barrettはシンプルでピュアな世界観を打ち出し、世界に「落ち着け」と静かに訴えていた。無駄を削ぎ落とし、グレーや白、黒の生地に少しオーバーサイズなテーラリングを施した服の数々は、バレットにとって真っさらなキャンバスとなり、そこにはシルバーのストライプや煙のようなモチーフ、赤いパイピングなどミニマルな装飾がほどこされていた。そこに描かれた世界観は現代社会に漂う禁欲的な風潮に、すべての過剰さを律するよう呼びかけているようだった。そして、数シーズンにわたりファッション界を席巻してきた過剰な贅の世界観が過去のものとなった感のある今、バレットのメッセージは実に明確に、しかし静かに心に響いた。「今こそ純粋さを声高に訴えるときだと、心から信じてやまないんだ。デザインの過程で、もっと削ぎ落としたいと繰り返し感じた」と、バレットは振り返った。

Neil Barrett spring/summer 18

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Credits


Text Anders Christian Madsen
Photography Mitchell Sams
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.