Photography Daria Kobayashi Ritch 

ライダー・マクラフリン interview:LAのスケーターがジョナ・ヒルの初監督映画『Mid90s』に出演するまで

LAの若手スケート集団〈イリーガル・シヴィライゼーション(Illegal Civilization)〉のメンバーとして、Instagramにスケート動画を公開していたスケーターは、いかにジョナ・ヒルの初監督作品『Mid90s』に出演することになったのか?

by Hannah Ongley; translated by Ai Nakayama
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12 June 2019, 10:08am

Photography Daria Kobayashi Ritch 

『Mid90s』の主人公は、サニー・ソリヤック演じる生意気な少年、スティーヴィー。彼がクールな年上スケーターたちと親しくなり、物語が展開していく。仲間のなかでも、多くを語らぬフォース・グレードを演じるのがライダー・マクラフリンだ。

フォース・グレードはカメラの向こう側に立つよりも、こちら側に立つほうがしっくりくるようだし、女の子の隣に座っているよりも、クオーターパイプで技を決めるほうがスムーズ、という内向的な映像作家の若者。有名になりたい一心のユーチューバーたちが君臨する現代には、なかなか見当たらないタイプだ。

しかし今回ライダーに電話インタビューを敢行し、実際はその役柄とは違い、言葉を豊かに紡ぐひとだということがわかった。『Mid90s』でアドリブで発したセリフは実にユニークで、撮影スタッフふたりが〈Strong Baby〉のタトゥーを彫ったくらいだ。詳細は後述。

ライダーは映画製作の夢を抱いているわけではなく、演じることに興味があるという。ライダーは実に優れたアーティストだ(前述のタトゥーも彼が描いた)。ライダーが所属するスケートクルー、Illegal Civilizationの活動を追っていれば、彼らのイベントのフライヤーに、ライダーが手がけたトリップ感溢れるマンガ風キャラクターがあしらわれているのを目にしたことがあるはずだ(ちなみに、『Mid90s』の出演者の大半がIllegal Civilizationのメンバー。Illegal Civilizationの創始者マイキー・アルフレッドは、本作の共同プロデューサーを務めている)。

『Mid90s』の公開から日も浅いうちに敢行された、i-D独占インタビュー。変わったペット、兄弟の関係、みんながスケートに夢中になる理由について、ライダーが語る。

Ryder McLaughlin

——この数週間はどうでした?

撮影からもう1年経ったなんて不思議な気分。この1年は何もなく過ぎたのに、今やいろんなところで映画が公開されてる。ヤバいね。

——あなたがスケートを始めたのは?

確か、7歳くらいだったかな。兄貴がやってたから始めたって感じ(笑)。当時は、兄貴のやることなすことなんでも真似してた。ファッションもそう。ピアスホールの拡張をしたこともあった。今はちょっと後悔してるけど。マイキーと出会ったのは親友のヘンリーがきっかけ。ノーホーで育ったヘンリーは、昔からマイキーとスケート仲間だった。ある夜、僕らがフェアファックス地区で滑ってたら、マイキーとタイラー(・ザ・クリエイター)がニューススタンドのところに立ってたんだ。マイキーがヘンリーを大声で呼んで、それで僕もふたりと顔を合わせた。それ以来、いっしょに滑ったり、つるんだりするようになった。

——ジョナにはスケートパークでスカウトされたんですか?

いや、マイキーが紹介してくれた。マイキーとジョナは映画『ウォー・ドッグス』のプレミアで知り合ったらしい。みんなが入ってるグループチャットがあって、そこでマイキーが「ジョナが映画をつくるらしい」って連絡してきて。キャスティングの現場には、マイキーの知り合いが、冗談なく全員集まってたと思う。正確な人数はわからないけどたくさん来てた。ジョナが映画を製作するって聞いてから、僕もずっと参加したいと思ってた。

——本作であなたが演じる役柄は、とにかく寡黙です。ジョナはキャストの意見を脚本に取り入れたがってたそうですが、アドリブはありました?

ソファで、女の子に自分が構想中の映画について語るシーンはアドリブだった。もともと僕はその日の撮影が全部終わってて、ぶらぶら見学してたんだけど、ジョナに「おいで。即興でやってみよう」って提案されて。ジョナには「自分の映画について説明して」って指示されただけ。あとは全部脚本どおりだったんだけど、「きっと面白くなるから、こういってみて」ってジョナが提案することもあった。彼は実際にこういう子ども時代を過ごしてきたから、何もかもがめちゃくちゃリアルだった。

——あなたが自分の映画をアピールするシーンは、本作のなかでも一二を争うくらい笑えました。『Strong Baby』でしたっけ?

そう(笑)。ジョナと撮影監督のクリストファー・ブローヴェルトは腕にそのタトゥー入れたくらいだから。マジ最高。

——あなたは入れなかったんですか?

そもそもタトゥーは入れてないんだ。自分で絵を描いたけど、「自分にこんなタトゥー入れるの変かな?」って思って。良い思い出だよ。

——実際にヤモリを飼ってるんですか?

何日かカメレオンを飼ってた。ヘビも。子どものときじゃなくて、18歳とかそれくらいのときの話。

Ryder McLaughlin

——自分で映画をつくろうとは思わない?

監督や撮影監督になりたいか、っていったらよくわからない。演じるのが楽しいから、もし自分が映画界に何らかの貢献ができるとしたら、俳優としてじゃないかな。僕はいろんなキャラクターを演じたい。家族が観ても、僕のことを考えないくらいの演技をみせられるようになればと思う。

——サニーはi-Dのインタビューで、他のスケートフィルムは「スケートの本当の良さを伝えられてない」から好きじゃなかった、と語っていました。あなたはどうですか?

スケートを真に描いた映画なんて1本もないと思う。でも『Mid90s』に関しては、マイキーが積極的に関与するってことだったし、実際にジョナに会って納得した。『Mid90s』はキッズたちがスケートに打ち込んで、コンテストに出てすべてが好転する、みたいなスケートフィルムじゃない。この映画は、成長期にある少年の話。スケートは、良いことも悪いこともたくさんある現実の世界へ主人公が足を踏み入れるきっかけとなるひとつの要素。彼が仲間たちとバカなことするための言い訳なんだ。

——映画『KIDS/キッズ』は好きじゃない?

何度か観た。好きだよ。初めて観たときは「今の何だったんだ?」って感じだった。僕の理解の範疇を超えてた。だからもう一回観た。良い映画だと思う。スケートフィルムに近いけど、でも本当の意味でのスケートフィルムではないんじゃないかな。劇中でスケートは登場するけど、『ストリート・ドリームス』や『クール・ボーダーズ』とは違う。

——『スケート・キッチン』『Minding the Gap』など近年のいわゆる〈スケートフィルム〉もまさに青春モノですが、スケートカルチャーと関わってこなかったオーディエンスにも広く訴求しています。今の時代、スケートがここまで多くの作品のテーマとなっている理由について、何か思うところはありますか?

『スケート・キッチン』の予告編を観てすぐに、最高じゃん、って思った。この作品については、公開されるまで全然知らなかった。今のスケートは、90年代とは全然違う。ほぼメインストリーム。テレビでも観るし、エックスゲームズ(X Games)もあるし、一般人がスケート用シューズを買ったり、SupremeやPalaceを買ったりしてる。スポットライトを浴びつつあると思う。面白いカルチャーだし。

——今回、自分が育ってきたカルチャーを目の当たりにして、その見方は変わりました?

とにかく成長っていうのが大事だよね。中学、高校ではみんなこんな感じだった。もちろんいずれ落ち着くんだけど、僕がつるんでた友だちグループはあまり変わらなかった。でも、地元の小さな町を出たときに、今まで自分は、言葉の裏にある意味にも気づかない、何も知らないガキだったことに気づいた。広い世界に足を踏み入れたとき、それを学んだんだ。『Mid90s』は10代のバカ騒ぎを美化したりしない。酒を飲んだり、ドラッグに手を出したりってことを、クールなものとして示さない。僕自身酒は飲まないし、ドラッグもやらない。この作品は、キッズたちのありのままの姿を提示しているだけ。みんなこうやってバカをやるし、成長していくなかで彼らが学ぶ教訓もあるってこと。

——YouTubeやInstagramでスケートクルーをフォローするようになる前は、どうやってスケーターの情報を追ってました?

僕が子どもの頃は地元にスケートパークがなかったから、〈Skatelab〉っていう屋内スケートパークまで行かなきゃいけなかったんだけど、そこにたまにプロスケーターも来てた。あとはデモに行ったりもしてた。自分がかっこいいと思うひとに会いに行って、実際に話したりするとめちゃくちゃいいひとだったりして、だからこそもっと頑張ろって思えたんだ。僕はど田舎に住んでたからインターネットの環境が最悪で、実際に観に行くしかなかったんだけど、そのおかげでスケートへのモチベーションが上がった。

——先ほどお兄さんの話が出ましたが、『Mid90s』のスティーヴィーと兄との関係性には共感します?

100%共感する。年上のきょうだいって大きいよ。僕は兄貴が聴いてた音楽を好きになったし、小さいときには兄貴からいろんなことを教わった。めちゃくちゃ仲が良かったわけじゃないけど、でも兄弟としての親愛の情があったとは思う。もちろん弟って兄貴にいじめられる運命だけど、スティーヴィーの兄ほど酷くはなかったし。

——本作で心に残っているのは、ホームレスの男性が、昔の仕事について語ったセリフです。「芸術的な精神は、どんな物事に取り組むにも必要だ」。どう思いますか?

俺は自分が何をするにしても、自分のアートのいち部だと思ってる。「変なことするな」「友だちと遊んでればいいじゃん」「写真撮ったり作品づくりするのもやめろ」っていうひともいるけど、やっぱり何かはけ口がないと。はけ口もなく部屋にこもってたら、絶対頭おかしくなるよ。


Credits

Photography Daria Kobayashi Rich
Styling Ryder McLaughlin and Jake Sammis

This article originally appeared on i-D US.