小宇宙を見つめて:OAMC ルーク・メイヤーinterview

OAMCのデザイナー、ルーク・メイヤーが10月初旬に来日。1月に発表するコレクションのリサーチの合間に、2019年春夏コレクションのことや、彼自身のことについてインタビュー。

by Kaeko Shabana; photos by Houmi Sakata
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21 December 2018, 3:00pm

2014年にルーク・メイヤーを中心に設立されたパリブランド、OAMC。元Supremeのヘッドデザイナーで、現在はJil Sanderのクリエイティブディレクターを妻のルーシー・メイヤーと務めるルークが、10月初旬に来日した。今回、6月にパリのメンズコレクションで発表した2019年春夏コレクションのこと、ファブリックに対するパッションを語ってくれた。

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Luke Meier at HOSHINOYA Tokyo

──6月にOAMCの2019年春夏コレクション、Jil Sanderメンズ&ウィメンズの2019年春夏コレクションを発表し、そして今回10月に来日されていますが、この後少し休暇が取れるんですか?
今はちょうどシーズンとシーズンのあいだといった感じ。2020年春夏コレクションのアイディアを固めているところと、1月に発表する2018-19年秋冬コレクションの準備が最終段階で、両方のコレクションを同時進行しているんだ。明後日、パリに戻って翌日からまた生地を探す。明日も東京で生地を見に行くから、いつも何かしら仕事してるよ。

──生地にすごくこだわりがあるということですが、OAMCの2019年春夏コレクションで使用した生地について教えてください。今回の大きなテーマは“Future”でしたね。
いつもコレクションを考えるとき、生地からスタートするわけではないんだけど、服作りにおいてファブリックはとても大切な要素。実際、日本の生地もよく使用しているよ。日本の天然素材に対するとらえ方が、ヨーロッパとは違うと思う。ウールとかコットンとか。ここ日本では、ナチュラルなものがモダンに解釈されている。モダンで機能的、でも天然素材。このコンビネーションが好きだから、いつも日本に生地を探しに来る。そして2018年春夏コレクションは、ワックスでファブリックを仕上げるということに着目したんだ。ワックスを使用した洋服は、人の動作を変える。ナチュラルなのに、機械的になるというか。LOOK2のグリーンのジャケットとパンツ、LOOK31のオーバーオールは、コットンの上からワックスをコーティングした素材。このふたつの生地が特別なのは、テクスチャー(面模様)を均一に伸ばしたかったらスチームをあてれるということ。すごく面白いよね。

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OAMC 2019 SS Collection Look2

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OAMC 2019 SS Collection Look31

──OAMCのブランド名は、コレクションごとに意味が変わりますが、今回のコレクションは何の略ですか? 2018年秋冬は「Once A Mother‘s Child」でした。
「Only A Microcosm」。ものすごく小さいものという意味。“Future”を考えたときに、これまで人類は地球とうまく付き合ってこなかったから、この惑星は困難な状況にある。1969年に実施されたアポロ計画とか、60年代に起こった“Future”オブセッションのように、人びとは再び未来や宇宙のことを考え始めている。僕は未来を考えたとき、スケールのことが頭に浮かんだ。コレクションで発表したTシャツのバックプリントに、NASAの無人宇宙探知機、ボイジャー1号のスチール写真を使用した。それは太陽系を撮影した衛星写真で、地球がただの小さな点に見える。その点の地球は本当に小さくて、僕たち人間はもっとちっぽけな存在だと感じたんだ。

──2019年春夏で、7シーズン目のコレクションでした。2017年春夏から2018年春夏と、4シーズン連続で女性モデルがランウェイに登場していましたが、今回はメンズモデルのみでした。意図的な何かがあったのでしょうか?
ただ、予想通りになりたくなかったんだ。妻のルーシーや、OAMCのチームのクレアがOAMCのアイテムを着ているんだけど、すごくよく似合っている。ブランド自体“メンズウェア”のために作っているんじゃない。OAMCは誰でも着られる。それに、メンズとウィメンズを一緒に発表するのって、もはや“普通”すぎるというか。トレンドっぽくなっているよね? 僕はトレンドに興味がないし、予測できることも好きじゃないから、今回は女性モデルを起用しなかった。ウィメンズコレクションを始めることや、今のコレクションでサイズ展開を広げようっていう話は何度も浮上しているから、今後ウィメンズコレクションをスタートする可能性はあるかも。

──トレンドとか、予想通りのことが好きじゃないということですが、ブランドのコラボレーションについてどうお考えですか? コラボレーションももはや多用されすぎて、“新しさ”を感じることが難しくなってきたと思います。
コラボレーションはある意味クールだと思うよ。イケてるやつだったら。 Supremeのとき初めてコラボレーションしたのは、あるプロダクトを作るのに本物の知識をもった専門家を見つけたかったから。今のコラボも、そうあるべきだと思うけど。マーケティング目的や話題性のためだけじゃなく、よりよいプロダクトを作るのが目的のコラボ。OAMCでも、これまでいろんな話をもらってきたし、将来コラボレーションをすることもあるだろうけど、「これだ!」っていうものでないと。

──夢のコラボレーションを実現できるなら、相手は誰ですか?
川久保玲。彼女は本当にクール。

──ファッション業界に入る前、大学ではビジネスを専攻されていました。卒業後、ウォールストリートでの就職活動をやめ、Supremeの創設者ジェームス・ジェビアに出会った。洋服のデザインを始めたとき、ビジネスではなく「ファッションこそ自分がやりたかったこと」という感覚があったのでしょうか?
ビジネスを勉強していたのは、もっと実践的な理由から。カナダのバンクーバーという小さな街で育ったけど、そこのコミュニティがとてもクールだったんだ。みんないい人で、いい音楽を知っていて、スケートボードと、スケートボード・カルチャーの影響力が大きかった。当時、別に何がやりたいって明確じゃなくて、どうやって生計を立てるのかも検討がついていなかった。だから高校卒業後、実践的なビジネスを学ぶことにしたんだ。でも初めての面接で「やりたいことはこれじゃない」って思い、就活をやめて、NYのダウンタウンのバーで働いたり、スケートボードしたりした。そしてジェームスに出会って、ファッションデザインを始めたけど……今でもデザイナーが天職かどうかは正直わからない。当時はカルチャーにすごく興味があって、今もまだカルチャーが好き。昔はインターネットとかそこまでなかったから、もっとオーガニックだった。自分たちがクールだと思うものを作ろうって感じで。何かを作れば作るほど、自分が作るものに対して興味を深めたくなる。僕は典型的なおとめ座だから、完璧主義者なんだ。だからファブリックと技術を追求したくて、パリに足を運ぶようになった。今はミラノとパリをベースにしているけど、いいプロダクトを作るためにいつか日本にも住んでみたいと思っている。

──近年、あえてファッションショーをやらないブランドも増えてきました。OAMCをパリで始めたときから、ショーはアジェンダのひとつだったんですか?
ショーは最初からやりたかったわけじゃない。ブランド設立当初は、僕たちがやりたいと思ったことをやっていた。僕の観点でクオリティの高いプロダクトを作ることが重要だったね。パリに移ったあと、自分の洋服を買いに出かけた。いろんなお店をまわって、たくさんのものを見たけど、欲しいと思うものや、面白いというものが何ひとつなかったんだ。でも、僕のなかには“ひかり輝くファッションアイディア”は漠然とあった。本当によいプロダクトと自分の観点を結びつけるために、どうすればいいのかわからなかった。いろいろ模索して、ブランドが成長し始め、「じゃあ、ショーをやろう」って感じでランウェイショーをすることにした。ショーをやるのはとても楽しいよ。だけど、そのためだけにコレクションを発表しているんじゃない。ショーとかに無縁で、そこまでファッションに興味がない若い世代に、カッコイイと思われることもすごく大切。だから、代官山とかにいるようなクールな子が、OAMCのアイテムを着てくれているのを見かけると、とても嬉しい。

──OAMC を始めてから現在に至るまで、ブランドや自分の中で感じている変化が何かあれば教えてください。
僕たちは、今の自分たちの能力にとても満足している。なんでも実現可能っていうわけではないけど、やりたいことに注力すれば実現できるようなった。今のチームはとてもクールで、やる気があってイケてる若い子たちがクルーに加わった。OAMCは、いい会社。バイブスもいい。僕自身とても幸せだよ。

OAMC
www.oamc.com
IG: @oamc_official

Credits


Photograhy (portrait) Houmi Sakata
Interview & Text Kaeko Shabana
OAMC 2019 SS collection images Courtesy of OAMC
Special thanks HOSHINOYA Tokyo

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