Dresses in center: Arona Paris (made of móre, local grass-like fabric) 

豊かな島文化を色鮮やかに表現するタヒチ・ファッションウィーク

ポリネシアにルーツを持つデザイナーたちが手がける、伝統をモチーフにした美しいルックをご覧あれ。

by Alexander-Julian Gibbson; photos by Emmanuel Monsalve; translated by Nozomi Otaki
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31 July 2019, 7:27am

Dresses in center: Arona Paris (made of móre, local grass-like fabric) 

英国とフランスの影響を受ける前、ポリネシア人は何世代にもわたり、ダンスを通して伝統を受け継いできた。彼らのダンスは、動きと音楽で観る者を魅了するだけでなく、美しい衣装で物語を伝えていた。

タヒチアンダンスの衣装に使われる素材は、タヒチのひとびとと地球、土地とのつながりを表すため、衣装は非常に重要な役割を担っていた。これらの素材は、ポリネシアの民間伝承や文化の価値と遺産の象徴なのだ。南太平洋に浮かぶポリネシアを形成する5つの群島それぞれが、衣装の材料となる天然素材の産地だった。

島の花々や種を飾った花冠、イネのような植物でつくられたスカート〈モレ〉、ココナッツの殻にタヒチアンパールや真珠貝をあしらったヘッドアクセサリー。これらの伝統やポリネシアの芸術は、キリスト教国による植民地支配のために、実に130年以上ものあいだ禁じられていた。

現在、ポリネシアの文化は絶滅の危機に瀕しているが、島にルーツを持つひとびとは、自らの伝統を堂々と誇ることで、文化の復興に努めている。たとえば伝統的なタトゥーや、世界的に有名なポリネシアンダンスグループ。さらに最近では、タヒチ人デザイナーたちが、独特な素材を使った伝統的な衣装に新たな命を吹き込んでいる。

そんな彼らが手がけた、伝統文化を色濃く反映するモダンなアイテムが、タヒチ・ファッションウィークのランウェイを席巻した。

「他の国から遠く離れた島で、自然をすぐ身近に感じて生活していたからこそ、私たちは、自然から未知の素材を取り入れ、現代においても実用性のあるものをつくれたんです」とタヒチ生まれのスタイリスト/デザイナーのティアニ・リウは説明する。

目まぐるしいファッションウィークのなかで特に目を引かれたのは、パールと貝でつくられたコルセットやビスチェ、種や葉を使ったドレス、ココナッツの殻でつくられたさまざまなアクセサリー。タヒチ・ファッションウィーク開催中の熱帯の楽園に降り立った私は、タヒチのデザイナーたちに会い、彼女たちがいかに才能を発揮し、文化の保護に尽力しているかを取材した。この活気に満ちたファッション業界を突き動かしているのは、彼女たちの伝統への誇りと、それを誇れる自由への感謝。つまり、私たちの多くが当たり前のように享受しているものだ。

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Top: My Dear Tahiti (Made of “Pipito seeds”) Jewelry: Tropical Luxury

マニュアリ・トロア(Manuarii Teauroa)28歳/My Dear Tahiti デザイナー

「植民地時代には、タヒチアンダンスやその衣装は邪悪で淫らなものとして、多くのタヒチ文化とともに禁じられていました。特に文化の抑圧の標的になったのは女性だったので、私は自分のブランドを通して美しい文化を称え、唯一無二で夢のようなタヒチを表現しようと思ったんです」

「今、この美しい島で自由に楽しく暮らしている私たちは、恵まれていると思います。ここに来れば、ポリネシア文化の美しさ、ユニークさがわかるはず。この文化があったからこそ、タヒチ人は思いやりに満ちていて、幸せに暮らし、連帯感を深めることができる。文化は私のいちぶであると同時に、この島の土台であり、私が情熱を追求する原動力になっています」

「ポリネシア、そして世界中のひとびとに自分の夢を追いかけ、叶えてほしい。私の活動を通して、その方法を伝えられたらうれしいです。誰の人生にも生きがいがあります。この国全体が誇りに思ってくれるなら、それ以上の幸せはありません」

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Dress: My Dear Tahiti (made of Tahitian clams, with Tahitian black pearls across the belt line) Fans: Mama Fauura Creations (made of coconut husks, with Tahitian Clam handles)

「800個のマザーオブパールとタヒチアンパールでつくったこのドレスは、制作に3週間かかりました。トゥアモトゥ諸島とガンビエ諸島を象徴するアイテムです。太平洋のセイレーンをイメージしたんですが、モダンでエレガントに仕上げ、ポリネシア産のパールを引き立たせました」

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Top and Shorts: My Dear Tahiti (top made of Pupu Shells) Jewelry: Tropical Luxury

「〈ププ〉はオレンジ、白、黄色の小さな貝で、オーストラル諸島のライババエ島の砂のなかに生息しています。採るのも育てるのも難しく、伝統的なネックレスの材料にする前には、手作業で選り分け、洗わなければいけません」

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Dresses: Arona Paris (made of móre, local grass-like fabric)

カール・ワン(Karl Wan)29歳/Arona Paris デザイナー

「フランスに住んで2年になりますが、故郷があまりにも恋しくて、私の作品のなかでポリネシア文化が占める割合は、ますます大きくなりました。モレは、ポリネシアの服に欠かせない天然の繊維。丈夫でエレガントで、私がポリネシアのDNAを表現するのに役立っています。この素材は、私自身を表しているんです。ファッションに関しては、自分の母語で語るのがいちばんだと思います」

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ティアニ・リウ(Teani Liu)36歳/スタイリスト

「白人の宣教師たちは、タヒチのあらゆる生活様式を禁じました。タヒチアンダンスは性的すぎる、タヒチの服は肌を露出しすぎ、伝統的なタトゥーは神に背くものだ、と彼らは考えていたんです」

「他の国から遠く離れた島で、自然をすぐ身近に感じて生活していたからこそ、私たちは、自然から未知の素材を取り入れ、現代においても実用性のあるものをつくれたんです」

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マタニ・ケニュク(Matani Kainuku)45歳/Nonahere International Dance Group 主宰

「伝統的な衣服や衣装は、着るひとに〈マナ(聖なる力)〉を授けるためのもの。これらの服は、力、敬意、豊かな自然を想起させ、豪華な宴、歌、そして愛や道徳的な自由、誘惑を表す踊りにまつわる物語を表現しています」

「どの衣装も、何らかの概念や伝説、考えと結びついており、ダンスを通してそれを表現しなければいけません。そのなかで、モレは着るひとにマナを授けます。アーティストが自分の考えを表明しようとすれば、服はその媒体になる。アーティストが身体の動きや表情にフォーカスすれば、服はその動きや感情を強調してくれます」

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Dress: GaëlleF (features Polynesian floral laser print) Necklace: Mama Fauura Creations (made of red coral)

「赤は〈ウラ〉という鳥の羽の色。この羽は、最高位の首長〈アリイ〉しか身につけることができません。赤色は権力や高貴さというマナの象徴なんです」

「黄色は太陽の色であり、生命すなわち〈オラ〉の色。どの色も植物由来で、ポリネシアの植物の種を使って染色します。全ての色に、この島の物語、考えかた、概念、伝説が込められているんです」

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マニュ・デ・シェーンブルク(Manu de Schoenburg)/プロデューサー

「アラフラフのマラエは、ヨーロッパ人が島に来る前は島民の社会的、宗教的、政治的な施設でした。多くのタブーが定められている聖域で、中庭に入ることができたのは王族と聖職者だけでした。ポリネシアの神々への儀式や奉納が行われていた場所です」

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「このような聖域は、今でも伝統的なポリネシア文化の遺跡として敬われ、島民はタブーを恐れています。タトゥーや伝統的なダンスと同じで、〈生きる遺産〉といえるでしょう」

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Dress: Wardend 5 Necklace: Mama Fauura Creations (made of local Burgo Shell)

ママ・フユラ(Mama Fauura)77歳/ジュエリーデザイナー、起業家

「私の最初のインスピレーションになったのは、子ども時代を過ごしたタウティラ村、文化、そしてフランスで過ごした12年でした。今では、あらゆる出会いからインスピレーションを受けています。このネックレスに使ったのは、タヒチに多く生息するバーゴ貝の貝殻。それにマルケサス諸島のモチーフを彫り込みました。バーゴ貝はタヒチのサンゴ礁にたくさんいますが、誰も気にしていません。でも、この貝殻をきれいに洗うと、緑がかった美しい真珠層が現れます」

「ポリネシアのひとびとは、ココナッツの木を全て無駄なく使います。この木を独創的に使ったアイテムの例が、殻でつくったデコラティブなうちわ。また、タヒチアンダンサーのヘッドアクセサリーには、染色した貝や植物の種に映える、漂白したココナッツの葉があしらわれています」

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Outfit: Blossom (made entirely of plants and flowers)

クリスタル・ヴォンギュ(Krystal Vongue)32歳/Blossom デザイナー

「タヒチの文化において、草木や花を使うことは日常のいちぶであり、そして何よりも大切なのが、自然に敬意を表す行為でもあるということ。私たちの先祖は、食事、家、伝統的な薬、服、儀式の供え物など、あらゆるものに植物を使っていました」

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Full Outfit: Blossom (made entirely of plants and flowers)

「このアイテムは、リオのカーニバルから着想を得たもの。色鮮やかな花を使って、華やかなアイテムをつくりたかったんです。タヒチ原産のオプヒという花を使いました。この花の赤色は高貴さを表しています。ストレリチアという別のタヒチの花も使っています」

Credits


Creative Director/Stylist: Alexander-Julian Gibbson
Photographer: Emmanuel Monsalve
Assistants: Lina Palacios // Teani Liu
Production: Manu de Schoenburg of Filmin’ Tahiti
Make-up: Nadia Hilal
Hair: Mareva David
Models: Tia Wan + Hinaniui Campello BRAVE Models
Dancers: NONAHERE Dance Group

This article originally appeared on i-D US.

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