いま聴くべき新人ミュージシャン9選、今夏のサントラ決定版

アイルランドのポップスター、ルーシー・ブルーからロンドンの謎めいたラッパー、ジョン・グレイシア、ソウルのアーティストYonYonまで、夏にぴったりなニューフェイスを紹介。

by Frankie Dunn; translated by Nozomi Otaki
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19 July 2021, 4:42am

LR: Delilah Montagu by Heather Glazzard; Ydegirl by Josefine Seifert; Yaw Tog by Kwame Afrika; Aziya by Sequoia Ziff; Lucy Blue via SoundCloud; YonYon via Instagram; Joviale by Dhamirah Coombes; Ashwarya by Gadir Rajab; John Glacier by Udoma Janssen.

7月も半ばに差し掛かり、今年もまた夏がやってきた。つまり、プレイリストを一新する時期だ。新しい季節には新しい音楽が必要ということで、i-Dが今にぴったりな楽曲を厳選。ガーナのドリルミュージックからロンドンのセクシーなクィアポップ、自然から着想を得た北欧のバロック音楽、キラーボイスでTikTokで大人気のギタリストまで、今後の活躍が楽しみなニューフェイスを紹介する。

セレブのようにハプニングだらけのひと夏の恋を期待しているあなたも、空き部屋のある地元のAirbnbで過ごす慎重派のあなたも、散々使い回してきたプレイリストはいったん消去して、下の9人のアーティストを聴き、新たな夏のサウンドトラックを作成しよう。

ジョヴィエール(Joviale)

2021年5月にリリースされた、ノースロンドンのアーティスト、ジョヴィエールのデビューEP『Hurricane Belle』は、リスナーの心をかき乱すことを狙った作品だ。本作のタイトルの由来は、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート卒業生のピーター・シェナイが、ハリケーン・カトリーナの変化を鋳造したブラスベルで再現した作品〈Hurricane Bells〉。

 ジョヴィエールはプロデューサーのBullionとともに、反復するサウンドを通して、1曲ごとにさまざまな感情を呼び起こす。「Glass Peach」では人間の抱える脆さがにじみ出し、「ZEROCOOL」では自らと真摯に向き合うことを呼びかける。11月にはロンドンのピッチフォーク・ミュージック・フェスティバルに出演予定だ。ジョヴィエールの才能あふれる兄弟ブライアン(Brian)もぜひチェックして。ちなみに、ふたりは過去にGucciのモデルも務めている。Instagramはこちら

ルーシー・ブルー(Lucy Blue)

今の音楽シーンにはアイリッシュ・ポップが足りない、と思っているあなたへ。ついにダブリンから、19歳のシンガーソングライター/プロデューサー、ルーシー・ブルーが登場した。ハーモニー・コリンの世界観にインスパイアされ、プロデューサーにCongeeを迎えた、悩み多き青春を歌うEP『FISHBOWL』は、今月初めにリリースされるやいなや絶賛を浴びた。

 『ロスト・イン・トランスレーション』のファンなら、きっと1曲目の「Snow In Tokyo」に夢中になるだろう。彼女が大好きなソフィア・コッポラ作品を観たときと同じ気分になれる曲を目指したというが、まさに大成功だ。Instagramはこちら

ヨー・トッグ(Yaw Tog)

19歳のガーナ人ラッパー、ヨー・トッグは今年4月、2020年のヒットナンバー「Sore」のリミックスバージョンにクウェシ・アーサーとストームジーを迎えた。ストームジーは、今年1月にガーナで開催された音楽フェス〈UPP Fest〉でこの曲に魅了され、自らコラボレーションの契約を結んだという。ガーナのアサカー(asakaa:ヨー・トッグの故郷クマシで有名なドリル・ミュージックをベースにした人気の音楽ジャンル)シーンを席巻している彼は、その後も「Africa」「Y33gye」などのパワフルな楽曲を立て続けに発表している。EPのリリースも控えていて、今注目のアーティストひとりだ。Instagramはこちら

アジーヤ(Aziya)

友だちと過ごすよりもTikTokを見る時間が増えている今日この頃、この21歳のアジーヤのことはすでに知っているひとも多いだろう。SYSTEM OF A DOWN「Chop Suey」からフィービー・ブリジャーズ「Kyoto」まで、さまざまな楽曲のカバーで多くのフォロワーを獲得したアジーヤ。自らの歌声とエレキギターだけで、この1年、あらゆる人気曲に彼女なりのひねりを加えてきた。

2021年、マルチプレーヤーである彼女は新たな挑戦として、自らの楽曲もリリースし始めた。なかでも、キラーボイスと力強いベースラインやリフを存分に活かしたニューシングル「Blood」は、2000年代のインディロック・アンセム的な懐かしさを感じる1曲だ。7月2日には PlatoonからデビューEP『We Speak of Tides』をリリース。ぜひライブで聴きたい作品だ。Instagramはこちら

ジョン・グレイシア(John Glacier)

ハックニー生まれのラッパー、ジョン・グレイシアは、まだ楽曲数が少ないにもかかわらず熱狂的なファンを獲得している気鋭のアーティストのひとり。コアなファンたちはこの3年間、彼女がSoundcloudで公開する多様な音楽を心待ちにしてきた。同じくロンドン出身のリアム(LYAM)の「Origami」にシャイガール(Shygirl)とともにゲスト参加し、世間の注目を浴びた彼女。その後、ディーン・ブラントやラグズ・オリジナルなどともコラボを果たし、確固たる地位を築く。

しかし、彼女のいちばんの名曲は、ジョンの初のオフィシャルシングルで、ヴィーガン(Vegyn)が手がけたミニマルなメロディとエフェクトのかかったヴォーカルが特徴的なローファイナンバー「If Anything」だろう。ふたりはジョンのデビューアルバム「SHILOH: Lost For Words」でもタッグを組んでいる。強烈なインパクトを与えること間違いなしの本作は、ヴィーガン主宰のレーベル〈PLZ Make It Ruins〉から7月30日リリース予定。ジョンのInstagramはこちら

YonYon

ソウルで生まれ、日本を拠点に活動するDJ/プロデューサー/アーティスト、YonYon。私たちが彼女を知ったのは、YonYonが参加したイェジの2020年のミックステープ「WHAT WE DREW 우리가 그려왔」がきっかけだった。それ以降、彼女は「The Light」「The Water」など、コンスタントに楽曲を発表してきた。なかでも、私たちのお気に入りは「Bridge」。YouTubeの人気チャンネル〈lofi hip hop radio - beats to relax/study to〉を1曲に凝縮したようなシングルだ。YonYonのInstagramはこちら

デリラ・モンタギュー(Delilah Montagu)

2021年6月、ロンドン生まれの23歳のミュージシャンで大の猫好きのデリラは、トレードマークだったメランコリックなサウンドを捨て去り、遊び心たっぷりな曲調へとシフトした。セイント・ヴィンセント的なエネルギーを感じさせる、ASMR感たっぷりのシングル「Coming For Ya」は、デリラがセクシャルフルイディティ(※性的流動性)について新たな確信を得たことを示す1曲だ。

 「この流動性は、自分を自由にしてくれるということに気づいた」と彼女はリリース時に語った。「(セクシャルフルイディティは)混乱しているという意味ではないし、そもそもレッテルなんて必要ない」

 その結果、天才ギタリストのトワ・バードのリフ、パンデミック中に誕生した実在のカップルたちが登場するMVとともに、とてつもなくパワフルでセクシーな1曲が生まれた。7月23日にリリースされるEP『BABY』も、今年の夏を美しく彩ってくれるだろう。Instagramはこちら

 

イデガール(Ydegirl)

1897年5月12日、オランダのイデ村近郊の泥炭湿原で、紀元前53〜紀元128年頃に亡くなったとみられる極めて保存状態の良い若い女性の遺体が発見され、〈イデガール〉として有名になった。彼女こそが、「過去と現在の女性たちにインスパイアされた記憶に残るチェンバーポップ」を作るデンマーク人シンガーソングライター、アンドレア・ノーベルのアーティスト名の由来だ。

今夏、コペンハーゲンのレーベルEschoから、誰も聴いたことのないデビューアルバムをリリース予定のイデガール。北欧のバロック音楽とR&Bを融合したこのセルフタイトル作は、ZERO 7やティルザ(Tirzah)にさりげないオマージュを捧げ、さらにバードコア(※ポップスのヒット曲を中世ヨーロッパ風にリメイクすること)の要素も取り入れながら、リスナーを自然の奥深くへと誘う。彼女の Instagramのプロフィール欄には、「実質的には死んでいるけれど何かを終えるためにここにいる」と書かれている。いったい彼女が何を成し遂げるのか、これからの活躍に注目したい。Instagramはこちら

アシュワリヤ(Ashwarya)

音楽には、その後の展開が読めるものもあれば、わずか数分のうちに目まぐるしく変化してあっと驚かされるものもある。インド生まれで現在オーストラリアを拠点に活動するポップスター、アシュワリヤの「To The Night」は後者だ。ヴィック・メンサをゲストに迎えたこのシングルは、「自分を躊躇させるペルソナや外的な障壁に打ち勝つ」ことをテーマにしたカオティックでキャッチーな1曲で、今後リリース予定のデビューEP『Nocturnal Hours』に収録される。彼女は確固たる自信を胸に、メロディに合わせてヒンディー語と英語を自在に行き来する楽曲を発表してきた。夏にはオーストラリアで全国ツアーを開催予定。Instagramはこちら

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