「好きじゃないことは続けられない」移動式の古着屋Blanche Marketと考える、包括的で楽しいサステナビリティ

おしゃれとサステナビリティは両立できる。コルクを用いたナイキの新作シューズ「プラント コルク パック」発売を記念して、店舗を持たずポップアップ式で全国各所を巡るヴィンテージショップ「ブロンシュマーケット」のオーナー優里とディレクターのミシェルにきいた、環境活動を楽しく続けるための秘訣。

by Mami Hidaka; photos by Kyohei Hattori
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02 June 2021, 1:25am

Yuri(水谷優里)とMichelle(ミシェル)による移動式ヴィンテージショップ「Blanche Market(ブロンシュマーケット)」。実店舗を持たず、全国各地でポップアップストアを開いてまわるかたわら、Instagramでは日々古着をミックスしたスタイリングやライフスタイルを発信している。フォロワーは現在1.5万人。若い世代を中心に支持を集める、新世代の古着屋だ。

主催のイベントでは、カスタマー一人ひとりの個性を引き出すスタイリングの提案やファンミーティングを行なうなど、オフラインでの関わり合いにも力を注いでいる。在庫過多と環境への負荷を抑えたいというこだわりから、自分たちの目で確かめた古着だけを厳選して買い付けているのもBlanche Marketの特徴だ。

環境保護へのリサーチを深めながらオリジナルのエコバッグを制作するなど、エコとファッションをあざやかにつないでみせるYuriとMichelle。お店のInstagramにはフォロワーから日々、社会問題に関するさまざまな情報や見解が届くという。

ナイキはかねてよりサステナビリティの向上に取り組んでおり、2019年からはさらに製造過程での二酸化炭素排出量、廃棄物排出ゼロを目指す取り組み「Move To Zero」に力を入れてきた。工場や消費者の廃棄物を再利用したプロダクトを作り、廃棄物を減らすための循環型デザインを積極的に採用している。

今回はクラシックなスタイルを環境への負荷を抑えて新しく生み出されたナイキのサステナブルシューズ「プラント コルク パック」のリリースにあわせて、二人に古着をおり混ぜたセリフスタイリングを組んでもらい、ファッションと持続可能性(サステナビリティ)についてそれぞれの視点から語ってもらった。

ファッションとサステナブルを両立するにはどんなことが必要なのだろう。環境問題について調べる、友達と情報を共有する、日々のスタイリングに環境負荷の少ないアイテムを取り入れてみるーー今日からできることはたくさんありそうだ。

YuriとMichelleが理想とする“おしゃれで気軽なエコ”とは? 普段から心がけていることやファッションを楽しみながらできる環境活動について、ふたりに話をきいた。

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MICHELLE WEARS GLASSES KEARNY. EARRINGS MODEL'S OWN. TOPS ACNE STUDIOS. RING ALL VINTAGE. PANTS BLANCHE MARKET. SHOES NIKE.

Yuri「Blancheでは、着る人に合わせて古着とブランドアイテムをミックスさせたスタイリングを提案しています。全身古着で固めるイメージから脱却するとスタイリングの幅が広がるし、着る人の個性を引き出しやすい。私自身も古着特有の形や色・柄が好きで、リサイクル抜きにしても好んで古着を着ています。服を買うときは食材と同様、服の素材の背景も気になりますね。フェアトレードのものは意識的に買ったりはしています」

Michelle「レザーに関していうと、今やだいたいのブランドがフェイクレザーを使っていますが、そのフェイクレザーをどこから得ているかまではなかなかわからない。フェイクレザーが当たり前の時代だからこそ、どこまでサステナブルな素材なのかが気になるところです」

明るく環境問題について発信しているBlanche Marketの二人だが、環境活動を始めたきっかけは、オーストラリア旅行で目にしたショッキングな森林火災の光景だったという。

Michelle「2019年に、私たち二人は旅行先のオーストラリアで大規模な森林火災を目の当たりにしました。自然の悲鳴を前に、自分自身が環境問題についてなにも知らなかったことに気づき、危機感から環境問題へのリサーチを深め、実際に少しずつ環境活動を始めていきました」

Yuri「私のエコへの関心は、畜産業が地球環境に与える負荷への問題意識もベースにあります。これまで自分が食べるものや着るものの背景を気にできずにいたのですが、コロナ禍で自炊が増え、食材や素材について何も知らないまま買うことへの違和感と問題意識が生まれたんです。“どうしてこれまで私は平然と動物の命を買っていたんだろう”と動物愛護の観点から動物性のものへの抵抗が高まり、リサーチを進めるなかで工業型の畜産業が環境に与える莫大な影響を知りました。動物に与えている大量生産の穀物を私たち人間が直接食べることで、そこにかかる環境負荷がなくなるうえ、飢餓に苦しむ10億人もの人々を救うことができるそうです(*1)」

Michelle「環境問題に関心を持ち始めた頃は、100パーセント理解できるまでは発信してはいけないと思っていました。その頃はまだ自分の知識に自信もなかったですし、“このお洋服見て!”と思う気持ちと同じように、自身のSNSで環境破壊や動物愛護について発信することが難しかったんです。でもある日、“エコバッグを持つのって可愛いよね”とInstagramに投稿してみたら、思いの外フォロワーからの反響が大きくて。完璧な知識を持っていなくても自信を持って環境問題について声をあげていいし、たとえ間違えても訂正してくれる優しいフォロワーがたくさんいるんです。間違えをきっかけにいろんな人と充実した議論ができるなら、それはそれですごくいい」

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YURI WEARS GLASSES AND EARRINGS MODEL’S OWN. NECKLACE, TOPS AND BRACELET VINTAGE FROM BLANCHE MARKET. BAG BLANCHE MARKET. RING VINTAGE. PANTS PONTI. SHOES NIKE.

Blanche Marketの買い付け先であるフランスは、20年前にすでにレジ袋が有料化されるなど、エコ先進国として世界をリードしてきた。現地で体感したフランス人のリサイクルへの軽やかさは、二人が理想とする“おしゃれで気軽なエコ”に近いようだ。

Yuri「私は学生時代の2年間をフランスで過ごしたのですが、フランス人にはリサイクルの文化が根付いています。街角には“ル・ルレ(拠点)”と書かれた大きなボックスがあり、そこに不要な衣類や靴を入れると、ル・ルレ社(*2)が回収に来てリサイクルしてくれるという仕組みなので、地域全体の習慣になっています。またリサイクルショップも町中にあるんです。いらない衣服が山積みになった倉庫のようなところから、服好きが通うところまで充実していますし、モノをすぐ捨てずにリサイクルするエコな態度が洋服をベースに根付いている気がします」

Michelle「フランスは、道端によく家具が置き去りにされているんですけど、次の日には誰かが持って行ってしまうんです。人がいらなくなったものを再利用することに対して、なんてことない感じがありますね(笑)。日本でもそういう“もったいない”感覚が広がるといいな。フランスと違って日本の街にはリサイクルの仕組みがないぶん、もっとリサイクルショップが普及してほしいです」

Yuri「フランスでは(ル・ルレ社の大元である)エマウスグループという慈善団体があり、そこが街のリサイクルショップを管轄し、また失業者の社会復帰のために雇用も生み出しています。日本にもそういうシステムがあったらいいですよね」

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エコなことをしているという実感が得られないと環境活動へのモチベーションをキープできない人も多い。国内外で精力的に活動する二人は、実感を得ること以上に自分自身の“ハッピー”や“楽しさ”を重視し、素直に生きることが大事だと話す。

Michelle「地球が好き! だからこれからの未来に希望が持てるようにしたいです。モチベーションを保つためには現実的な効果や実感が必要ですが、なによりも自分が楽しいかどうか、好きか嫌いか、ということを大事にしています。好きじゃないことを続けろと言われても無理だし、ポジティブな実感を得ることは難しい。環境や動物愛護、お金、政治ーーそれぞれ別の問題ではなくすべて繋がっているので、あらゆる活動のなかで自分はいいことをしていると信じ続けられるかどうかが重要です」

Yuri「気候危機の時代のなかで幸せに暮らしていきたいのであれば、誰もが環境活動せざるを得ないと思います。今はBlanche Marketで、ファンの皆さんと一緒に何か楽しくエコなことができないかと、二人で色々企画しています」

エコロジー、ファッション、食──すべては繋がり、私たちの日常に豊かさをもたらしている。その豊かさを守り未来へと繋げていくために、Blanche Marketは“おしゃれで気軽なエコ”に奮起する。

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アッパーのリサイクルポリエステル キャンバスをはじめとする繊維素材など、リサイクル原料を重量に対 し20%以上使用している。自然界から着想を得た草木染めのボタニカル刺繍や、コルクかデザインに組み込 まれている。アウトソールには再生されたコルクをゴムの中に9%含んでおり、この一部はワイン業界から仕入れられている。

*2──慈善団体エマウスグループの傘下。リサイクル事業を通じて失業者を社員として雇い、本人が希望する職種に就けるように研修まで請け負うフランスの参加型組合企業


CREDIT
Photography Kyohei Hattori
Text Mami Hidaka
Edit Sogo Hiraiwa

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