表現とは感覚を具現化して自分を楽しませること。台北出身のヴィジュアルアーティスト Niko Wu interview

クィア雑誌「IWAKAN magazine」ともコラボレーションするNiko Wu。東京をベースに、写真家・モデルとしてイメージを可視化させていくNikoの美学が生み出すメッセージ。

by Saki yamada; photos by Niko Wu
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26 May 2021, 6:05am

Niko Wuのクリエイティブは、まるでイマジナリーの世界を泳ぎ回るように自由である。写真家、モデルとして彼女は頭の中のイメージを独自の世界観でヴィジュアル化していく。Nikoの作品は、エキセントリックなビジュアルの発想ではあるが、被写体はいたって自然体。絶妙なバランスの美学を持っていると言えるだろう。日本人の父と台湾人の母を親に持つNikoのルーツは台北にある。植物が生い茂る台湾の景色や陶芸家の母親に影響を受けていることは、独特な東洋の風合いが滲み出てるアートワークを見れば自然と想像できる。意識をして和のテイストを入れることはないが、セットデザインをするときや写真の構図を決める際に、馴染みのある和のフィーリングに頼ることがあると話す。

「母はとても変わっている人です。非婚主義者でしたが、一人娘の私と全身全霊で向き合いたくさんの愛情を注いでくれました。彼女の感性は、人生観や価値観を存分に表していると思います。辛い経験をした人間ですが、乗り越えられた分、とても洗練された考え方と垢抜けしたセンスを持つようになったんだと思います」。

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Nikoは学生時代にカメラで写真を撮るようになった。日本文化への好奇心のもと留学を決意し訪れた東京。「日本での生活が何もかも新鮮で、普通のデジカメで日常を記録していました。次第に美しい、面白いと感じるものを撮りたいと思うようになり、友人のすすめでフィルムカメラにチェンジ。フィルムって本当に不思議で、とても素直な感じがします。ずっと探していた表現手段をやっと見つけたような気持ちでした」。

表現したいことを写真というメディアを通じて伝える。それは詩を書くように、Nikoにとって自然な行為だ。「私にとって表現とは自己対話です。発想の段階から実行するまで、全てがメディテーションの一環のように感じます。抽象的なことや感覚を具現化して自分を楽しませることが表現なのではないかと思っています」。自分の心にいつも正直でいて、日頃からたくさんのインスピレーションをインプットする。そして気持ちが溢れるときや作品のコンセプトが決まったときに、そのイメージをスケッチして可視化するのだ。アイデアが固まると撮影準備に入り、その最中にもアイデアを模索し続ける。こうして作り上げられたNikoの世界は、数々のプロセスがあるからこそ、奥行きがあり、見れば見るほど面白みを感じられるのだろう。

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彼女の人生を形成するものとして、もう1つ大切な出会いがある。それはIWAKAN magazineの発起人であるジェレミーとエドとの出会いだ。3人は同じ大学に通っていて、知り合いの紹介で友達となった。その時のNikoにとって、セクシャルの問題はすでに身近な話だった。「まだ台湾にいた中高生の頃、セクシュアル・アイデンティティが題材の映画やドラマをよく観ていました。一番印象に残った映像作品は、2003年のテレビドラマ「孽子」と台湾の映画監督アン・リーによる『ウェディング・バンケット』、『ブロークバック・マウンテン』です。

インターネットやSNSの普及により、LGBTQ+について考えるキッカケが増えました。大学院でジェンダーの研究をしようと考えた時期もありましたね」。結果、試験に通らず、日本の翻訳会社に就職。Nikoはフルタイムで働きながら独学でアーティスト活動を続けていった。一時帰国していたジェレミーとエドとは、2年前に再会。今では3人とも東京で暮らしている。その日常はNikoにとって奇跡のような話だ。「このコミュニティの人たちとの繋がりが広がり、様々な面白い人と出会えました。インスピレーションを受けたり、コラボレーションの機会が増えたと思います」。彼らと共に時間を過ごす中でNikoはたくさんのことを学び、探求を続けている。「セクシュアルティはスペクトルのグラデーションのように幅があって流動的だと感じます。好きになった人と一緒になって幸せになれば良いことで、分類することは果たして必要なのでしょうか」。

今年の春に行われたIWAKAN magazineのエキシビジョンで、Nikoは「愛情」をテーマに作品を展示していた。「将来の夢はプラスチックフリーなライフスタイルを目指し、ピュアで穏やかな心を持って生きていけたら最高」と語る太陽のように温かいNikoに、愛とは何かを聞いた。「愛とは、宇宙に近い無のような存在になって、無条件、無意識に愛することです」。

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