細野まさみ、Laura Chautinふうふのジェンダーニュートラルな視点

クィアカップルとしてニューヨークで結婚した、ジェンダーニュートラルなヘアサロンを経営する細野まさみと、イラストレーターのLaura Chautin。二人が大事にしているジェンダーニュートラルな視点が、今後の社会や人々にどのように影響するかを伺った。

by Honoka Yamasaki
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14 June 2022, 7:30am

クィアは最高にクールで当たり前に存在するものだ。ジェンダーニュートラルなヘアサロン「VACANCY PROJECT」を経営する細野まさみと、パートナーでありイラストレーターのLaura Chautinはこう語る。クィアカップルである二人は今月、同性婚が認められているニューヨークで結婚。まだまだジェンダー規範が根付いた世の中で、クィアが少しでも息しやすい環境をつくるために人々ができることとは何か。それによって、今後の社会はどのように変化していくのか。二人のもつジェンダーニュートラルな視点と関係性から紐解く。

──お二人はどのように出会ったのですか?

Laura: もともと一緒に住んでいた親友が、当時まさみが働くヘアサロンに髪を切りに行ったとき、私もついて行ったんです。そして私も翌日にヘアサロンを予約し、再びまさみと会って、最終的にTinderでマッチしてメッセージを送り合い、デートすることになりました。

──ニューヨークではクィアコミュニティがどのように受け入れられていますか?

Laura: アメリカ全土とはいえませんが、私たちの住むニューヨークではさまざまなコミュニティが存在し、なりたい自分になれる街だと感じています。多くのクィアの人たちが迫害や差別を受けていた1969年、ニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン」で初めてLGBTQ+当事者が警察に立ち向かった「ストーンウォールの反乱」という事件を聞いたことはありますか?ニューヨークではこのような歴史的な出来事が存在し、徐々にクィアコミュニティが受け入れられるようになりました。

Masami: まだ保守的な考えをもつ人たちは存在しますが、他の州と比べるとニューヨークの人たちはクィアコミュニティを尊重している人が多いです。ここにいる学生たちは、性別や見た目に関係なく、その人が希望するジェンダー代名詞(gender pronouns)で呼ぶことを学校で学びます。特に若い世代の人たちは、クィアが当たり前に存在することを認識しているように感じますね。

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──実際にジェンダー代名詞を聞かれることは多いですか?

Masami: 実際に何度も人がジェンダー代名詞を尋ねる場面を見かけます。ですが、ノンバイナリー当事者として過ごすなかで、無意識のうちに違う代名詞で呼んでしまう人はまだいます。Lauraと街を歩いていると「Hey, Ladies!(こんにちは、お姉さん!)」と見た目で判断して話しかけてくる人も珍しくありません。その人に悪気があってミスジェンダリング※していないとしても、自分のアイデンティティが尊重されないことで傷ついてしまう当事者がいることも忘れてはいけない。なので私はミスジェンダリングを避けるために、相手のジェンダー代名詞がわからない場合は「They / Them」を使うようにしています。

※ミスジェンダリング:本人が自認するジェンダーとは異なる接し方をすること

Laura: 私はなるべくミスジェンダリングしている人を見かけたら、直接伝えるようにしています。しかし、ミスジェンダリングしている人にジェンダー代名詞を訂正する伝え方はいまだに学んでいるところです。訂正することでその人との会話を遮りたいとか、相手を怒らせたいわけでもないので、場の雰囲気を見ながら、誰も傷つけないように伝えようと心がけています。

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──まさみさんは日本からニューヨークに移住して、クィアとしての過ごしやすさは変わりましたか?

Masami: とても変わりました。日本に住んでいたときは、自分のセクシュアリティは隠すべきものだと思っていましたし、世の中のジェンダー規範に当てはまろうとしていた。しかし、2012年にニューヨークに引っ越してから、クィアが当たり前に存在することを知り、自分の考え方が多様化したんです。ここに来るまではカミングアウトをしていなくて、レズビアンを自認していたのですが、新しい町でより自分らしく過ごすなかで、私はノンバイナリーであることに気付きました。さまざまな人種、宗教、文化、民族が交わる環境に身を置くことで、他者のことをレッテル貼りできないし、誰もが一個人として存在するのだと体感しました。

──さまざまなバックグラウンドをもつ人がいるニューヨークで、人と関わる際に意識していることはありますか?

Laura: 相手の出身地やジェンダーなど、人の属性を勝手に判断しないことが大事です。ニューヨークにはあらゆる人が住んでいるため、常に一人ひとりが違う人間であり、その人としてコミュニケーションを取ることを心がけています。

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──お二人が大事にしているジェンダーニュートラルな視点は、ご自身の作品や仕事にどのように影響していますか?

Masami: 私が経営しているヘアサロンは、性別にかかわらず誰もが安心していられる空間を提供しています。通常、ヘアサロンでは性別により料金が変わるのですが、ここはどの性別でも同じ料金でご利用いただけます。私のお店に通う多くのお客様は、過去に性別や見た目で判断されてしまったことから、希望のヘアスタイルを手に入れられなかったという経験があるとおっしゃっていました。私が性別に捉われないヘアサロンを経営することで、クィアの人たちの居場所づくりにもつながると嬉しいです。

Laura: かつてはインテリアデザイナーやショップの販売員として、チームで仕事をしていました。そのときは、自分のセクシュアリティを指摘されたり、異性愛者であることが前提で話が進んでいたことに居心地の悪さを感じていました。現在はフリーランスのイラストレーターとして活動し、今まで周りの反応を気にして公にできなかった自分のセクシュアリティを解放することができています。

──今後、日本でクィアが当たり前の存在として認識されるために必要なこととはなんでしょうか?

Masami: あなたがそこにいるように、クィアも存在していることを認識することです。ニューヨークに住むクィアの日本人として、私はマイノリティになるかもしれませんが、あくまでさまざまなバックグラウンドをもつ人たちのなかの一人です。日本でも同じように感じる人が増えたら、クィアの人たちが過ごしやすくなると思います。どうしても人を見た目で判断したり、異性愛者であることが前提で会話する場面が訪れるかもしれません。ですが、学校、職場、街など、どこにでもクィアは存在します。相手のセクシュアリティを知らない場合は「彼女」「彼氏」の代わりに「恋人」「パートナー」という言葉を使ったり、人の属性を決めつけないように意識することは重要です。

Laura: その通りだと思います。小さい頃に見ていたテレビ番組は男の子と女の子が恋に落ちるようなストーリーばかりで、多くの人がみんな異性愛者であるという前提が自然に備わっていると思います。ですが、最近では男女二元論や異性愛が前提ではないコンテンツが増えてきているので、徐々に認識も変わってくるのかなと。クィアは当たり前に存在しますし、みんなと同じようにクールなのです!そのことが日本でも広まっていくことを願っています。

CREDITS


Text Honoka Yamasaki
Edit Kotetsu Nakazato

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