女性の性的なまなざしを真正面から描いた映画6選

映画における女性の性欲を祝福するアンソロジー『She Found It At The Movies』の刊行を記念し、本書の編纂も手がける映画評論家クリスティーナ・ニューランドが、女性の性的欲望を真正面から描いた映画6本を厳選紹介。

by Katie Goh; translated by Ai Nakayama
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08 June 2020, 11:03am

「ずっと『理由なき反抗』にセックスシーンがないのはおかしいと思ってました」とクリスティーナ・ニューランドは笑う。i-Dは彼女に電話インタビューを行い、女性たちの性欲を描いた映画について話していた。

「でもセックスがなくても、『理由なき反抗』は、女性人気の高い男性アイドルという存在や、世間が彼らに投影する文化的価値に触れている作品です。ジェームズ・ディーンからティモシー・シャラメまで、私たちが魅力的だと思うのはその人自体だけではなく、そのスタンスや価値観なんです。たとえばディーンが体現していた郊外の疎外感とか、シャラメがまとう、人とは違うクールネスとか」

彼女にとって、セックスと映画は切っても切り離せない。そのため、昔の俳優に抱いたムラムラした気持ちについて書き、男性のベテラン映画評論家たちから叱責されたときには驚いたという。

「彼らには、そういう思いを表明するのは不適切だ、と言われました。その経験から、若い女性評論家である私が、俳優の身体性や、女性の観客が俳優とのあいだに築く関係性について語ることが重要である意味、そしてそういう思考がなぜ懺悔すべきもの、そして女性的なもの、不真面目なものとして受け取られるのかを考えるようになりました」

2017年、英『Sight and Sound』誌でそのテーマについて記事を書いたニューランドは、自分がまだこの問題を表面的にしか論じられていないと悟った。「大きなトピックですが、同時に主観的なものでもあります」と彼女はいう。「それに、シスジェンダーでストレートの白人女性である私だけがこの問題について語ってはいけないと思ったんです」

アンソロジーはこの課題を解決するための完璧な形式だった。そして生まれたのが『She Found it at the Movies』だ。ニューランドが編纂した本書は、様々なバックグラウンドをもつ映画評論家、ポップカルチャーファンによる、女性、あるいはノンバイナリーのセクシュアリティと映画についての考察が収められている。

トピックは、虐待者である男性に対する複雑な恋心から、『ハイスクール・ミュージカル』のせいで男性が好きだとウソをつくようになったこと、そして『サウンド・オブ・ミュージック』のジュリー・アンドリュースにムラムラしたことについてなど、多岐にわたる。

この世界、業界では、女性のセクシュアリティがいまだによくないものとされているが、なぜ映画が私たちの性欲をかきたてるのか、という問題を楽しく、セクシーに、スマートに考察するのが本書である。

「セックスは映画のDNAに刻まれている」とニューランドは強調する。「それは映画の始まりからあるものなんです。だから私たちは、セックスについて話をするべきだし、ここまでひたすら男性中心的だったセックスのカウンターとなるものを提示するべきではないでしょうか。映画におけるセクシュアリティの描かれ方だけじゃなく、製作陣、評論家を含む映画関係者全員が、セックスを男性中心的なものと捉えてきたんですから」

映画とセックスに精通したニューランドに、女性の性欲について何らかの言及がなされている映画を6本選んで解説してもらった。

『制服の処女』(1931) 監督:レオンティーネ・ザガン

「レオンティーネ・ザガンという監督は、時代に先んじた、フェミニストの原型的存在です。反ファシストで、レズビアンであることを公にしていました。映画制作のやり方も、仲間の協力をベースにした革新的な形態でした。本作のストーリーは、女子専用の寄宿学校を舞台とした、女学生と女教師の禁じられたロマンス。全キャストが女性の作品、そしてレズビアンのキスシーンを収めた作品としては、最初期のものです。ナチスドイツにより上映を禁止され、長年検閲対象となっていましたが、1970年代の第二波フェミニズムのさいに人気が再燃しました。実に歴史的な記録ですし、こんな昔に女性の性欲を描いた女性映画監督がいたということを、改めて振り返るのは大切だと思います」

『アメリカン・ジゴロ』(1980) 監督:ポール・シュレイダー

「監督はポール・シュレイダーなので、男性のまなざしに異議を唱える、という意味ではそぐわないですが、『アメリカン・ジゴロ』でリチャード・ギアにそそがれるまなざしは、他ではなかなかみられない熱心さとエロスをたたえています。惜しみなく披露される、彼の焼けて引き締まった身体への、そして彼の生活における官能的なディテールへのまなざしです。本作の主人公は、女性に快楽を与えることで金を稼ぐジゴロ。長らくオーガズムを経験していない、あるいは一度も経験したことのない自分よりもずっと年上の女性と寝ることの何がすばらしいかについて、そしてそういう女性たちを絶頂へと導くことで得られる快楽について語る彼のモノローグもあり、それは特筆すべき点だと思います。1980年に男性監督により制作された映画ということを考えると特にそうですね。また、純然たる男性美というものを映しているという意味でも特別な映画です。リチャード・ギアは〈男のなかの男〉ではなく、〈女性が愛する男〉を体現した俳優のひとりだと思います」

『バウンド』(1996) 監督:ウォシャウスキー姉妹

「ふたりのトランス女性(当時はクローゼットでしたが)が監督を手がけた『バウンド』は、女性の性欲とレズビアンのセックスを適切に描いた代表的な作品のひとつです。スージー・ブライトというフェミニスト作家が、今でいう〈インティマシー・コーディネーター(※映画において、ラブシーンの監修やカウンセリングを専門とする役職)〉的な役割を負い、撮影現場でシザリングの手ほどきを行ったり、レズビアンセックスのシーンでは手にフォーカスするよう指示しました。『She Found It at the Movies』では、ウィロー・マクレーが本作について論じていて、手や濡れた状態、ヴィジュアル的なメタファーに重点を置いたカット(たとえばジーナ・ガーション演じる登場人物が壊れた水道管を直すシーンなど)について考察しています。本作では、レズビアンの女性がセックス、快楽に何を求めているのかが意識されています。男性監督の多くは、レズビアンセックスのシーンでペニスの欠落をどう埋めるかを考えがちですが、実際それだけではないんです」

『天国の口、終りの楽園。』(2001) 監督:アルフォンソ・キュアロン

「私がまだ若い頃に借りて家で観て、『何これ、私は今何を観てるの?!』となった作品のひとつです。大人になってからも、ここまであからさまに性欲旺盛な女性が登場する映画、そしてその女性が性欲旺盛であることでひどい批判や罰の対象とはならない映画、というのは少なかったですね。本作は、ひとりの女性とふたりの年下男性の三角関係を描いた作品です。女性は世慣れており、場の支配者となっている。それは私たちが普段目にするものとは真逆です。ここで描かれている欲望は多様で、制限のないバイセクシュアル・ロマンス。自由や、批判の欠如という意味において特筆すべき作品です。それにディエゴ・ルナとガエル・ガルシア・ベルナルがめちゃくちゃ美男子で、それもすばらしいですね!」

『マジック・マイクXXL』(2015) 監督:グレゴリー・ジェイコブズ

「『マジック・マイクXXL』には絶対触れておかないとダメだと思います。女性の観客にとって、自分たちの欲望がここまで満たされることってかなりレアなので。今の情勢だと、映画業界における女性やセックスの議論の多くが、ワインスタイン問題をはじめとするひどいハラスメントについてです。私たちはそういうハラスメントを明るみに出そうと努力をしていて、それについての論議も絶対に大切なのですが、同時に、同意のあるセックスにまつわる悦びに関する話がないがしろにされている気もします。女性だって楽しむ権利があってしかるべきだし、自分たちの快楽について話すことはすごく大事です。本作で、多様な人種や体型の、心底楽しそうな女性オーディエンスの前でパフォーマンスすることで仕事のやりがいを感じる男性ストリッパーの姿を目にすることは、素晴らしいと思います。劇場で観たひとは、本作が作品内の観客だけじゃなく、作品を観ている自分たちをも興奮させる力を目の当たりにしたのではないでしょうか。女性が本作を観るとき、そこに祝祭的な雰囲気が生まれるんです」

『ミニー・ゲッツの秘密』(2015) 監督:マリエル・ヘラー

「本作は、十代の女の子が自分の母親のアラサーのボーイフレンドと秘密の肉体関係を結んでしまうことから始まる物語で、ぶっ飛んでますが、観ている私たちも年若い主人公の考えかたに100%同調してしまう。性欲が爆発し、自立した精神をもった彼女は、いろんな過ちを犯します。ですが、成長過程にある女の子にとって、性的成熟を達成する道のりは平坦ではないという事実を、本作は広い心で受け入れている。主人公の自立心を認めるという点で本作はオープンで、彼女は被害者だ、というのではなく、性的関係の複雑さを提示しているんです。彼女は母親のボーイフレンドを、セックス経験を得るために利用し、前進する。そうして、女性が被害者になりがち、というこちらの思い込みの逆をいく。自分を取り巻く環境の支配権を握っている十代の女の子の姿は、観ていて痛快です」

『She Found it at the Movies』は現在発売中。

This article originally appeared on i-D UK.

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