Photography Mitchell Sams

ストーリーテリングの否定:Valentino 2020春夏

ピエールパオロ・ピッチョーリは、煌びやかな80年代の社交界のスタイルに、セクシーな肌見せ、扇情的なスリットを組み合わせた。

by Osman Ahmed
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31 January 2020, 6:22am

Photography Mitchell Sams

ファッションショーは、常にストーリーを語らなければいけないのだろうか。近年のショーは、反響を呼ぶコラボレーション、大掛かりなセット、社会政治的なメッセージなど、話題性を求められることが多い。しかし、今シーズンのValentinoは、服そのものが語り手になりうることを証明した。

「ストーリーテリングにまつわる議論は好きではありません」とピエールパオロ・ピッチョーリはショーの前に語った。「僕はストーリーテラーではない。クリストバル・バレンシアガやサンローラン、チャールズ・ジェームス、メインボッチャーなどのデザイナーたちも、毎シーズン物語を語っていたわけではないとは思うんです」

Valentino Haute Couture Spring 2020

このような考えによって、ピッチョーリのアイテムは、デザインそのものが自ずと語るようになった。このイタリア人デザイナーの今シーズンのコレクションは、すらっとしたフィッシュテールスカートや背中のあいたセクシーなタイトドレスなど、流線形の洗練されたデザインが印象的。過去数シーズンでValentinoのランウェイを飾ったドラマチックなオペラケープや、全身を覆うフェザードレスにも引けを取らない、豪華絢爛なアイテムが登場した。

しかし、それから月日は流れ、巷には似たようなデザインが溢れ返っている。フェザー、凝った装飾、10メートルを超えるトレーンは、Instagramを席巻しようと企てるあらゆるデザイナーの名刺のようなもので、陳腐なアイテムになりつつある。ピッチョーリは、優秀なデザイナーとして次の段階に進むことを決めた。

Valentino Haute Couture Spring 2020

「たしかにビッグサイズのオペラケープやフェザーは、一世を風靡しました。でも、私たちは今の時代に寄り添わなければいけません」と彼は説明する。「ファッションは、金魚と同じくらい短い記憶しか持っていない。次のシーズンでは元に戻っているかもしれませんが、わかりません。計画は立てたくないので」

オープニングモデルを務めたステラ・テナントは、ピンクのボウタイブラウスに真っ赤なオペラグローブ、黒のサテンのフィッシュテールドレスという出で立ちで登場した。このルックは、コレクション全体のトーンを象徴していた。トム・ウルフが小説『虚栄の篝火』で「社交的なX線」と表現した富裕層の細身の女性を思わせる、どこか80年代的な色使い。ポルカドット、大きなサテンのリボン、フラメンコの衣装のようなフリル……。微妙な曲をすべて排した、ベストアルバムのようなコレクションだった。

ボリューミーなパワードレスの時代をもっとも明確に表していたのは、マーガレット・サッチャーとリン・ワイアットを足して2で割ったような、アイスケーキを彷彿とさせるヘアスタイルだろう。ヘアスプレーの売上がまた増加するかもしれない。

とはいえ、今回のValentinoのショーは、ただ過去を参照しただけではない。太ももまで露わになった扇情的なスリット、透けたオーガンザからのぞく肌は、ともすればおばあちゃん的なアイテムにセクシーさや若々しさを添えていた。

80年代を知らない世代にとっては、今の時代精神を反映した、彼らがまさに求めていたコレクションといえるだろう。

Valentino Haute Couture Spring 2020
Valentino Haute Couture Spring 2020
Valentino Haute Couture Spring 2020
Valentino Haute Couture Spring 2020
Valentino Haute Couture Spring 2020
Valentino Haute Couture Spring 2020
Valentino Haute Couture Spring 2020
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This article originally appeared on i-D UK.

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