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      film Masaaki Kobayashi 1 May, 2017

      2017年に観たい「HIPHOP映画のクラシック」10本

      『ストレイト・アウタ・コンプトン』だけじゃない! ケンドリック・ラマーの歌詞の元ネタから『ゲットダウン』がトリビュートを捧げている映画、グラフィティやフリースタイラーのドキュメンタリーまで——70sから10sまでの傑作HIPHOP映画を音楽ライターの小林雅明が紹介。日本語字幕がなくても、なんとかして観よ!

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      『Killer of Sheep』チャールズ・バーネット(1977)
      ケンドリック・ラマーのアルバム『Good Kid, m.A.A.d City』(2012)を、その筆致に忠実に映像化したら、ちょうど、映画史上に残る重要作である、この劇映画のような作品になるに違いない。時代設定こそ70年代半ばであるもの、舞台はロサンゼルスのワッツ地区の黒人コミュニティで、主人公はいるものの、これといって物語らしい物語はなく、それが(イタリアの)ネオリアリスモ直系の映像でフィルムに収められている。興味深いことに、ラマーのアルバムと同名の約15分のショート・フィルムもまるで本作を意識しているかのようなタッチだ。また、ラッパーのモス・デフのアルバム『The Ecstatic』(2009)のアートワークは、本作の一場面をそのまま抜き出して着色したものだし、ヒップホップ・グループ、シャバズ・パレセズによる2010年の「Belhaven Meridian」のMVは、本作へのオマージュとなっている。そして、何よりも、2017年の観客であれば、このモノクロ作品にこそ『ムーンライト』の祖型を見出すに違いない。

      『80 Blocks from Tiffany's』ゲイリー・ウェイス(1979)
      Netflixの人気シリーズ『ゲットダウン』には、サヴィッジ・ウォーローズという架空のストリート・ギャングが出てくる。この映画は、その基となった、サウス・ブロンクスに実在したサヴィッジ・スカルズとサヴィッジ・ノマッズという2つのギャングの1978年頃(まさに『ゲット・ダウン』と同じ時代)の姿を中心に、当時の社会状況を生々しくとらえたドキュメンタリー。ヒップホップ(・カルチャー)そのものを扱った映画ではないものの、ここに映し出されるのは、ヒップホップが生まれた場所であり、そこに生きた人々の姿である。ちなみに、マンハッタンのアッパー・イーストサイドにある宝飾店ティファニーから、80ブロック北進した場所に広がるのが、本作の舞台サウス・ブロンクスである。

      『スタイル・ウォーズ』トニー・シルヴァー/ヘンリー・チャフォント(1983)
      ヒップホップ・カルチャーの根幹を成す大きな要素のひとつが、グラフィティ。日本でも、ここ数年(電車の車体への)"落書き"問題として、ニュースや新聞で取り上げられる機会が多くなっている。1970年代末から1980年代初頭のニューヨークで、市当局からの圧力に屈することなく、なぜ、彼らはグラフィティという表現にこだわっていたのか?本作は、彼らに通底する精神性を暴き出し、さらに、グラフィティの社会的な地位を捉え直そうともするドキュメンタリー。もともとはTV放映用に撮られた作品だが、サンダンスなどの映画祭で上映され、高評価を得たり、受賞するなどして、広く知られていった。人気TVシリーズ『ゲットダウン』では、シーズン1の第1話で、早速本作中の映像をさりげなく挿入し、敬意を示している。

      『CB4』タラム・デイヴィス(1993)
      ラッパーとしてなんとか有名になりたいと願うクリス・ロック扮する主人公が、(N.W.A.の)イージー・Eみたいなラップを聞かせるなど、既存の様々なラッパーたちの紋切り型をなぞってみせる笑わせ方はうまい。が、後に『ゲットダウン』に携わる音楽評論家ネルソン・ジョージが製作に噛んでいることもあり、ギャングスタ・ラップ人気に便乗したラップ・アーティスト製造過程全体を皮肉り、疑問を投げかけるコメディとなっている。今なら『ストレイト・アウタ・コンプトン』と併せて観たい"迷"作だ。

      『ポエティック・ジャスティス』ジョン・シングルトン(1993)
      ロサンゼルスのサウス・セントラルを舞台にしたこの作品は、ギャングスタ的なパブリック・イメージを定着させる以前の"素"に近い状態でのトゥパックの演技(郵便局員役!)を見られることでも貴重かもしれない。だが、なんといっても注目すべきは、ここでのジャネット・ジャクソンのファッションだ。彼女が着てみせた(長袖の)クロップトップにジーンズの組み合わせは、この作品を機に、公開から20年以上経った今やすっかりスタンダート化しているのだ。

      『friday』F・ギャリー・グレイ(1995)
      2015年に、ラップ・グループN.W.Aの光と影を描く『ストレイト・アウタ・コンプトン』を撮ることになるF・ギャリー・グレイ監督が、元N.W.Aのアイス・キューブを、人気コメディアン、クリス・ロックと組ませて撮ったLAのフッドを舞台にしたコメディ。十時十分眉のあの強面のアイス・キューブが"コメディ"を?などと言う公開前の余計な心配など吹き飛ばすほどの大ヒットを記録し、シリーズ化され、アイス・キューブの役者としての地位を不動のものとした。意外にも、主に2000年以降になると、主役の2人ではなく、敵役で、マッチョでサグで乱暴者キャラのディーボが、ケンドリック・ラマーなど西海岸のラッパーのリリックに頻繁に登場し、「ディーボる」のような動詞形でも使われるようになったのも面白い(大元は南部の俗語だったとの説も)。また、監督自身も、この作品にはかなり愛着があるとみえ、劇中の迷台詞「Hi,Mrs.Parker」を、捩って自身の最新監督作『ワイルド・スピードアイスブレイク』の登場人物に言わせている。

      『Freestyle: The Art of Rhyme』ケビン・フィッツジェラルド(2000)
      TV番組「フリースタイル・ダンジョン」の人気により、MCバトルやフリースタイルというものの存在が、かつてないほど広く認知されてきた2017年の日本。とはいえ、そもそも"フリースタイル"とはなんなのか、どう定義できる?その起源は?といった疑問点は、いまだに度々話題にのぼる。本作は、超大御所から現役フリースタイラーに至る様々なMCが、己の見識や技を披露することで、そういった疑問に答えるうちに、アートとしてのライムが浮き彫りにされてゆくドキュメンタリーとなっている。

      『Tupac: Resurrection』ローレン・レイジン(2003)
      アルバム『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』のクライマックスで、トゥパックが、ケンドリック・ラマーからのインタビューに答える場面は、そんなこと実際にはありえないと、わかってはいても、不思議なリアリティが漂っている。それと似た感覚を初めて味わったのが、この2003年発表のドキュメンタリーを観たときだった。開巻まもなく、「俺は撃たれた」と、1996年に銃撃され帰らぬ人となったトゥパックが語り出す。この作品では、そのまま全編を通じて、トゥパック自身が、様々な映像と共に自らの人生を振り返るのだ。そして、2017年6月、劇映画『All Eyez on Me』を通じて、トゥパックは、全米の映画館のスクリーンに再び蘇る。

      『Freaknik: The Musical』クリス・プライノスキー(2010)
      今や、多くの人気アーティストを輩出し、ラップ・シーンの要衝地とされる米南部ジョージア州アトランタ。だが、この地が、80年代初頭に始まり、ピーク時の1994年から96年には25万人もを集めた全米最大規模のストリート・パーティ、フリークニックが開催された熱すぎるラップ・シティだったことは忘れられがちだ(詳細はトム・ウルフの小説『成りあがり者』を参照)。現実には騒音・交通渋滞などを理由に警察により葬り去られたフリークニックだったが、その亡霊が現れ、保守黒人層と対立しながら、ラッパーたちやオバマ大統領を引き入れ、フリークニック復活を目論むという、アダルトスウィム製のアニメがこの作品(オチにも注目!)。亡霊役の声をTペインが務める他、人気ラッパーが多数声優として参加している。

      『808』アレックス・ダン(2015)
      日本のシンセ開発メーカー、ローランドが1980年に売り出したリズムマシン、TR-808。製造期間はわずか4年だったが、その特色あるサウンドは、2017年現在大ヒット中のフューチャーの「マスクオフ」やピコ太郎の「PPAP」でも聴くことができるほど、愛され続けている。このドキュメンタリーでは、そんなTR-808を、歴史に名を残すアーティストやプロデューサーたちがどう受け止め、いかに使いこなし、サウンド・クリエーションの可能性を広げていったのかが、丁寧に検証されてゆく。

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      Credits

      Text Masaaki Kobayashi

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      Topics:film, straight outta compton, kendrick lamar, get down, hip hop, tupac, hiphop

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