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むき出しの青年時代を称えるポートレート

写真家ロージー・マテソンに、〈Boys〉プロジェクトとそのインスピレーション源を訊いた。

by Roisin Lanigan; translated by Ai Nakayama
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sep 4 2018, 7:45am

ロージー・マテソンは男の子のことばかり考えている。ロンドンとブライトンを拠点とする若き写真家ロージーは、ストリートでスカウトした被写体を撮るポートレートで有名になった。ロンドンとブライトン、ふたつの街で暮らす若者たちの顔を写し出す写真だ。彼女の新しいプロジェクト〈Boys〉のなかでフォーカスされている被写体は、その名の通り男の子。世界中の男の子たちの親密で飾り気ないむき出しのポートレートで、彼女は少年性や〈男性らしさ〉の移り変わりをとらえている。

ロージーが提示する、撮る者と撮られる者との新しい関係性は、男性写真家が撮る女性の姿に慣れきった私たちに新しい地平を示している。

2015年に初めて〈Boys〉プロジェクトの写真を撮影して以来、彼女は自発的に男の子たちの写真を撮りつづけ、男の子たちの自己表現、彼らの感情、そして彼らが普段の生活でどのように自らをアピールしているかを記録してきた。「このプロジェクトが掘り下げているのは、社会において、若い男性たちに声を授けてきたサブカルチャーがどんどん見えにくくなっている今、男性としてのアイデンティティがどう表現されているのか、という点です」とロージーはi-Dに語った。「このプロジェクトが捉えるのは、自分自身が特別であることや興味深い存在であることに気づいていない若者たちの姿です。彼らの顔が、それぞれのストーリーを物語るのです」

ロージーと被写体の距離感は近く、彼女が被写体へ抱く敬意が写真にはっきりと表れている。被写体への親しみの情も、作りものめいた感じはしない。「もともと気負わない姿が好きで男の子を撮影していたんです」。ロージーは被写体についてそう語る。「男の子の写真を撮る場合、大事なのは〈ホット〉、つまり性的に魅力的かどうかよりも、〈クール〉、人として魅力的かどうかです。そこにフォーカスすれば写真を撮るとき、プレッシャーみたいなものが消えます。あるのは私と彼らとの関係性だけ。そうすれば誠実なポートレートを撮ることができますし、それこそ、私が常に目指すところです」

英国の若手ラッパーSlowthaiや、オーシン・ローレンス(Oisin Lawrence)、モデルのエリオット・ジェイ・ブラウンを始めとした、今回の個展用作品の被写体は、Instagramやストリートでのスカウト、共通の友人の紹介、いろんな人からの推薦など、様々なかたちで集まった。「撮影前から知っていたのはふたりくらいしかいません」とロージーは告白した。「大半がまったくの他人でした。私は、そんな彼らと関係性を築くことが大事だと考えていました。毎回仲良くなるわけにもいきませんが、基本はそう考えています。ほとんどの男の子たちとはロンドンで会うし、海外で撮影した男の子たちとも常に連絡を取り合ってます。お互いに年を取り、生活が変わってから改めて同じ人を撮るのは楽しいですよ」

3年もの年月をかけてプロジェクトをつくりあげたロージーは、今年7月末にCreative Debutsをオーガナイザーに迎え、自身初となる個展を開催した。彼女の作品は、それ以前は主にInstagramに掲載されるのみだった。「やっぱり、アートは直接体験することが大事ですし、Instagramは本当の意味でのギャラリーではないと認識すべきです」とロージーは語る。「アートの重要性を真に感じてもらうため、そして観る人に作品を深く味わってもらうためには、直接触れてもらわなければいけません。これまで、画面を通してしか鑑賞されてこなかった数多くの作品を、実際に現像したかたちで観られるのが私自身も楽しみです。今回の個展を観にきてくれた人たちが、作品を観て何かを感じてくれればと願っていますし、直接このシリーズを目にすることで、ステレオタイプ的な〈男性らしさ〉の概念に疑問を抱いてくれればうれしいです。このシリーズの被写体の男の子たちは、そんな概念に抗っています」

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ロンドンのショーディッチにあるBlack and White Buildingで開催された今回の個展では、2015年に撮影された写真から、開幕のつい数週間前に撮られた作品までが展示された。また、関連作品として『Boys -- The Documentary』という短編ドキュメンタリーも初上映された。カイ・ジェフリーズ(Kaj Jefferies)とロージーの共同監督で、全編Super 8フィルムで撮影された本作は、現代社会における〈男性らしさ〉の意味をテーマとし、〈男性らしさ〉は今の時代、どれほどの重荷になっているか、現代社会が若い男性たちに押しつける〈男性らしさ〉のプレッシャーはいかほどか、そんな問題に切り込んでいる。様々な被写体の姿をとらえ、彼らの物語に耳を傾け、彼らの世界観を洞察する本作は、写真シリーズとも密接に関わっている。「昔のホームビデオのような、ノスタルジーと親密さがあります。個々人の心のひだを明らかにするには、それが大事なんです」

個展も短編映画も、この社会でかたちを変えつつある〈男性らしさ〉に光を当てている。今やこの言葉の意味は、実に流動的だ。ロージーの写真のなかでは、被写体たちが自分にとっての〈男性らしさ〉を、自分らしく体現している。「撮影した被写体のなかには、社会での自分の位置づけや身の置き場所、フェミニンな部分があってもいいのか、それとも男性らしい印象を持ち合わせておくべきなのかなどについて、まだ答えが出せていない子もいました。メンタルヘルスや、自分の問題を他の男の子と率直に話せるかどうかが、いまだにハードルとなっているようです。また、〈男の子なんだから泣いちゃダメ〉という危険な思いこみもまだはっきりと存在しており、この社会で、多くの男の子たちの負担になっています。確かに、男性もどんどん感情や気持ちを打ち明けられるようになってきてはいますが、弱いヤツとみなされることを恐れて、踏み出せない男性もまだまだ多いんです」

This article originally appeared on i-D UK.

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