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アートブックフェア MISS READ 2018で気になった日本人出展者5組

ベルリンを代表するアートブックフェアMISS READ、今年のテーマは「日本」。会場を彩った注目の日本人出展者5組と気になる5冊を紹介。

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aug 3 2018, 9:50am

ドイツ・ベルリンのアートブックフェア MISS READ 2018が5月4日~6日の3日間、アートセンターHaus der Kulturen der Weltにて開催された。2009年よりスタートした同フェアは2016年から毎年特定の国をフィーチャー、10周年である今年は『Japan Focus』と題して日本を特集している。日本のアートブック界を担う28組の日本勢を含め、全263組の国際色豊かな出展者が集った今回。その中には写真家・ホンマタカシの姿もあった。

そんな MISS READ の魅力は、ベルリンが醸し出すリラックス感と分け隔てなく自由に交流できるラフさにある。肩肘張らないこのスタイルが、現役の美大生をはじめ若いクリエイターたちを育てているのだ。今回は気になった5組の日本人出展からそれぞれ1冊ずつをピックアップ。コメントとともに紹介する。

commune - commune Press
東京から国内外のアーティストたちを発信し、日本のZINEシーンを牽引するセレクトショップ兼出版レーベル〈commune - commune press〉。各国のアートブックフェアへ出展するなどグローバルな活躍をみせる彼らは、少々不器用でも人間味のあるアーティストたちの作品をセレクトしている。そのなかの1冊が、池野詩織の自費出版作品『摩天楼』だ。このホッチキスで綴じられた28ページについてディレクターの川邊美幸は「怖いもの知らずでラフな当時の彼女のモードが存分に発揮された、お世辞にも綺麗とは言えない(笑)手作りZINE」と語る。「引きの強さと、それを確実にものにする決定力を兼ね備えた稀有なアーティスト」はより研ぎ澄まされ、新作写真集を今秋リリース予定だ。

crevasse
茨城を拠点に活動するZINE出版レーベル〈crevasse〉は、オーナーである大滝渉が「これはヤバイ、伝えたい」と感じた作品を展開している。気になる作家にはまず直接会いに行くこと、がモットーだ。身近で共感できるものより射程の長いもの、いわば普遍的な問題意識に純粋に入り込んでしまった作品がcrevasseを構築している。今年リリースされたtakuya watanabe takuyaの自費出版作品『food』は、男性同士のワンナイト・カーセックスを撮影したもの。そう聞くと、過激でセンセーショナルなイメージが先行するが、実は「その行為に反して繊細でピュアな”愛らしい”と思える1冊」だと大滝は語る。「作品を見ても、話してもとてもピュアな人。それが天然でなく、必死にピュアであり続けようとしている姿勢が信頼できます。自分自身が発信するものに対して、常にその態度を保てているからこそ作品も明確であれるのだと思います」

PARK GALLERY
東京・末広町にある〈PARK GALLERY〉は従来のギャラリーでなく、作品を介したコミュニケーションが生まれるサロン的な空間として若手作家から支持されている。今回は「絵」としてインパクトのある作家作品が集められた。その中で注目したいのが、カナイフユキの絵、エッセイ、漫画で構成されたパーソナルZINE作品『WAY』だ。〈PARK GALLERY〉代表の加藤淳也は「”個人的”な思いを、自分の持っている”技術”と”想像力”をもって最大限に表現しているところにある」とカナイの魅力を語った。表現者の自由と、読者がたくさんの選択肢から選ぶことができる自由、現在のメディアのあり方に対する起爆剤となる1冊だ。

PARTNERS
編集プロダクションkontaktが、自分たちから発信する”何か”を作るべくスタートした自費出版バイリンガルマガジン『PARTNERS』。コンセプトは関係性ー「家族関係、恋愛関係、さまざまなサポートがあるからこそ、人は自分のやりたいことができるし、その関係性をきっかけに素晴らしい価値が生まれる」ーそんな編集長・川島拓人の思いにより多種多様なパートナー像を切り取っている。創刊号である『PARTNERS #1』の表紙と巻頭を飾った写真家ユルゲン・テラーの親子作品、実は当初の締め切りから5ヶ月遅れで届いたそう。5ヶ月待ったからこそ価値のある、愛溢れる親子のストーリーは必見だ。「自分の友人、両親、恋人など、当たり前のように存在する人たちを改めて見直し、感謝するきっかけになればいいと思います」。現在2号目を制作中、今秋には新たなパートナーのあり方を提示してくれるだろう。

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spewedition
MISS READ常連である新潟の出版レーベル〈edition.nord〉の秋山伸がオーガナイズしている、若手出版レーベル・アーティストの作品を集めた「Japan Focus Library」ブースで一際目に止まったのが『spewedition』だ。横田大輔、宇田川直寛、北川浩司の写真家3名で結成されたユニットspewが、2016年にスタートした出版レーベルだ。自費出版のほか、インスタレーション、パフォーマンス、作家のプロデュースなど、その活動は多岐に渡る。今回選んだ『spew Ⅴ』は、ただひたすらspewのメンバーが写っている写真集。出会った人に「写真を撮ってください」と声をかけてカメラを託し、spew自身も相手を撮影し続けるが、自分たちの写った写真のみ掲載している。「写っているのはパッとしない中年の男が3人だし、何も起きないし、とても地味に見える1冊なのですが、この単調さが好きな人もいてほしい」。自由にやりたいことをやるスタイルとアイデアはまさにZINEの原点回帰といえる1冊だ。

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