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OPN interview:ハッピーを求める電子「21世紀のバロック」音楽

“21世紀の電子バロック”とも言える約2年半ぶりのアルバム『Age Of』をリリースした、電子音楽界の貴公子・ダニエル・ロバティンことOPN(ONEOHTRIX POINT NEVER)にインタビュー。

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aug 22 2018, 1:00am

Oneohtrix Point Never: MYRIAD at Park Avenue Armory Photo by Drew Gurian.

生身の人間と機械が織りなす、さまざま感情を持ち合わせた現在進行形の音楽といえる電子音楽。その世界の貴公子と呼ばれるダニエル・ロバティンは、電子という音楽表現を用いて未来へと生きる私たちにどのようなメッセージを投げかけるのか。

Oneohtrix Point Never: MYRIAD at Park Avenue Armory Photo by Drew Gurian.

— 今回のアルバム全体のコンセプトやアイデアを教えていただけますでしょうか?

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この2年の間、オン/オフでレコーディングを続けていた時期だった。その間に自作以外のプロジェクトのために音楽を書く時間を見つけ出そうとしていたり、ビデオゲーム向けだったり、映画音楽を作ったりといった具合にね。おかげで自分の中に異なるアイデアが浮かんで、そのアイデアを一括して自分のスタジオに持ち込んで手元に集まったさまざまなパズルのピースがどう組み合わさるのかじっくり考えてみたんだ。これまでとは異なるプロセスでリフレッシュされる経験だった。だって過去10年の間、僕は利己主義の常習犯だったからね(笑)。だからそれと違うやり方を試す時期だったのだと思う。

— 「ECCO」「HARVEST」「EXCESS」「BONDAGE」というキーワードをアルバムのテーマの柱にどのように解釈されたのでしょうか。

友人のジェイムス・フェラーロとブック・クラブ(*同じ本を仲間と同時に読みディスカッションする読書クラブ。ロバティンとフェラーロは「スティーヴ・バノンの愛読書を読んでみる」というテーマでこのクラブをやっていたとされている)を始めたんだ。僕がこのアルバムに本格的に取り組む前のこと、そこで読んだ本にはホッブスやウィリアム・ストラウス&ニール・ハウの共著『The Fourth Turning(日本語翻訳版タイトル『フォース・ターニング 第四の節目』)』などがあって。その本では、歴史を通じてさまざまなジェネレーション(*団塊世代、ジェネレーションX他)が浮上する、という彼らのセオリーを扱ったもので、ほぼ100年の周期でそのサイクルが終わる、ということが書かれているんだけど、それがほんとにくだらなくて。 そこで、僕たちは、”やろうと思えばあれくらい傲慢になれる、ハッタリをかます度胸を持つ” という発想にハマってしまったんだ。ある時代を「これは◎△の時代(Age of 〜)である」と決めつける傲慢さをね。で、今話したような「時代」云々についての考え方が頭にあったところで、『2001年:宇宙の旅』を観返していて、ふと気づいた。「『2001年』を逆回転させたようなオペラみたいな作品をやったらどうだろう?」と。 そこには、宇宙に存在するあらゆる疑問に対して回答を出すことのできる、非常に優秀なAIが存在している。AIたちがやりたいと思っているのは、僕たち人間のように愚鈍になること。繰り返されるパターンみたいなものとして我々人類の文明を眺め、人間の「愚かさ」について夢を観ている。そこに出現してくるのが「ECCO」、「HARVEST」、「EXCESS」、「BONDAGE」の4つのパターン。人間はいつもこのパターンを繰り返し生きている。だからこの4つの言葉は、『AGE OF』に収録された音楽を何か新しいものしてくれるかもしれないという楽しい考え方・捉え方のひとつになった。

Oneohtrix Point Never: MYRIAD at Park Avenue Armory Photo by Drew Gurian.

― レコーディングでの思い出深いエピソードはありますか?

アニーノから即行で「歌詞を書いてみて?」というチャレンジを受けたね(笑)。彼女とは、2007年から2008年頃に僕がニューヨークに移って以来の知り合いで、僕は彼女の大ファンであり仲の良い友人そしてコラボレーターなんだよ。僕がプロジェクトをはじめたときも身近にいて、僕の音楽に価値があると言ってくれたミュージシャンのひとりだった。いつも自作の詩をたくさん書き付けたノートを彼女は持ち歩いていて、そのノートを手にスタジオに現れたときは、歌詞は彼女に任せれば大丈夫と思っていたんだ。そうしたら、「あら、まだ歌詞が出来てない状態なの? だったらあなたが書かないと」と言うんだよ(笑)。彼女とのコラボはいつもそうだけど、僕を「安全圏」から無理やり押し出そうとするんだよね。

— ブルックリンに住んでいらっしゃいますが、どんな生活をしますか?

結婚していて、アパートメントに暮らし、犬や猫は飼っていない、とにかくよく歩く。一日中アボガドトーストを食べてる。陶器や植物が好きでコーヒーも好き。映画が好きでよく観に行ったり、友人たちに囲まれた楽しい時間を過ごしてる。

Oneohtrix Point Never: MYRIAD at Park Avenue Armory Photo by Drew Gurian.

― その生活が音楽制作に影響を与えることはありますか?

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「素晴らしい芸術を生むために、アーティストは苦しみを味わわなければならない」っていう考え方、ほんとに過大評価されてるよね。僕はこれまでありとあらゆる苦痛を味わってきた人間だから、自分自身のちっぽけで取るに足りない人生の中でハピネスを掴めれば掴めるほど良い。というのもデフォルトな僕の精神状態は「不安」だから。「空が落っこちて来るかもしれない」とか常に心配しているからこそ、ハッピーな人間になるためにはどうしたらいいのかということを考えるようにしているんだ。

― 最後にリスナーへのメッセージはありますか?

心が動くような、まるで幻覚を見ているように聴いて欲しい。音楽とはまったく関係のないいろいろなフォルムとか、アイデアや色といったものを聴きながら妄想してもらいたい。ただ、僕は音楽というドラッグを作り出そうとしているだけだから。

【ONEOHTRIX POINT NEVER 待望の来日公演】
日時:2018年9月12日(WED)
場所:O-EAST
時間:OPEN 19:00 / START 19:30

ONEOHTRIX POINT NEVER
http://www.pointnever.com/

BEATINK 03-5768-1277
https://www.beatink.com/

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