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売れ筋の通販美容器具は電気羊の夢を見るか?

鼻のかたちを整えたり、頬をスリムにする通販美容器具は、現代を代表する肖像なのかもしれない。

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dec 7 2017, 2:37pm

200円ほどで鼻を高くする道具と鼻梁をまっすぐにするクリップがアマゾンで手に入る。プラスチック製のこの道具はセットなのだが、婦人科で使う機器にも見えなくもない。

「ピンクのやつは超痛いわよ。誰にもおすすめしない。息もろくにできないんだから」と満足できなかったある購入者は商品レビューを書いている。彼女たちはそこで「ここぞというときのためにステキな形の鼻をつくってくれる」別の商品を勧めている。。

「年配の人の鼻にも使えるの?」と購入しようか迷っている客からの質問がある。「私の鼻は歪んでいるんだけど、これで直りますか?」と他の者も尋ねている。そしてもうひとり。「これで下向きの鼻が持ち上がるかな?」

子どものころ、兄弟に鼻を洗濯バサミで挟まれたときの痛みを覚えているわたしは、この骨も砕けるような不快感を自ら進んで受けようとする人がいることに、何か社会的な力が働いているんじゃないと危惧せずにはいられない。200円で頭痛のタネを買わないようにアドバイスしたくなる。

写真家のエヴィヤ・ライヴィーナ(Evija Laivina)は、去年この鼻を高くする器具を購入した。自身のプロジェクト〈Beauty Warriors〉のためだ商品は中国から彼女が暮らすスコットランドのインヴァネスに送られてきたという。

「大学で美とアイデンティティに関するプロジェクトに取り組んでいます」と彼女は説明する。「それが何を意味するのかわからないけど、こういう器具を集め始めました」。ネット上で目をぱっちりさせたり、二重あごを解消したり、笑顔を明るくするとうたう安価な器具がたくさん売られていることに疑問を抱いているのだ。

こうした器具は中国や韓国から送られてくることが多いため届くのには時間がかかる。そのあいだにエヴィヤは撮影アイデアを練るのだ。モデルには友人や家族、facebookの友だちなどを使った。彼女たちはまだら模様のバック紙の前で、目線だけをカメラに向けたポーズを取っている。プラスチックやゴム製の奇妙な器具がついていなければ(モデルたちは不自然さを感じさせないほど穏やかな表情をしている)、卒業アルバムの写真のようにすら見える。

エヴィヤが撮影した美容器具は以下の通り。ライムグリーン色のプラスチック製“スマイル・メーカー”はカーブした小さな支えを使って、躁病的な笑みをキープできる(韓国製 1000円)。二重顎を解消させる“ヘッド・ベルト”はソフトなピンクのネオプレン素材で「柔らかなあご」にもフィットする(中国製 280円)。そして“二重トレーナー”はメガネを逆さにしたようなファンキーな見た目で「整形しなくても二重に」がうたい文句(900円 レビュー欄には「ガラクタ」と記載あり)。

「美容器具とクラシックな写真を組み合わせるのが好きです。奇妙な写真が撮れるんです」とエヴィヤは言う。彼女が写真を始めたのは2007年。ラトヴィアからイギリスに移って間もないころだった。「何か洗練されていておもしろいこと、でも同時に心を揺さぶられるようなことがしたかったんです」

だがこの作品は深刻なテーマを扱っている。「現代には大きな問題があります」と彼女は話す。「みんな自分が社会の基準にぴったりはまらないかもしれない、まだ十分じゃないという恐怖の中で暮らしていんです」。エヴィヤの写真は人工的でしばしば実現不可能な理想の美に近づきたいと思う欲望がもたらす、おかしくも悲しい結末を描き出そうとしているのだ。

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「わたしもプレッシャーは感じます」。エヴィヤは鼻のせいで、学校でいじめられていたと話してくれた。「基準に満たなければ女性がどう感じるか、わたしにはわかります。みんなが典型的なかたちの鼻じゃないといけないなんてバカげている。それと違うからって落ち込むのは馬鹿馬鹿しいですよね。そういうことをもっと話す必要があると思います」

エヴィヤの写真は、女性をそうしたプレッシャーの犠牲者として写すことはしない。この作品群が〈Beauty Warriors(美の戦士たち)〉と名付けられていることからもわかるように、エヴィヤはモデルたちを戦士に見立てている。彼女たちはこのプロジェクトに関わったことで、美容界を鼻であしらっているのである。

evijalaivina.com

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