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ファッション界でもっとも愛されるヘア・スタイリスト、グイド・パラオ

Valentinoでのクチュールコレクションのヘアはファッション業界に新鮮な驚きをもたらしたが、それはファッション界でもっとも活躍するクリエイターのひとりで、i-Dでも多くのカバー写真を手がけているヘアスタイリスト、グイド・パラオの手によるものだった。

by Ryan White; translated by Aya Takatsu
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aug 13 2018, 10:02am

Valentinoのクチュールコレクションは、ファッション界を圧倒した。クリエイティブ・ディレクターのピエールパオロ・ピッチョーリの着想は広範囲にわたっていて、パリ8区に位置する歴史的建造物のオテル・サロモン・ド・ロチルドの夕暮れと、ギリシャ神話と60年代スタイルを見事に引き合わせていた。現場にいたオスマン・アーメドも、今まで見た中で「最高のショー」だったと言うほど引き込まれたという。昨今のストリートウェア全盛のファッション業界にアンチテーゼを示したそのショーは、その服を買うことのできるほんのわずかな人以外も楽しめる、緻密につくりこまれたファンタジーワールドだった。

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このショーで、コレクションそのもの以外でもっとも賞賛され、Instagramにもポストされたのはグイド・パラオによるヘアスタイリングだ。やや短めのオールバックスタイル、球状の花、モデルたちの頭上にそびえ立つビッグヘアなど、印象的な8つのウィッグは、ピエールパオロのビジョンが持つはかり知れぬ魅力を伝えるものだった。グイドにとって、それは異次元からのメッセージを送ることにも似ていたという。「これは女性が夢見るヘアスタイルです。現実世界ではなく、空想のようなもの。60年代のダイアナ・ヴリーランドや、女性たちをとてもアイコニックに見せるアヴェドンの写真、もしくは60年代にアヴェドンが撮影した、とてもグラマラスに定型化された社交界の女性たちのポートレイトです」。

グイドは、長いあいだドラマティックなヘアスタイルの中核的存在だった。そのスタイリングはi-DやVogue、W、LOVEなどのファッション誌の誌面をはじめ、Marc JacobsやPrada、Balenciagaなどのキャットウォークにも登場し、光を放っている。長年組んできたフォトグラファーである故リチャード・アヴェドンやスティーヴン・マイゼル、デヴィッド・シムズ————シムズとは一緒にアバンギャルドなヘアスタイリングの本を一冊つくっている————らとともに、過去30年にわたってパワフルなファッション・フォトをつくり上げてきたグイド。彼は、今やスタイルやトレンドの変化への比類なき力となっている。話題を席巻したValentinoのショーののち、このヘアスタイリングのマスターにインタビューを敢行。そのクリエイションに欠かせない要素を探った。

————Valentinoのヘアスタイルをつくる際、あなた自身のビジョンはどういうものだったのですか?
クチュールの数週間前のメンズのショー会場でピエールパオロが私に言ったのは、とても印象的で、夢のようなものがほしいということでした。アヴェドンが60年代に撮影した社交界の女性のように、非常にグラマラスに定型化されたものです。それであの大きなヘアというコンセプトを思いついたのですが、シックで定型化されていながら、同時にイージーなものにしたいと考えました。ピエールパオロは究極にドラマティックな、本当の意味でのインパクトを欲していたのです。だから、大きなヘアについて話をする際、きちんと意味を持たせるために、非常に大きく、かつエレガントにする必要があると私は説明しました。何といってもValentinoですから、洋服にはとても気品があるわけです。だからヘアもそれに合うものでなくては。けれどインパクトを与えるために、大きさのバランスはあえて崩す。そうすれば、みんな私たちが何を伝えたかったのかがわかると思いました。

————あなたとピエールパオロのコラボレーションはどのように行われたのですか?
モデルたちを使ってランウェイでどんなことがしたいか、彼がまずそのファンタジーを考え、そのあと私が持ち帰ってデザインし、彼にイメージを送りました。とても気に入ってくれましたよ。長年一緒に仕事をしていますから、お互いの仕事をリスペクトしているんです。本当に極限までがんばったので、ショーの準備が進むにつれウィッグはどんどん大きくなっていったようでした。本番の2時間前まで大きくしていたぐらいですから。あれほどのインパクトを生むとは、正直なところ気づいていませんでしたね。ヘアスタイリストとしての私の仕事は、デザイナーとともに仕事をしながら彼のビジョンを実現すること。それを遂行しようとしたら、そこに至るプロセスすべてがとってとても大切なことなのです。

————あのヘアをスタイリングするのにどれくらい時間がかかるのですか?
たぶん2時間くらいだったと思います。事前にやり方を考えておきますから。完璧に仕上げ、できる限り夢のように仕立てるのに2時間。ああいうヘアをつくるというアイデアのなかにはエフォートレスで豊かに見せる、ということも含まれていたのです。あんなに巨大でも、簡単で道具で小細工をしていないように見せ、なおかつ艶やかにしたかったのです。

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————今はInstagramなどのようなものを念頭に入れなければならなくなってきましたか?
いいえ、それほどは。Instagramはそれがひとつの世界ですから。どういうものが取り上げられるかは予測はできない————簡単にひっくり返ることもありますし。私はデザイナーとショーのためにヘアをつくるのです。それが終わるまでInstagramはあまり関係ないですね。美しく特別なあのショーで、ああいったヘアは多くのInstagram的関心を引きました。みんなほかとは違うバランスを見るのがおもしろかったんです。非常にエクストリームでしたから。今はビューティがリアリティの時代に入っていると思います。特にヘアでは、個性やナチュラルがもてはやされていて。それはファッション業界から送られるとてもポジティブなメッセージでもあるわけですから、ああいう並外れて大きく大胆なものを見るのが驚きだったのでしょう。ほかの時代、例えば80年代のニューウェーブのようなものの影響はありましたが、グラマラスに定型化されたヘアは、ここしばらくあまり見ていなかったですからね。

————ヘアスタイリングをきちんと学んだのはサロン勤務時代ということですが、どのようにファッション業界に入ったのですか?
そう、80年代の初めのロンドンにあるVidal Sassoonから始めて、すぐに自分はサロンで働きたいのではないと気づきました。模索した結果、若いフォトグラファーたちと作品撮りをするようになったのです。それがいちばん落ち着きましたし、自分の天職だと感じました。そして数年後にデヴィッド・シムズと出会ったのです。彼はアシスタントで作品撮りをしていて、私に一緒に仕事をしないかと頼んできました。それが私たちのコラボレーションの始まりです。90年代初めのグランジ時代にデヴィッドと仕事をしたことは、私の作品にとって強力な後押しとなりました。それによって私のキャリアは躍進し、Calvin KleinやHelmut Langのような世界的ブランドから仕事がくるようになったのですから。そうして25年、今のような仕事をするに至ったというわけです。

————そうしたコラボレーターたちから何を学びましたか?
あのころ、デヴィッドが私にヘアを違う角度からとらえさせたから、スティーヴ・マイゼルやリチャード・アヴェドンといった私のヒーローと仕事ができるようになったのです。彼らは私の美的感覚を押し上げ、70年代にイングランドの地方都市で育った私が知らなかったようなことを教えてくれる偉大な教師でした。そうしたデザイナーやフォトグラファーたちを通して、私は違う世界を目の当たりにしたのです。それによって私のキャリアは本格的に始動し、弾みがついたわけです。

————ファッション界でヘアスタイリストを目指している人にアドバイスをするとしたら?
学ぶこと、オープンであることがすべてということでしょう。自分と似たビジョンを持つ人を探すこと————まずはフォトグラファーですね。アートや映画について造詣を深めること。道ですれ違う人を全員見ること。ファッション界で優れたヘアスタイリストになるのであれば、あらゆるものに関して多くの知識を持たなければなりません。仕事のとき、参考としてどんなものを要求されるかなんてわかりませんから。ひとつのジャンルやある特定のスタイルでやめてしまったら、そこで行き止まりです。ですから、若いヘアスタイリストに伝えるのは、とても古い技術から最新のものまで、すべてに精通しなければならないということですね。

————ヘアスタイリストが誤解されていると思う点は何ですか?
いつも思うのですがヘアスタイリストになるということ自体、ちょっと不安に感じることなのではないでしょうか。人に「仕事は何をしているの?」と聞かれて、「ヘアスタイリストなんです」と答えるとき、いつもなにか含んだものがあるのです。私も例外ではなく、ヘア・スタイリストの多くが、自分の職業にとても不安を抱いていると感じます。それはたぶんこの職業をみんながひとつのカテゴリーにはめようとするからなのでしょうが、私はこの仕事がファッション界、そして現実の世界でもとても大切だと思っています。みんな髪をきちんと整えてもらったら気分がいいでしょう?ファッション・ビジネスにおいてもヘアは撮影において重要な役割を担っているし、ファッションショーにおいては、大きな付加価値を与えることができますから。

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————今つくり出されている写真には、80年代や90年代のものと同等のパワーと魅力があると思いますか?
それを答えるのは難しいですね。当時の表現が、これから10年、20年後に「アリ」かどうかはよくわからないですから。今起こっていることはすべて目に見えるかたちで現れていなかったとしても、時代を反映しています。その時代にいると気づくのは難しいですが。一歩引いて観察したときだけ、今起こっていることを正しく反映しているとわかるのです。Valentinoが興味深かったのもその点です……気品があって、パワフルな女性という概念には多くの人がピンときたはずです。分析しすぎたくはないのですが、たくさんの人のスイッチを正しいやり方で押したようでした。

This article originally appeared on i-D UK.

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