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平凡な日々に見つける愛:SKY-HI & Reddy インタビュー

超メジャーレーベルから異例の無料ミックステープ配信をはたし、前進し続けるSKY-HIとコラボレーションしたHi-Lite Records所属のラッパーReddy。ふたりの当たり前な日常から生まれた楽曲『I Think, I Sing, I Say』について語る。

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aug 21 2018, 9:45am

世界中に根を張るコミュニケーション・ツールにより、日々変化する価値観。既存のルールにとらわれず、自分の勘を頼りに可能性を感じるツールを発掘しているアーティストが、発信する作品はどんなメッセージよりも純度が高い。AAAのメンバーとして日本の音楽シーンに多大なる影響を与えた日高光啓のソロ名義「SKY-HI」も間違いなく環境に縛られることなく自己表現をするアーティストだ。彼がメジャーデビュー5周年を迎えた8月7日に無料公開したミックステープ『FREE TOKYO』ではSALUやMOMENT JOONなど日本を拠点にした気鋭のラッパーをフューチャリングし、それぞれのアーティストの多様な価値観が共存している。その中で唯一、韓国のHIP-HOPシーンで名を挙げる実力派レーベル〈Hi-Lite Records〉から抜擢されたReddy。ふたりにとっての日常を描いた楽曲『I Think, I Sing, I Say』について語ってもらった。

————『I Think, I Sing, I Say』は人種・性別・主張など、人それぞれの違いを認めて育む”愛”がテーマだそうですが、楽曲の制作過程を教えてください。

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SKY-HI(以下 S):僕は去年からこういうテーマの曲を作っています。ただ、コンシャスな内容を歌うと、自分が真面目な人として扱われて真面目な話を聞きたがる人が増えるんです。僕はそういうことじゃないとずっと思っていて、政治、宗教、人種、性別って真面目な人が真面目な話をするためのトピックスではなく、頭が悪くても、インテリでも誰の生活のなかにもあることだと思うんです。だからカジュアルにそういう話をしたいなと思ったときに、ポップなトラックを作ってそういう内容を歌おうと思ったのがスタートです。Reddyはいろいろな国に行って歌ったり曲を作っているから適任のはずって勘が自分の中であったし、たくさんの人と出会って何を感じているのか興味があったので、その話を聞かせて欲しいとメールしました。

Reddy(以下 R):今回、自分の日常をテーマにすることで、当たり前の日常が特別なものだったっていうことを思い出しました。生活することに慣れてしまって日常を忘れがちに生きていたので、SKY-HIから連絡が来たときに「自分の人生はこうだった」、「この毎日は特別だったんだ」と目覚める感覚があったというか。この振り返る行為も自分にとっては特別な感じがありました。

S:リリックをもらって「うおー最高!」って思いましたね。もちろんレコーディングしたらもっと最高でした。強烈にああしようこうしようと練るんじゃなく、Reddyは面白い日常を過ごしている素晴らしいラッパーです。

————今回のコラボレーションにおける二人にとってのチャレンジは?

S:自分の活動の全てにおいてチャレンジしている感覚はあまりないです。88risingというアメリカの音楽メディアとのコラボレーションにみられるように、世界がアジアに注目している中で、日本と韓国って人種的な意味でも距離的な意味でもすごく近いじゃないですか。すぐ近くにイケてるラッパーとかがいて、一緒に何かやりたいと思ってくれるなら絶対どんどんやった方がいいし、それがチャレンジなのではなくて、当たり前のことの一つになっていくといいなと思っています。

R:僕は曲を作っていくことがチャレンジだと思っています。いつも新しいものをリスナーに聴かせる必要があるので、以前のバースよりもっといいバースを作るために今回も頑張りました。毎回そうすることがチャレンジだと思っているし、でもチャレンジしようと思ってやっているのではなく普通のことだと思います。

S:あとはこの曲をみんなに聞いてほしいです。最後のバースで「俺の友達に唯一いないのはヘイトクライム」みたいな話をしているんですけど、この曲はヘイトに関する曲ではなくて『許す』とか『愛』の歌なので、こういう話題に対して意識の高い人たちには肩の力を抜いて聞いてほしいし、興味のない人には何となくいいバイブスの曲を二人が出したなって、何となく気持ちいい曲だなって思ってもらえることがすごく大事。

————新たなテクノロジー、サービスの登場、リスナーとのコミュニケーション方法の多様化など、様々な変化が目まぐるしく訪れますが、チャレンジできる分野が大幅に拡大した時代に生きるミュージシャンとして期待することは?

S:今回リリースしたミックステープは全て自分が作ったビートで、レコーディングもほとんど自宅でしているんですけど、そうやって自分で完結できるのもテクノロジーのおかげだと思います。家の環境が良くなったぶん、レコーディングやスタジオの費用も削減できるし、宣伝費もインターネットやSNS、ミックステープという話題作りでセーブできるので、作品がもっと広がりやすくなるように無料にしました。制作方法はこれからもどんどん変わっていくと思います。例えばsiriの性能がもっと良くなってリアルタイムでラップを翻訳してくれるとか。そうしたら僕たちが他の国で活躍できるチャンスはもっと増えますよね。

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R:ネットやSNSが主流になって個人のコンテンツ力が強くなりました。自分ひとりで自分を知ってもらえるように発信できる時代になっているので、自主リリースも可能になったし、みんなが自分の表現したいことをもっと強くみんなに伝えることができると思います。昔よりも曲のスタイルやジャンルも生まれるようになったし新曲の回転率も早くなったので、リスナーは音楽が聴きやすくなったと思います。ただ、それによって音楽が消費されるだけで残らないものになってしまっているので、その改善策が見つかったらいいなと思っています。

————どんな改善策が思い浮かびますか?

R:めっちゃ難しいですね。時代って、正直前みたいに戻らないと思います。LPが誕生してテープになって、 CDになって、mp3になった歴史じゃないですか。今と昔の違いって音楽を聴くための〈時間〉なんですよ。昔はCDやLPを買ったときにそれを何回も聴き込んだり歌詞カードを見ていたりしたんですけど、今は携帯でパッと聞けるから音楽を聴く時間をわざわざつくらないし、これからもっと音楽を大切に聞く時間は減ってしまうと思います。そこで曲の価値を上げるよりも、アーティストとしての価値を上げていくのが大切になってくる。アーティストの価値が上がると曲の価値も上がるんじゃないかなと思っています。

————自分にとって人生のアドベンチャーとは?

S:ないと答えるか全てと答えるか……どちらかの気がしています。完全に安全な状態っていうものはないし、例えばこのミックステープがすごくこけたら、やっぱりSKY-HIはダメじゃんってことになるし、せっかく参加してもらったReddyに対してもメリットが生まれない。携わってくれているスタッフにも迷惑をかけるし、いいことなんて一つもないんですよ。でも、うまく行ったらミックステープの取り組み自体も取り上げられて、ビートメイカーとしてのスキルもピックアップされて、ラッパーとして参加してくれた人、Reddyとの関係、韓国と日本のライブの行き来、新たなコラボレーションとか、また新たな冒険がやってくるんですよ。ただ0か100ってことは滅多になくて、常にある程度の失敗をしてある程度の成功もすると思っています。すごい滑ったけど2年後のためになったとか、すごい盛り上がってるけどやっぱコアな人しか聴いてないねとか。気にしてたら何もできなくなってしまうので、全てのアクションが冒険であり日常。

R:人はみんなアーティストだと思っています。どんな仕事をしていても、自分を何らかの形で表現することができたらアーティスト。今の自分は感情とか意見を音楽で表現してるけど、いつか絵を描いて表現するかもしれないし、モデルをやりながら表現することもできると思うし、カフェをオープンして自己表現できたらすごく面白い文化になるんじゃないかなと思います。どんなスタイルでも自分の感情を物で表現し続けること、それがアドベンチャーだと思います。

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