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      the fifth sense Nozomi Kinoshita 19 June, 2017

      コムアイとIKUMI:真逆な2人が魅せるクリエイション

      シンガーとして、またはファッションアイコンとして、マルチな活躍を見せる個性派アーティスト コムアイと、一着一動へのこだわり、NYでコレクションを発表するデザイナーikumi。二つの才能が融合した、奇妙かつ神秘に満ちた世界について話を聞いた。

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      2017年3月8日(水)に開催した武道館ライブ「八角宇宙」は大成功で幕を閉じた。スピードを緩めることなく疾走を続ける水曜日のカンパネラ。そのフロントに立つコムアイは、今回のライブで、大業をやってのけた。舞台は会場の中心にセットされており、ファンに360度囲まれ、まるで昔話の世界に入り込んだような、現実世界からかけ離れた空間を作り出していた。会場に集まったファンは皆、水曜日のカンパネラの作り出す世界へと引き込まれていった。ライブ成功の裏には頼りになるバックアップがいた。それが今回、「ユタ」「ネロ」「ユニコ」の3曲の演出と、ダンサーの衣装を担当したデザイナーのikumiだ。オーバーサイズのパターンやモコモコな素材を使用し、不規則なかたちをした、白と黒の不気味な雰囲気の衣装に身にまとったバックダンサーたちは、何ともインパクトが強い。大成功を期した1ヶ月後、彼女たちがライブを完成させるまでの工程や舞台裏の秘話に触れる。

      初の武道館ライブを終えた感想を教えてください。
      コムアイ: やりたいことをやれて、すっきりしました。長く続いた便秘が終わったような爽快感です。それと同時に、あれから1ヶ月が経ち、今ライブを振り返ってみると、本当にあれがやりたかったんだろうかといろいろ思いを巡らせてしまうんです。私がやりたいことはもっと面白いこと。何だか今まで感じたことのない、長く終わりの見えない道のスタートラインに立ち、溜息をついている感覚ですね。
      ikumi: 私、「ネロ」のとき泣いちゃった。すごく神秘的だった。演出と衣装を担当したのは初めてだったので、全部が新鮮でとても楽しかったです。

      今回のライブについて教えてください。
      コムアイ: 武道館について少し調べてみて、それ以来特別な感情を抱いていました。武道館を設計したのは山田守さんという建築家で、京都タワーの設計も手がけている方なんです。どちらとも1964年の東京オリンピックの年に建てられたもの。今と同じで、オリンピックを控えて自国の美意識、建築レベルに鋭い目線が配られるタイミングだったと思います。武道館自体のシェイプが8角形なのですが、観客席は方角によって東洋神話の四神にちなんだ色に塗り分けられています。例えば南は朱雀だから赤といった感じ。そして感動するほど美しいのが、内部の天井も八角形の層を少しずつずらして積み上げられた構造になっているところですね。屋根には富士山の裾野、八角形の形は法隆寺の夢殿、しかもあの立地。大きな木の下にいる安心感がある。そんなことを考えながら今回の公演を、「八角宇宙」というタイトルにしました。

      タイトルも武道館にちなんでいるんですね。
      コムアイ: 一つの核から二の陰陽が生まれ、さらに四つの方角に別れ、その次が八。「八卦(はっけ)」は、古代中国から伝わる易において吉凶を見極めるために使われるものです。天地自然に象って作ったという伝説があり、ありとあらゆる事物事象を表していると言われています。「八卦」の中心には太陰大極図が描かれていて、これは隠と陽を表しています。陰と陽は、月と太陽、夜と昼、冬と夏。これがないと物質の変化が起こらない。生物が生まれる瞬間を表現するものでもあるんです。演出で、鉱石や分子だけだった世界に、柔らかい生き物が誕生した瞬間を讃えたかった。アダムとイヴや縄文人のような、最初の人類たちの旅も美しいと思う。

      ─ライブの中盤、「ユタ」「ネロ」「ユニコ」の3曲が続き、そこにダンサーが登場する。このパートの演出兼ダンサーの衣装を担当したのがikumiだ。コムアイが「ユタ」を歌い始めると、IKUMIが過去にコレクションで発表した黒と白の服に身を包んだダンサーステージ下の両脇から列をなして登場。ゆっくりとした足取りで、気だるそうに手を下ろし、奇々怪界とした踊りをしながらステージへ。ステージへと上がったダンサーは白と黒が混ざり合い、輪を描きながらスキップをしたり、盆踊りのようなダンスをしながらコムアイを囲む。曲の終盤には白黒が別れ、太陰大極図が完成するのだ。その後、ダンサーたちは衣装を脱ぎ捨て肌色の服で踊る。そう、「ネロ」と「ユニコ」では、人類の誕生を表現しているのだ。

      ikumiさんが演出とキャストの衣装を担当した経緯は?
      コムアイ: ikuちゃんの服が好きでよくプライベートでも着用しているんです。3年くらい前に知り合いになり、面白いプロジェクトにも参加させてもらったりして。今回の隠と陽を表現するにあたって、ブラック&ホワイトの印象が強い、彼女のブランドが一番に思い浮かびました。
      ikumi: ショーの1か月前にコムからいきなり電話が来て、そのままカフェで合流。衣装演出を担当して欲しいと言われました。コムから「八卦」や宇宙、陰陽について表現したい! と伝えられ、私も大好きな陰陽マークだから、やらせてって即答しました。

      66人のキャストの衣装を1か月で準備を?
      ikumi: はい。時間がなかったのでとても大変でしたが、衣装はこれまで手がけたデザインのアーカイブだったのでなんとか間に合って。大変だったのがヘッドピースですね。コムが表現したかったのが、生物が生まれる前だったので、ダンサーたちが人間に見えないよう、顔や表情を隠そうってことになって、今回のために全部作ったんです。
      コムアイ: 初めは66人全員に着用させなくてもいいかな、とか、既存のシンプルなマスクを用意するって話もあったんです。でも打ち合わせしていたら、最終的にいikuちゃんが一番手間も時間もかかる、ヘッドピースをいちから66個製作するのが良いって言い出して(笑)。この人やばいなと思いました。

      「ユタ」が終わり、「ネロ」で再び登場したダンサーは皆、肌色の衣装に身を包んでいましたね。ダンサーに囲まれ、中心で歌うコムアイさんの姿はとても神話的なイメージで感動しました。
      コムアイ: あれは人間の誕生を表現しています。私は裸でもよかったのですが、武道館は品に厳しく、セクシーな表現に制限があって。でもその考え方も好きだなって思って。私たちもセクシーに見えるのは今回のイメージと違うと思ったので、こちらでも肌着を集めたり、キャストのみなさんに持参してもらいました。
      ikumi: リハのときはまだ、みんながバラバラで波長が合っていなくて。だからコンサートが始まってからもとても不安な気持ちでいました。母親のような心境で見守っていたので、本番がうまくいって本当に感極まっちゃった。
      コムアイ:チームの皆がとても頼もしくて、ikuちゃんに任せっぱなしにしちゃったよ。

      ─二人の間には、信頼関係や団結力の強さが漂う。人と異なる着眼点を持ち、不思議な世界を作り出すコムアイと、強いこだわりを持ち、ストイックにデザインと向き合うikumi。ファッションと音楽という異なるフィールドで、相反するテイストを持ち、性格も真逆のように感じるが、それぞれの特徴が絶妙に融合し、より新鮮なものが生まれる。そして何より、何か作り上げることの楽しさ、そして終わったあとの爽快感がこちらにも伝わってくる。

      今回のライブでお互いの新たな一面は見えましたか?
      コムアイ: 今回のライブは、ikuちゃんや(今回メイクを担当してくれた)UDAさんに頼りっぱなしだったんです。ikuちゃんにはキャスティングから何から何まで丸投げ状態で。本当にムチャなことをお願いしているけれど、それを実現する根性がある。諦めないでこだわり続ける。私はずんずん進んでいくよりもパッと何か思いついたり旗振ったりしかできず、ikuちゃんやUDAさんのように、ゼロから作り上げる人を尊敬します。
      ikumi: コムには自分の歌に集中して欲しかったの。こっちはこっちでやるから心配しないでねって思いで動いていました。UDAさんもすごい人なんです。私のコレクションのメイクを担当していただいたとき、「うーん、なんかこんな感じ?」といった曖昧な説明だけで、"OKわかった"って理解してくて、すぐにかたちにするんです。それも、本当にドンピシャに、"そう! それが欲しかったの!"って感じに。
      コムアイ: ikuちゃんは本当に妥協がない。66人のキャスティングがとても大変で、少しくらいの妥協もありかなって私は思ってたんだけどikuちゃんは、しっくりこない子は絶対採用しない。かなりストイックなんですよ。なのにいつもニコニコ余裕そうなので、安心します。
      ikumi: キャスティングしていて、私の服が合うか合わないか、表現や雰囲気との相性で選ばせていただきました。時間がないのに、私のこだわりで厳選してしまってたもので、その分大変だったけどね(笑)。でも、コレクション発表のときも、結構切羽詰まっているのですが、いつもなんだかんだ間に合っているので、今回も大丈夫だと思っていました。土壇場に強いタチです。でもコムも有言実行。マイペースで自分の世界をしっかり持っている。歌手としてだけではなく、表現者として大事な揺るがないものを持っていると思う。人も心を動かす力があって、すごく尊敬する人です。

      IKUMIのデザインで、魅力に感じるところは?
      コムアイ: 自分のからだを見られることを特別意識しているわけではないけれど、やはり少しは気になりますよね。実は私、足の形や二の腕にコンプレックスがあるのであまり露出したくなくて。でも、デコルテ部分とかお腹など、セクシーでないけど露出できる体の部分は出したい。そういった部分でIKUMIの服は、肌見せのバランスがとても取れていて、昔から好きなんです。今日も着てきた。
      ikumi: 私自身が女性だし、女性目線で服を作っているからかも。結構、自分が着たいと思う服をデザインしています。初めは、オーバーサイズで性差にとらわれないスタイルを打ち出したいと思っていましたが、今もそのアイデアをベースに置きつつ、ちょっと女性らしい要素を取り入れたりして、だんだんと変化させています。

      クリエイションを通じて、東京発信であるとか、日本人であることは意識していますか?
      ikumi: 昔モデルをしていたころ、NYファッションウィークでコレクションを見る機会があって。その何週間後に日本に帰国し、雑誌の表紙撮影のときに私がNYコレクションで見たデザインを瓜ふたつにコピーした服を着て撮影したんです。あのときは本当に屈辱でした。日本は西洋の文化や西洋人に憧れ、外からの影響が大きいですよね。でも、コピーするだけではなく、オリジナリティを追求していきたいですね。私のデザインは、特に日本っぽさを意識しているわけではないけど、日本が好きなので自ずと表現されているのかも。日本人の顔立ちが好きだから、モデルも日本人を多く起用しています。
      コムアイ: 私は日本にあまり限定されすぎたくないかな。どちらかというと、アジア発信の一部として見て欲しい。特に何をしなくても、日本人っぽさや東京っぽさって十分出ていると思うんです。自分が生活している場所であり、文化も染み付いていると思うので、東京発とか、日本っぽさなどは特別意識していないですね。

      コムアイさんにとって音楽とは?
      コムアイ: 音楽のために活動しているわけではなく、音楽はツールだと思っています。もともと歌手になるつもりはなくて、たまたま今のマネージャーに出会い、面白いことや奇抜なことを表現したいのなら音楽というフィールドが向いていると誘ってもらいました。限られた中で存分に表現したいですね。いろいろあるビジョンをその都度目一杯表現している感じです。

      リズムや音質など、コムアイさんの音楽は耳にずっと残る音楽ですよね。
      コムアイ: 歌詞で聴かせるというよりも、音で聴かせたいんです。だって、音って国や人種を問わずみんなに伝わるじゃないですか。音は歌詞よりも自由に、そして正しく伝わるような気がします。私、皆がポジティブな気持ちになれることをしたいと思っているので、そういった音楽を限定することなく、世界中の人と楽しみたい。曲作りの際も、歌詞ではほとんど意見は言わないのですが、音に関しては、ハイハットの音色、リバーブやディレイの位置、アウトロの処理、といった微妙なところが気になるので、ちくちく注文をつけています。嫌がらず聞いてくれるケンモチさんとDir.Fにいつも感謝しています。

      ikumiさんにとってデザイン、そしてブランドとは?
      ikumi: みんなを幸せにしたいと思いデザインをしています。私がデザインしたものを着たらワクワクするようなデザインを作り続けていきたいんです。着る人に自信をもたせたり、見ていて楽しいと思ってもらったり。とにかくポジティブな感情を生むきっかけとなるものです。

      今回のライブで得たものや、今後は?
      コムアイ: 今度はikuちゃんのフィールドで、何かできることがあればやりたいな。あとは、ゲリラ的にも何かやりたいんですよね。街中で、ライブというかパフォーマンスをしたり。特別なスピーカーを持ち、その場で新しい音を作りながら踊ったり歌ったりしたいですね。今まで誰もやったことのないような突拍子のないことや、新しいことに挑戦したい。
      ikumi: 本当に今回の経験を通じて勉強になりました。新しい発見もあったので、デザインだけに限定するのではなく、もっとこういった活動をしていきたいと思いました。次回またコムのライブに携わる機会があったら、もっと多くの曲の演出に携わりたいです。私、コムのPVがすごくおもしろくて好きなんです。だから次は、PVのような世界観を断片的につなげた演出をしてみたい。

      ─真逆な2人の息はぴったり。それぞれの色が混じり合い、かつて体験したことのない新たなものをこれからも生んでくれるだろう。今後も2人のクリエイションに期待しよう。

      Credits

      Photography Takako Noel
      Text Aya Tsuchii
      Edit Nozomi Kinoshita

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      Topics:the fifth sense, kom i, ikumi, interview, fashion, culture

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