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      art Steve Salter 13 July, 2017

      「職安で働く女性以上の存在」:スー・ティリーが語るFendiとのコラボ

      自身のイラストが起用されていたFendi 2018年春夏コレクションの感動も覚めやらぬスー・ティリー。他に類をみないミューズであり、モデル、作家、そしてアーティストの彼女が、人生が私たちに差し出してくれるチャンスを最大限に活用することの重要性を語る。

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      This article was originally published by i-D UK.

      「ジュリアンは酔っ払ってる、って思った」とスー・ティリー(Sue Tilley)は、長年の友人であり、このイタリアの老舗メゾンのメンズウェアでスタイリストを務めているジュリアン・ガニオ(Julian Ganio)から、Fendiとのコラボレーションについて話を持ちかけられたときのことを回想し、笑いながらそう話す。「Fendiがなんでわたしなんかと?って思ったわ」。スーは9時から5時まで公共職業安定所で働くかたわら、大親友のリー・バウリー(Leigh Bowery)とパーティに興じ、画家ルシアン・フロイドのミューズとして名を知られる存在となった(彼女の姿が描かれた油絵『Benefits Supervisor Sleeping』は、2008年に約25億円で落札された)。その後、彼女はリー・バウリーの伝記を執筆し、自らもアーティストとして大成することとなる。さて、一体全体どうしてだろうか?

      「スーは昔からの親友」とジュリアンは説明する。「シルヴィア・ヴェントゥリー二・フェンディ(Fendiメンズウェア クリエイティブ・ディレクター)と僕にとって、僕たちが愛してやまず、尊敬できるアーティスト仲間と一緒に作品作りをしたいと思うのは自然なことだった」。ジョン・ブース起用に続き、Fendiが手がけた今回のコラボレーションでは、またしてもロンドンのカラフルで個性的なアーティストがミラノにきらめきをもたらすことになった。「シルヴィアは、すぐにスーの作品と彼女の半生、その物語に夢中になった」と、ジュリアンは付け加える。シルヴィアも「スーの半生は興味深い」と、ショー後のバックステージで述べている。「チャリング・クロス公共職業安定所で長年働きながら、同時にワイルドな生活を謳歌していたんだから」

      オフィスで働く平凡な日常と、週末に起こる豊かな出会いの数々の、ちょうどあいだにできあがった世界——それこそは、2018年春夏のFendiが描いたものであり、またBALENCIAGAが"父親と歩く公園"に、Xander Zhouが宇宙企業に、マーティン・ローズがゴープコアに、そしてVetementsがチューリッヒの地元住人とともに描いた世界だった。「Fendi Friday! Fendi Fri-yay!」と、ショーノートに書かれたそのコレクションは、どこか企業の幹部のような現実味を帯びながらも、誰もが知っている楽しい週末の雰囲気にあふれていたスーの作品はプリントとなっていたるところにちりばめられていたのだ。スーの視点を通せば、日常にある"ありふれた"ものが、遊び心溢れるものに見えてしまうのだ。

      「ジュリアンは、Fendiが何を描いてほしいかを、おおまかに教えてくれただけ。そこからは自分のやりたいように描かせてもらった」と、スーは説明する。「ただ絵を描いて、それを送って、Fendi側からちょっとした修正依頼があって、修正したらまた送って——描いた絵をiPhoneで写真に撮って、それをFacebook Messengerで送ってという流れ。わずらわしいことはなかったわ」。創業100年という歴史を誇るラグジュアリーブランドとのコラボレーションにFacebook Messengerを使うとは不思議に思えるが、スーは「友達の近況が知れるなんて最高だもの」と公言しており、自他共に認めるFacebook中毒なのだそうだ。「引っ越したばかりで、まだ荷ほどきもしていない雑然とした部屋で、絵を描いて、その写真を世界でもっとも権威あるメゾンに送っていると考えたら、どうしようもなく笑えてきたわ」と、スーはまたしても笑いながら言った。"この笑顔をポートレイトに描いてFendiに送ればよかったのに"と考えずにいられない——彼女の笑顔は、Fendi 2018年春夏コレクションの世界観そのものだったからだ。Fendiのショーに自作のイラストが溢れていた光景を見て、まだ興奮冷めやらぬスー。Fendiに送ったスナップ写真の数々をわたしたちと共有し、またどんな依頼でも「イエス」と答えることの大切さについて語ってくれた。

      トランクスから、シューズ、イヤリングにいたるまで、今回のFendiコレクションにはあなたの作品が溢れています。ここまで作品が用いられると考えていましたか?
      まったく知らなかった。土曜の朝にFendiに行ったとき、すごくたくさんあるって感激したのよ。そうしたらそこから数日のうちに、キーホルダーからスニーカー、パジャマ、ジャンパー、ジーンズと、自分の作品がプリントされたアイテムがもっと増えて……。

      ランウェイにあなたの作品が登場するのを見たときはどう感じましたか?
      最高だったけど、あっという間に終わってしまったわ。すべてが見れたわけではなかった。でも、あれからショーの写真を繰り返し見ているの。実際にわたしが描いたプリントのアイテムを着ているひとを見かけたら、絶対に話しかけてしまうと思う。でも、発売は来年の1月だから、それもまだ先の話ね。

      今回のコラボレーションからひとびとに何かひとつ感じ取ってもらうとするなら、なんですか? それはなぜですか?
      "職安で働く女"以上の存在だってことを考えてもらえたら嬉しいかな。まあそれはもうわかってるだろうけど。Fendiのみんなは本当に素晴らしいひとたちだったから、もっと一緒に仕事をしたいわ。ほかでもコラボレーションをやってみたい。何が起こるかわからないという状況が好き。キャリアについて真剣に考えたこともなかったし、「どうしてもこの仕事がしたい」と思ったこともなかったけど、でもここまですべてうまく運んでるわね。

      あなたの歩んできた半生について、シルヴィアと話をしましたか?
      シルヴィアは、わたしのワイルドなクラブ人生よりも、職安での日々について、より興味を持っていたようだった。特に、悲しいできごとについて。たとえば、わたしが職安を辞める直前に政府法案が提議されて、外国人労働者たちへの手当てが打ち切りになり、彼らが突如、どん底に突き落とされたことがあった。大人の男が相談に訪れて、目の前で泣くの——その姿を見て、胸が張り裂けそうだった。でも、役所で働いているわたしには、何もできない。すべてが異常なほどに厳しくなったの。余剰職員の退職を募る話が出たときは、飛びついたわ。

      9時ー5時の仕事をしながら、「自分の人生にはきっともっと何か面白いことが起こるはず」と夢を見続ける人々に、なにかアドバイスは?
      色々な選択肢に、常にオープンでいること。でも、他に自分がいるべき場所・やっているべきことがあると思うからといって、今の仕事を安易に辞めてしまわないこと。わたしは職安での仕事で休みがたくさんもらえたから、仕事が早く終わった日の夜や休みの日に、他のことをする時間があった。それはラッキーだったと思う。でも、日中の仕事でこそ学べたことは多かったし、あの仕事をしていたからこそ、いま退職金をもらえて、それで好きなことをやれているんだもの。

      いくつかのインタビューで、あなたは「イエス」と言うことの力について話していますね。Fendiとのコラボレーション以外で、最後に「イエス」と言って、素晴らしいことが起こったのはいつですか?
      来月、『The Art Show』でテレビ・デビューをすることになってるの。ディレクターのマイク・クリスティ(Mike Christie)が、「ニューヨークのアーティストたちにインタビューをしてみないか」と話を持ちかけてくれた——そんな話に「ノー」なんてバカなこと言うはずがないわ。

      なかなか「イエス」と言えない人々のためにアドバイスをお願いします。
      自分の恐怖心を直視して、リスクを受け入れてみること。やってみないと楽しめるかどうかなんて分からない、「ノー」と言ってしまったら、その先に何を成し遂げられたかも分からずじまいになってしまうわけだから。やってみて「自分に向いていない」と思えるほうが、何もやらないより良いのよ。少なくとも経験にはなるんだから。

      Credits

      Text Steve Salter
      Artwork Sue Tilley
      Catwalk Images Mitchell Sams
      Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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      Topics:art, culture, fashion, sue tilley, fendi, fendi spring/summer 18

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